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女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
さあゲームを始めよう
19/52

ゲームの始まり[その1 ]

誤字を直しました。

ご指摘ありがとうございました。

 八年前、グレンと正式に婚約する少し前から、少しずつフェリシアの中に流れてきた記憶がある。


(そう言えば、転生って言ってたなぁ)


 女神の説明からすると、前世の記憶だ。


 最初は食べ物の記憶ばかりだった。

 兄ローレンスが仕事の合間に軽食を取れるようにと、玉子サンドを作ろうとしてマヨネーズを思い出した。

 思い出せば、あとは簡単だった。

 マヨネーズを思い浮かべるだけで、頭の中にレシピが浮かび上がり、その通りに作れば失敗ない。

 するとケチャップやソースも思い出し、簡単に作れた。

 海沿いのデイトンとブロウズの領地では魚介類が豊富でフライを、さらにはじゃがいもが名産のブロウズの領地ではコロッケを作り、ソースで食べる文化が根付いた。


 魚介類と言えばパエリアもいい、と唐突に思えば、見向きもされてなかったお米を使ってバーシェス商会が経営するお店の前で作ったりもした。

 大きな鍋に歩みを止めた人達は、お米の料理だと分かると興味を失ったように、歩みを進めだした。

 しかし、料理が完成に近づいていい匂いがしてくると、また人だかりが出来た。

 最初に購入した客が旨いを連発すると、次々と客が押し寄せてきた。

 あまりの人数に、以後人前で料理を作るのは禁止になった。

 この件に関しては、カイルが読みが甘かったとジョナスとライナスに謝罪していた。

 このレシピがフェリシアのものだと分かれば、誘拐の危険が増すという心配だった。


 その後も、領地運営のために各地へ赴くローレンスに着いていってはメープルシロップを見付けたり。

 突然ふわふわなオムレツを食べたくなって作ってみたり。

 急に大豆を欲しがり、味噌や醤油の調味料を作り出したりした。


 大豆は栽培にも興味を持ち、カントリーハウスの側の畑で作り始めた。成長の途中で収穫して塩ゆでし、枝豆を酒の肴として出すとジョナスやライナス、カイルに好評だった。


 大豆の成功に気を良くし、高くて使えない胡椒の栽培にも手を出した。

 温室は魔晶石が沢山作れるため、経費は大して掛からず使えたので気が楽だったが、成功には数年要した。収穫まで三年か四年はかかった。


 こうしてフェリシアが何かを思い出したり行動することで、ブロウズとデイトン両家の領地は潤い、バーシェス商会が実績をあげた。


 そしてフェリシアは前世の記憶が流れ込む頻度が増していき、内容も単に食べ物だけではなくなった。


(食べ物だけで良かったのになぁ)


 ぼんやりと壇上を見上げる。まだまだ話は続くようだ。

 今フェリシアは、数年前に出来た国立学校の入学式に出席している。

 貴族と一部金持ちの庶民や優秀さから特待生となった庶民が入学を許される学校だ。

 十二歳で入学し、卒業までの五年間、寮生活になる。


(うん。さすが乙女ゲー)


 正確に言えば、ゲームではない。女神が乙女ゲーみたいな状況を作っただけだろう。


 しかし。それがなんだというのか。


 久し振りに会った二学年上の婚約者グレンには、ベッタリ引っ付く見知らぬ女性がいた。

 噂を耳にしていなかった訳ではない。本人からも、そんなことを聞いていた。

 ーー話が通じない女性に纏わり付かれていると。


(あからさまに嫌がってるのに、浮気者とか言えないしなあ)


 それどころか、グレンはその女性を撒いてフェリシアの元にやって来る。

 その女性がいない時はきちんと秩序ある距離感なのだが、視界に入った途端に両腕で抱き締められるという羞恥プレイを強要されるのは心臓に悪い。

 その女性に腕を掴まれないためだと分かっていても、周りの目もあるのだ。恥ずかしい。


(だってあんなに密着するなんて)


 かあっと顔が赤くなるのが自分でも分かった。今は入学式だ。校長の挨拶中だ、落ち着けと深呼吸する。


(状況の把握はした。問題はーー話が通じないというおバカさんだよね)


 正直な話、面倒くさいとしか思えない。

 しかも、自分とグレンだけの問題ではないようだ。


(まさか殿下ーーアレクシス様が気を許すなんて)


 彼だけではない。ヴィンセントもそうだ。

 マシューはグレン同様嫌がっているので、何か線引きがあるのか、と考えても埒が明かない。


(アーリン様、大丈夫かしら)


 例のお茶会は、フェリシアがブロウズ伯爵家の令嬢として参加した年で終わった。

 殿下の同年代との交遊を図る目的とされているが、実際には婚約者と学友の選定の場であった。

 その年、アレクシスの婚約者にアーリンが決まり、学友はすでにグレンとマシュー、ヴィンセントと決まっていたため、以降の開催が必要なかった。


 そのアーリンが、蔑ろにされている。

 アレクシスがその女性と共にする時間を作るものの、アーリンとは挨拶程度の交流しかしていないらしい。

 アーリンは公爵家令嬢。

 相手は侯爵家令嬢。

 立場はアーリンの方が上だが、アレクシスの寵愛はその女性に向いていると考える者達は、侯爵家令嬢についているようだ。


(アレクシス様にはどんな考えがあるのかしら)


 まだその女性がアレクシスやヴィンセントと一緒にいるのを見ていない。

 グレンには関わって欲しくないと言われてしまった。マシューも同意見で、アレクシスとヴィンセントに会うことさえ止められる始末だ。


 ぼんやりとそんな事を考えていると、壇上から名前を呼ばれ、すでに避けきれない運命らしいとため息を漏らした。

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