ゲームの始まり[その2 ]
誤字を直しました。
ご指摘ありがとうございました。
「フェリシア・ブロウズ!
こそこそ隠れてないで出てきなさい!!」
今現在、入学式の真っ最中だ。
フェリシアは名前を呼ばれため息をつき、しかし名乗り出なかった。
学校生活の最初から、こんな騒動に巻き込まれるなんて嫌すぎる。
「何をしているんだ、君!早く降りなさい!!」
「私はフェリシア・ブロウズを」
「今は入学式だ!!」
フェリシアは考えなしの女性を引きずり下ろしてくれた先生に感謝した。
それにしても、大人しく入学式の会場にいるだけでこそこそ隠れていることにされるとは。横暴な上に、やはりおバカさんのようだ。
「……それではこれで入学式を終わりにする。
新入生は各クラスへ行くように」
フェリシアは人波に飲まれるようにさっさと教室へ向かった。うっかりこんなとこで変な人に捕まりたくない。
なんとか教室にたどり着くと、クラス全員がいることを確認した担任教師が扉の鍵を締めるように指示した。
扉付近の生徒が不思議そうにしかし鍵をすると、また大声がする。
「フェリシア・ブロウズ!こそこそ隠れてないで出てきなさい!!
って痛い!なんでドア開かないのよ?!」
ガンガンバンバンと扉が押したり引かれたり叩かれたりと、様々な音をたてる。。
クラスメイト達は、教師が鍵を締めるように指示した意味を早速知った。
フェリシアは顔を青ざめ、震える。
(グレン様もマシュー様も関わるなと仰ったけど、そんなの無理です)
未だ叩きつけられている扉の音がする。どうやってここから逃げよう。いや、逃げる手立ては果たしてあるのか。
狂人に何故かつき纏われているフェリシアに同情の目が向けられる。
そんな中、廊下から猫なで声がする。
「あっ、グレンく~ん。マシューく~ん」
そう言えば、二人が迎えに来てくれることになっていた。この状況下でそれが良かったのかどうか。
ただ、一人で対峙したくはない。
教師は扉が叩かれなくなったこの隙に、と学校生活の注意事項や明日からの授業について説明を始めた。
プリントが配られ、説明が終わると、教師がフェリシアを見る。どうする、と問いかけているかのようだ。
フェリシアが頷くと、教師はみんなに気を付けろと言い、解錠して扉から出て行った。
クラスメイト達も恐る恐る扉から退出して行く。
フェリシアは周りに迷惑をかけないよう、「最後に出ます」と椅子に座ったままでいた。周りも頷き、足早に退出する。
廊下から猫なで声がするうちは安全らしい、と気付いた。
クラスメイトが全員退出してから五分。そろそろ誰にも迷惑は掛からないと判断して、ようやっとフェリシアは教室から出た。
「ねぇねぇ。二人も一緒に行きましょう」
グレンとマシューが嫌そうにしながらも腕を掴まれている。
フェリシアはその三人の後ろに、アレクシスとヴィンセントを見付け、目を見開いた。
「殿下、ヴィンセント様」
「ああ、フェリシア嬢か」
何年振りかに会ったアレクシスは、どこかぼんやりしていて、フェリシアは首をかしげた。
その隙にグレンとマシューがその女性をアレクシスとヴィンセントに引渡し、フェリシアの側に来た。
側に来た途端、グレンは周りを無視してフェリシアを抱き締める。
フェリシアは顔を赤らめ、それでもそのままだ。
「……君達バカップルみたいだよ」
「さっきまで耐えていたんだから大目に見てくれ」
グレンは暫くしてフェリシアから体を離し、しかし手は繋いだままで三人に振り返った。
「フェリシア・ブロウズ。
貴女の我が儘で、グレン君を縛り付けているのは分かってます。いい加減グレン君を解放してあげたらどうですか!」
ビシッと指をさされて、フェリシアは思わず後ろに誰かいるのかと振り向いた。誰もいないので前を向く。
「フェリシアは私の婚約者ですよ。縛り付けてなどいません」
グレンは言いながら、再びフェリシアを抱き締めた。マシューがわざとらしいくらいにため息をつくが、フェリシアは現状の把握がすでに出来ていない。
「カーラ・ライリー侯爵令嬢。
フェリシアは誰も縛り付けていませんよ。どちらかと言えば、グレンが彼女を過保護に守っているんです」
「そんなの嘘よ!」
「この状況を見て、そんな言い掛かりをつけれる人がいるんですね」
カーラは言葉に詰まる。明らかにグレンが溺愛しているのが分かるこの状況下では、何を言っても説得力がない。
「フェリシア・ブロウズ。覚えてなさい!」
まるで悪役のような台詞を投げ捨て、カーラはアレクシスとヴィンセントを連れて去って行った。




