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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
プロローグよりも前に
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魔力と魔法の向上を[その1 ]

 自称女神の説明会の後、ゆっくり眠れたフェリシアは、朝早く目覚めると自身の身支度を済ませた。

 途中、鏡を見ても、『美人』を書き足したのにまだ変化が見られない、気がする。

 それでも時間が余ったので、自宅から持ってきたマナーの本をおさらいしていた。


(何も習わせてない、か)


 異母姉は自分を目の敵にしている。

 姉は父が手を出した侍女の子供だ。母はいい顔をしない。しかし、自分の子供と明らかに差別することは回りの噂好きのマダム達の格好の餌食になるため、兄と同じようにしたのだろう。

 兄は十歳離れていて、家族では一番気にかけてくれているものの、跡継ぎの勉強等あって忙しく会う機会が少なくなってきた。


 ページをめくるだけで、何も頭に入ってきてはいなかった。

 小さなノックがして、フェリシアは「はい」と応じた。侍女が二人入ってきた。


「おはようございます。もう起きてらしたのですか?」

「昨日早く休みすぎました」


 フェリシアは苦笑し、ついでに自身の身支度がおかしくないか、侍女にチェックしてもらった。


「ええ、大丈夫です。

 ではお食事になり次第呼びに参ります」

「はい」


 頷いて、侍女が出ていくのを見ていた。




 食事の準備が整ったと侍女が呼びにきた。

 食堂に着くと、ライナスとリオンはすでに席に着いていた。


「おはようございます。伯父様、リオン兄様」

「おはよう、フェリシア」


 フェリシアは食事を取りつつ、ライナスにお願いをした。


「魔力を伸ばしたいのと、魔法を学びたいのです。こちらにいる間、少しでいいので、教えてくださいませんか?」

「オールポート伯爵家では何を学んでいたんだい?」

「何も」

「何も?

 それで王宮で魔力測定とはね。説明もなく、フェリシアはやり方が分からなかったのではないかい?

 王宮での測定は上流貴族向けだから、習っているのが前提なのだよ」


 ライナスはオールポート伯爵家に呆れて、ため息をついた。測定がうまくいかなくてフェリシアをこちらに寄越したのだ。何もしていないのに、子供に何を望んでいるのか。

 最近あの家は厳しい環境だったな、と領地運営があまり上手くない伯爵家の事情を思い出した。そのしわ寄せがよりによって小さなフェリシアにきているのか。


「父上、僕が基本を教えていいですか?」

「ああ。リオンの練習にもなるね。それでいいかい?フェリシア」

「はい。ありがとうございます。伯父様、リオン兄様」


 フェリシアは心から感謝した。こんな風に笑えるのは、実家ではなくデイトン伯爵家なのだと悲しくもあったが、一つもないより遥かにいい。

 兄がいればいいのだが、オールポート伯爵領はデイトン伯爵領と違い、王都から十日かかるので、なかなか会えない。

 頑張っているのを知っているのに我が儘は言えない。




 食事が終わると早速魔力と魔法の測定をすることになった。


「魔力を測るから、水晶を乗せたら自分の血流をこちらに全て集めるように集中してみて」


 フェリシアはリオンに水晶を乗せられ、まるで睨むように見つめ、思わず息を止めていた。

 水晶は次第に中心から外へと、いくつかの色が混ざり合いながら光を放っていた。


「はい、おしまい」

「ふぅ」


 フェリシアは荒い呼吸を整えた。王宮で見た自分の水晶と今の水晶は明らかに異なった。それは女神との話の通りなのか、リオンの教え方がいいのかは分からない。

 水晶自体が目映い光を発っしている。


「色から属性は……ちょっと分かりにくいかな」


 リオンは更にもう一つの水晶をフェリシアの掌に乗せた。


「さっきと同じように集中して」

「はい」


 集中しすぎて指先が震えた。

 今回の水晶は魔力のとは異なり、色が混ざることはなかった。しかも色が現れる場所も決まっている。


「……水色に金と銀。属性は水と光と無属性だね。でも水はちょっとだから、ほぼ光と無属性かな」

「光と無属性?どういった魔法が使えるのですか?」

「光は回復全般、無属性は空間収納と空間移動、あと結界が有名かな」


 あれ、とフェリシアは疑問を口にした。


「攻撃魔法がない?」

「光属性は魔物にきく攻撃魔法しかないね。

 無属性は攻撃魔法そのものがないし。

 水属性も高くないから、攻撃は難しいかも」


 リオンが苦笑する。


「魔晶石は作れるのですか?」

「光属性があるから、大丈夫。でもどうして?」

「……いつか必要になるかもしれないので」

「そう?

 でも、魔晶石が作れるから、魔力を増やすのに便利だね」

「便利?」

「魔力を使いきるのが魔力を増やすコツなんだ。街中で攻撃魔法は使いづらいけど、魔晶石なら使い勝手がいいよね」


 なんて素晴らしい。

 フェリシアが嬉しがっているのが手に取るように分かり、リオンは笑った。


「魔法の訓練は明日からにしよう。何をするか、考えておくよ」

「はい、リオン兄様」


 タイミングよく侍女が午後のお茶を勧めにきたので、サロンへ移動することにした。

 リオンは部屋を片付けると言ってフェリシアを先に行かせ、二つの水晶を見た。


「これだけの魔力と、三つの属性ね。

 水属性がおまけ程度とは言え、他の二つとこの魔力だけでも凄い」


 正直羨ましい、と思う。しかし攻撃魔法はない。それが残念だ。


「女の子には攻撃魔法はなくてもいいか」


 リオンは苦笑した。魔力が高くて養子になった自分とあまり変わらない八つ下の従姉妹に。

 それでも魔法の先輩として、少しは役に立てるだろう。

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