再会からの始まり[その3 ]
誤字を直しました。
ご指摘ありがとうございました。
フェリシアが部屋を出ると、ジョナスとグレンがいた。アレクシスがいないので首をかしげると、ジョナスがお茶会用に着替えてると教えてくれた。
先程の服でもきらびやかなのに、お茶会用はどうなるのだろうと驚くばかりだ。
フェリシアは、薄い化粧と髪の毛を結い上げて貰った侍女長達に視線を向け、頭を下げた。
「ありがとうございました」
「いいえ。この程度ならいつでもどうぞ」
「お手数をお掛けしました」
親らしくジョナスも礼を言うと、二人は肩をすくめる。
「怖くないように致しました」
「……あれは緊張したフェリシアのためにですね」
「ふふ。分かってますよ。今回は見逃して差し上げます」
「ありがとうございます」
背中に嫌な汗をかいて、ジョナスは苦笑する。大きな借りが出来てしまったような気がする。
「フェリシア嬢。庭園へ行きましょう」
グレンが差し伸べた手に迷いながらもフェリシアが手を乗せると、こほん、とわざとらしい咳払いがした。
「今日は特別に彼に任せるよ。
フェリシア、帰りは一緒に帰ろうね」
「はい」
フェリシアに合わせて中腰になり言うと、にっこりと微笑み頷き返す。
しかし、手はグレンのそれに乗せたままだ。正直、面白くはない。
「ブロウズ伯爵、それではお茶会に行ってきます」
「……フェリシアをよろしくね」
「アレクシス様もいらっしゃいますから、ご心配なさらずに。
フェリシア嬢、参りましょう」
「はい。
お父様、行ってきます」
スマートにフェリシアの手を腕へと導き、グレンが歳に似合わぬエスコートをする。そつのなさがますます面白くない。
「あんまり口煩いと嫌われますよ」
「うっ」
侍女長の言葉に、ジョナスはうなだれた。
□ □ □ □ □
先程二人と話したからといって、やはりお茶会の会場が近付くと、緊張が増していった。
そんなフェリシアの変化に、グレンは自身の腕に乗せられたフェリシアの手に触れ、大丈夫だと頷き、自分たちに宛がわれたテーブルに向かうと、すでに一人来ていた。
「遅かったね、グレン」
レイクス侯爵家の子息マシューが軽く右手を上げる。ちらり、と隣にいるフェリシアを見て、それから再びグレンに視線を向ける。
「マシュー。こちらはブロウズ伯爵家のフェリシア嬢です」
「フェリシアです。よろしくお願いいたします」
スカートを摘まみお辞儀をすると、マシューが手で席を示して座るように促す。
グレンに椅子を引かれて着席すると、彼もまた席に着いた。
「……ブロウズ伯爵家って宮廷魔術師の?」
「はい。父は宮廷魔術師団の一員のジョナスです」
「……確か、次期当主が養子にきた、そうですよね?」
「はい。兄ローレンスが跡継ぎです」
夏にお茶会に来た時はオールポート伯爵家だったのが、ブロウズ伯爵家に変わっている。
その事に表情が固くなったのがフェリシアにも分かった。
「伯父ライナスーーデイトン伯爵家との繋がりがあったので」
「デイトン伯爵家とブロウズ伯爵家は、領地が隣り合っていた、かな?」
「はい。昔から仲がいいみたいです」
きっと聞きたいのはそれではない。
フェリシアにも分かったが、何故伯爵家から伯爵へ養子に出たのか、この場で話せるものではなかった。
マシューも聞き出しはしなかった。
「悪い。遅くなった」
息を乱しながらやって来たのは、ドイル伯爵家の子息ヴィンセントだ。やや乱暴に席に座る。
「また訓練場に?」
「少し訓練を受けれることになってさ」
近衛師団の団長を父親が務めている関係で、たまに手合わせをして貰える。
しかしまだまだ子供のヴィンセントは、見学がメインだ。
「ん?その子は……」
「こちらはブロウズ伯爵家のフェリシアです」
「フェリシアです。よろしくお願いいたします」
着席したままお辞儀をする。
「?ブロウズ?」
ヴィンセントは眉を寄せたが、マシューとグレンの様子から話はそこまでにした。
「俺はヴィンセント・ドイル。よろしく」
思わず右手を出し、相手が女の子だと直ぐにその手で頭をかく。
「女の子にする挨拶じゃないか。ま、よろしく」
「よろしくお願いいたします」
小首をかしげてにっこりと微笑むフェリシアに、ヴィンセントの動きが一瞬止まる。
「僕の自己紹介がまだだったね。マシュー・レイクスです」
そんなヴィンセントの様子に苦笑しながらマシューが名乗り、フェリシアは再びよろしくお願いいたします、と返した。
「フェリシア、と呼んでも?」
「ええ」
「僕のことはマシューと」
「はい、マシュー様」
「別に様もいらないけど……それは難しいかな」
「すみません。私は伯爵家なので……」
「俺もヴィンセントでいい」
「はい、ヴィンセント様」
「様はいらない」
「私の方が年下ですから」
あっという間に距離を詰めている友人にグレンは苦笑した。そういえばアレクシスもフェリシアと呼んでいたな、と思い出した。
「私もフェリシアと呼んでも?」
「はい」
「私はグレンでいいよ」
「はい、グレン様」
にっこりと微笑むフェリシアは、かなり緊張が解けてきたようだ。グレンも笑みを返すと、そこで周りの空気が変わる。
視線を出入口に向けるとアレクシスがこちらのテーブルにやって来る。
マシューとグレンは目を合わせ、ため息をついた。
猪突猛進にやって来られると、フェリシアが不快感を抱かれる原因にしかならない。
アレクシスと目が合ったので、隣のテーブルのスノー公爵家のアーリンに視線を動かすと察したようだ。
「フェリシア、大丈夫そうか?」
「はい。今、皆様とご挨拶していました」
察したものの、アレクシスはフェリシアに声をかけた。グレンとは先程から一緒だったので心配していないが、マシューとヴィンセントとも問題なさそうだと分かると、「楽しむといい」と言ってアーリンのいるテーブルへと向かって行った。
面白くなさそうにこちらを見ていたアーリンも、「待たせたな」と侘びともとれる発言をしたアレクシスに溜飲を下げたようだった。




