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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
さあゲームを始めよう
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ゲームの始まり[その3 ]

 寮生活は一人部屋だが、使用人を一人付けていいことになっている。

 貴族がまさか一人でなんでも出来る訳もなく、寮の一部分は小さいながらも使用人用の部屋がある。そこも個室だ。


 そこで問題。

 食事は学校内または寮の食堂がある。お茶のために各部屋にコンロくらいはあるが、お湯を沸かすコンロで何が出来る。いや、何も出来ない。


 というわけで、フェリシアは寮ではなく学校の側に部屋を借りたかったのだが、悉く反対にあい、寮に放り込まれたのだ。

 主に安全面が問題あり、と言われれば仕方がない。


 しかし、フェリシアは諦めなかった。

 校内で研究用に、狭いながらも部屋を借りることが出来る、その仕組みに食いついた。

 ジョナスに頼み込み、部屋を借りることに成功し、入寮から入学までの間に必要な道具を揃えて、カントリーハウスのものとは差があるが、キッチンとして使えるスペースを確保した。


(頑張ったわ、私)


 自分とグレン、マシューの分のお茶を入れ、昨日作って冷蔵庫で冷やし固めていたババロアをテーブルに乗せる。


「召し上がりませんか?」

「私は四分の一で」

「はい」


 フェリシアが慣れた手つきでグレンの分を切り分け皿に盛り、スプーンを添えて置く。

 その姿にマシューが瞬き、フェリシアを見上げた。


「……フェリシアが?」

「簡単なものだけですけど」

「……僕もグレンと同じで」

「はい、どうぞ」


 マシューの前に置き、自分の分も同じだけ用意するとフェリシアも席に着いた。


「久し振りに殿下にお会いしましたけど、なんだか変わられましたね」

「……フェリシアはカーラといて、変にならない?」

「……変に?」


 首をかしげ、マシューを見た。マシューは何を言っていいのか、迷っているようだ。


「始めはアレクシス様もヴィンセントも、相手にしていなかったよ。

 それが今はあの有り様でね」

「なんだかぼんやりされてましたね」

「ぼんやり?」

「覇気がないというか」


 よい例えが思い浮かばず、フェリシアは言った後も唸りながら考えている。

 フェリシアの言葉を聞きながら、マシューはババロアを一口食べーー体の中から、何かが消え、何かが満たしていくのを感じた。

 この感覚は、たまにグレンがくれた菓子にも感じたことがある。

 ということは。


「たまにグレンが持ってきていた御菓子って……」

「ああ。フェリシアが作ってくれてたんだ」

「フェリシア。君ってどうやって御菓子を作っているの?」

「え?普通ですよ?」

「普通って?」


 マシューが身を乗り出して聞いてくるので、フェリシアは驚くばかりだ。


「普通は普通ですよ。

 材料を計って、手順通りに。レシピ通りにしかしません」

「レシピにないことは何も?」

「ええ、何も。

 ……あ。作ってる最中に、光属性の祝福をしますけど」

「祝福?」

「はい。体に溜まった疲労や病気になりそうな時に祝福されたものを食べると、疲労が軽減したり病を得なかったり、軽くてすんだりします。

 グレンは最近忙しそうだったから、一応祝福を……」


 言いながらフェリシアは段々真っ赤になっていく。グレンはニコニコとそんなフェリシアを微笑ましそうに眺めている。


「うん。だからバカップルはいいから」

「羨ましがらなくていいよ」


 グレンは婚約者が留学中のマシューに何度も頷きながら言う。

 大きなお世話だ、と面白くない気分になるのは仕方がないとマシューは口を尖らせた。


「僕はちょくちょくグレンから貰っていたからかも」

「何が?」

「祝福、だよね。

 確かいつもよりいい状態になるっていう」

「あまり使い道のない魔法ですよね。

 直接かけるにしても微妙な効果ですし。食べ物に使っても、疲労回復ってだけです。

 あ、あとは……いえ、なんでもないです」


 慌てて首を振るフェリシアに、マシューとグレンが無言のまま先を促す。何かを隠しているのがバレバレだ。

 観念したのか、フェリシアはボソボソ話し出した。


「あの、学校は安全だとは思ったのですけど。

 解毒と状態異常の解除の効能があるものも差し入れの中に入れていました。

 効果は父にお願いして、宮廷魔術師団で確認しておりますから間違いありませんのよ……」

「いや、それ。全然普通じゃないよね、フェリシア」

「……そんな事までしてたの」


 茫然とする二人に、フェリシアがしゅんと肩を落とす。

 兄ローレンスの時はまだこの学校自体がなく、誰かに聞けずに心配が募ったあまりの行動だった。やり過ぎと薄々気付いてはいたが。


 少し呆れながらも、グレンは可愛いと思ってそうだ、とマシューはちらりと見やる。

 まあ、それがあったから自分とグレンは大丈夫だったのだから良しとする。


「しばらく通っていい?」

「え?ええ。

 好き嫌いがあるなら教えていただきたいですけど」

「じゃあ、明日から放課後はここでお茶だね」


 のんびりとお茶を口にしてグレンが笑った。

 とりあえず、自分達の対策は出来ていたのだなとババロアをスプーンですくった。

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