【閑話】女神の密やかな楽しみ[その3 ]
おかしいなぁ。
十五年近く待ってたのに、なんなの?これ。
「……なるほど。がっかりヒロインか」
「私の方が言いたいわよ。期待してたのに~」
乙女ゲー好きってことで意気投合。よっしゃ、こっち来い!と異世界転生したわりに……。
「ないわ、これ」
「がっかりヒロインはこんなもんだろ」
人間って努力しないと能力値が高くても使い物にならないね。
いや、能力値っていうか、能力限界値か。
「あの子は頑張ってたのにな」
「……なんか贔屓してませんか?」
こっちの世界を見に来る度にあの子あの子言い過ぎじゃんか。むむむ。まさかのロリコン……
……無言で睨まないでください、冗談だよ冗談。
ちょっ。なんで手がグーなの?きゃあ、イヤー。
「……土下座したのか、お前」
「はうっ」
内緒にしてたのにっ。隠してたのにこんなあっさりバレるとかなんなの?
「……ふむ。取り敢えずまとまったな」
女神の前にがっかりって普通付かないと思うの。
いや、私は決してがっかりなんかじゃない!
って、なんでそんな目で見てくるんだ~!
「やっぱり再修行かなぁ」
「ひぃぃぃっ。嘘でしょ?!」
あんな生活耐えられない!
だって朝五時起きなんだよ?
ご飯は質素でおやつはない。
そんな生活、絶対にいや!!
「……」
「せっかくあの子の特殊能力で、美味しい食べ物が手に入るようになったのに~!」
「最低な発言だって分かってるか?お前」
「何言ってるの?!美味しいは正義なのよ!」
思わずビシッと指をさしたのは悪くない。
おっさんのところは食い道楽が出来るほど、美味しい食べ物が溢れかえっているもんね、そりゃ余裕綽々だよね。
じと目で見るのだって仕方がないじゃない。
「……他の世界の管理人から苦情は来てるけどな」
「へ?苦情?」
「俺のところだけ旨い物があるのがズルいってさ」
「そりゃそうだ」
衣食住でいうなら、神様って衣も住も満たされてるもんね。
残りの食べ物が唯一無二の楽しみと言っても過言じゃないよ。食べなくても死なないけど。
それがあそこまで溢れかえってたら、みんな羨ましがるわよ!
「……それでも、今までは何も言われなかったんだよ。
誰かさんが特殊能力を無理矢理つけて、自分の管理下の世界で旨いもん食おうとかしなかったらな」
どっかで聞いたような話だね~、ってなんでまた手がグーなの?なんなの?
「……色々と、がっかり女神がちゃっかりと、まあ」
ちょっと待て。今どこ見た、お前!!
「あれか?ヒロインががっかりなプロポーションだったのは、感情移入しやすいようにか?」
「だからどこ見てるの?!
ヒロインのは前世を元にしてるの!」
「あの子もか?」
「あの子もよ!
……クソっ。まだ十二のくせにぃ」
「ウチの奥さんもプロポーションがいいから、お前の気持ちが分からないなぁ」
あの若くて綺麗な奥さんですか。
二人子供産んだとは思えないよね。
「……おい、目が死んでるぞ」
神様って見た目は若いままとか出来るのになんで……
「ない方がいいってヤツから紹介しろって言われてな」
「会う!絶対会う!」
「……せめて相手の情報くらい聞けよ」
「会うよ!会う会う!」
「分かったから落ちつけ。
取り敢えず、明日にでもこっちの世界に来て、ウチの奥さんとエステに行ってこい」
ん?エステ?
「ウチの奥さんの気合いがスゴイからな。
ーー今回ダメだと、俺達では無理だ」
ちょっと見捨てないで!
「頑張る、頑張るよ!」
「ちゃんと相談しろよ。化粧とか香水とか」
……香水?
はっ。あの香水を使って落とせってことね!早速下界に降りるよ!
よっしゃ、ゲットして来るぞ。
「いや、待て。違う。がっかりヒロインの使ったものを使うなよ。あんな結果になりたいのか」
はっ。
がっかりヒロインなんてダメだ、ダメダメ。
「だからウチの奥さんが手伝ってやるって言ってるから。
こっちの世界のを色々使っていいから頑張れよ」
うん。
ゲームじゃなく頑張るよ!




