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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
初恋のこじらせ方
27/52

正しい魔法の使い方[その2 ]

誤字を直しました。

ご指摘ありがとうございました。

 今日もわざわざやってきたバイロンは、グレンの前の席に乱暴に座った。


「伯爵子息ごときが、まだ俺のフェリシアに纏わりついているのかよ?」

「私は正式な婚約者ですから」

「はっ。嫌々だろ?フェリシアはお前のことなんて大嫌いだよ」


 ほら、とバイロンはグレンの机の上に七通の手紙を置いた。


「こっちには嫌々婚約させられたこと。これには恋愛感情など初めからなかったことが書いてある。

 まあ、どれをとっても俺への愛が綴られているけどな」


 高笑いをするバイロンを前に、手紙を見たグレンがふっと笑った。


「貴方のフェリシア様は、私のフェリシアと違って少々文字をお書きになるのが苦手なようですね」

「はあ?」


 バイロンが眉毛を吊り上げるが、グレンは肩を竦めている。


(フェリシアの手じゃないってこと?)


 マシューがちらりと手紙に視線を向けると、フェリシアと書かれたその文字がいつもよりーー豪快だ。


「いつの間にかフェリシアの人格が変わった?繊細さの欠片もないよね」


 マシューが思わず手にしていた手紙をバイロンがひったくり、二人を憎々しげに睨む。


「バイロン様のフェリシア様には、関わっておりません。

 私のフェリシアは、ブロウズ伯爵家のフェリシアですから」

「なっ!」

「陛下にも司法局にも認められてる正式な婚約ですからね。

 他のフェリシア様に現を抜かすわけにはいきません」


 グレンが言い切ると、バイロンが顔を真っ赤にして立ち上がった。


「公爵家に歯向かうとは、覚悟はいいな!」

「歯向かうなど恐れ多い。

 バイロン様のフェリシア様は、その手紙を書かれた方、ですよね?」


 手紙を見せびらかせていたのだ。まさかここで違うとは言えない。


「そうだ。これは俺のフェリシアが書いたものだ」

「左様ですか。

 ーー私はこの手紙の主様とは、婚約しておりません」

「はっ。やはりな。

 フェリシアは俺のものだ」


 バイロンがもう用はないと手紙を手に去って行った。




 □ □ □ □ □




 あれからバイロンがやって来ることはなくなった。

 しかし、未だに「俺のフェリシア」と発言しており、グレンが苛つく日々が続いていた。

 けれど、フェリシアはいつも通り。


(何か見落としてる?)


 今日だって立派にバカップルなのに、どうしてこうなっているのだろう。

 マシューはちらりと自分の婚約者に目を向けた。


「何?」

「フェリシアの御菓子、美味しいでしょ」

「……うん」


 今の今まで、美味しさに悶絶していた人とは思えない。

 なぜかシュンとして肩を落としている。


 ちなみに今日のスイーツは、マシューのリクエストでモンブランだ。

 留学から帰ってきたのに、別行動をしようとばかりする婚約者を好物の栗で釣ろうと目論んだからた。他の人からは生暖かい視線を向けられただけで、別段文句は出なかった。

 ーーみんなは一年以上離れていたマシューに気を使っただけだが。


「お口に合って良かったです」

「……ええ、美味しいです」


 フェリシアに笑いかけられて、フィリスは居心地が悪そうだ。


「栗ではなく、サツマイモはお好きですか?」

「サツマイモ?」

「ええ。スイートポテトや大学芋もいいかなぁって」


 フィリスがサツマイモが何か分かっていないと気付いたマシューは、「一度作ってよ」とフェリシアにお願いしたのだが、フィリスの表情が固くなっている理由が分からず、眉を寄せた。


 そんな食堂の一角に、招かざる客人がやってきた。

 入り口から大声で怒鳴りながら足早にやって来る。


「こんなことろで、何をしているんだ。フェリシア!」


 こめかみに青筋を立てながら、殿下であるアレクシスの前だというのに急にこのような発言をするとは。マシューは辟易していた。

 そしてフェリシアの言動を窺った。


「?」

「なぜそんなヤツの隣に座っているんだ!」

「??」


 バイロンの初めの発言から、フェリシアは一貫して不思議そうにしている。

 あまりの剣幕に身の危険でも感じたのか、グレンの腕をそっと掴み、心なしか身を寄せたように見えた。


 アレクシスが視線をヴィンセントに送るのが見え、マシューは一応すぐに動けるように用心した。


「……貴様、まだ俺のフェリシアに付き纏わるか!」


 あと少しでグレンとフェリシアの側に来る、その前にヴィンセントが立ちはだかった。


「アレクシス様の御前です。騒がしいと摘まみ出さなければなりません」

「俺はアボット公爵家の」

「アレクシス様の護衛の命を陛下から賜っております」


 いつになく丁寧な言葉遣いでヴィンセントはバイロンを見下ろし、それから視線をアレクシスに向けた。


「バイロン。フェリシアはグレンの婚約者だ。

 最近、何か言い回っているそうだが」

「フェリシアは俺のものだ!」


 バイロンの言葉に、フェリシアから血の気が引き、体を震わせ首を横に振っている。

 お茶会のメンバーだけではなく、食堂にいた他の学生達も、その様子にバイロンの言いがかりだろうと判断した。

 その時、騒ぎに口を挟む者達が表れた。


「だから御忠告差し上げたではありませんか。

 ーー八方美人な態度では、いつかその身に返ってくると」


 不穏な発言に、食堂のざわめきが大きくなった。

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