再会からの始まり[その2 ]
誤字を直しました。
ご指摘ありがとうございました。
フェリシアはジョナスに手を繋がれながら、視線をあちこちへ向けていた。
王宮に来たのは、魔力測定と例のお茶会だけで緊張から周りを見る余裕もなかったし、城の大きさや庭園の美しさが物珍しかった。
本来なら、前の二回あった嫌な記憶から来るのも拒みたいくらいだが、ジョナスが手を繋いでいてくれるので、フェリシアはわりと普段通り子供らしく好奇心のままに視線を動かしていた。
「……ちょっとこの部屋で休もうよ」
「はい」
城内の調度品の素晴らしさに高揚する気持ちを押さえて、フェリシアはジョナスに頷き、後について部屋に入った。
視線が部屋の中、窓際に向いた時、フェリシアは一瞬固まり、直ぐにジョナスの後ろに隠れ、抱きついてきた。
密着する体から、震えが伝わってきてジョナスは何度も頭を撫でる。
「フェリシア嬢。前回の私の行動を謝罪したい」
あまりの単刀直入ぶりにジョナスは苦笑した。真っ直ぐすぎるのはこの王子のマイナス点だ、と改めて思う。
「だって。フェリシアはどうする?」
ジョナスの問いに、首をかしげ、後ろからこっそりアレクシスを窺い見るフェリシアは、小動物のようだ。
「フェリシアは仲直りしたくない?」
慌てて首を振るフェリシアに、二人がほっと息を吐き出したのが分かった。
「前回は私が悪かった」
周りに人の目がないからか、アレクシスはフェリシアに頭を下げた。それは本来なら王族としてとるべき態度ではない。
「いえっ、あの」
フェリシアが困ってジョナスに助けを求める。
「許すの?」
「そんな大仰な」
「前回が初めてだというのに、何のフォローも出来ずに申し訳なかった」
フェリシアは更にグレンからも謝罪され、よりおろおろするだけだった。
「じゃあ、二人と仲良く出来る?」
「はい」
フェリシアは頷くと、ジョナスの後ろから姿を現しスカートを軽く摘まんだ。
「ブロウズ伯爵家のフェリシアです。以後お見知りおきを」
「俺は第一王子のアレクシスだ。困ったことがあったら何でも言え。遠慮はいらない」
「はい」
ほっとしたのか、フェリシアの笑みが本来の優しく深いものになった。それは身内用だと教えていなかったとジョナスは内心舌打ちする。
案の定、アレクシスが顔を赤らめた。
「私はアッシャー伯爵家のグレンです。
以後お見知りおき」
片膝立ちで挨拶したかと思ったら、グレンは流れる仕草でフェリシアの手を取り、手の甲に口付けた。
慣れない状況にフェリシアは首まで真っ赤になり、グレンを見つめていたが、小さな声で、はい、と頷いた。
(油断も隙もないよ、この子)
ジョナスが仏頂面になったのは仕方がない。アレクシスも面白くなさそうだ。
「……そのままではお茶会に出づらいでしょう。
人を呼んできます」
グレンは立ち上がり、部屋を出ていった。怖がった時に泣いてしまった跡が頬に残っている。
「フェリシア嬢。いや、フェリシアと呼んでもいいか?」
「はい、殿下」
「俺のことは、アレクシスと呼べ」
「?はい、アレクシス様」
グレンがいない間に距離を詰めにきた、とジョナスは苦々しく思った。
フェリシアは何も気付いていない。アレクシスは満足げに笑っている。
(領地に居させるつもりだったのが仇になったなぁ)
ローレンスの提案通り、さっさとマナーや一般教養などの家庭教師を雇うべきだったと反省するが、後の祭だ。
王子が名前を呼ぶことを許すことの意味をフェリシアは知らない。まあ、仲の良さのアピールくらいの意味だが。それでも軽いものではない。
「僕としては、殿下はないんだけどねぇ」
「……ブロウズ伯爵?」
アレクシスが睨んできたので、ジョナスは肩をすくめる。つい声に出た。
「フェリシアの意志に任せますよ。ね」
フェリシアに視線を向けると、よく分からないと首をかしげる。分からなくていいんだよ、とジョナスは頭を撫でる。
すると、二回ノックされた。グレンが戻ってきたようだ。
「入れ」
「失礼します」
グレンは侍女長ともう一人連れて来ていた。
侍女長はフェリシアを見ると、あらあらと嘆息した。
「直ぐにお茶会が始まるので、直していただけますか?」
「そうですね。
では、男性陣は退出を」
「え?」
「まさか、このまま女性の支度を見るなんて不調法はなさらないですよね?」
笑顔ではあるが目が笑っていない侍女長に、三人に頷き退出しようとすると、フェリシアがジョナスに抱きついてきた。
まだ女性恐怖症は治ってない。侍女長の今の態度に、離そうとしただけで、フェリシアはいやいやと顔を横に振る。
「怖くないから大丈夫」
怖くない、と言われて明らかに侍女長達がいらっとしたのが分かったが、抱きついてくるフェリシアをどうにかしないとならない。
「フェリシア嬢」
呼ばれてフェリシアはグレンに視線を向ける。しかしまだジョナスに抱きついたままだ。
「私が呼んできた二人ですから、大丈夫です。
ーー私を信じてください」
グレンの言葉に、フェリシアはゆっくりとジョナスから手を離し、こくんと頷いた。
侍女長達に視線を向けると、頭を下げた。
「あのっ……お願いします」
フェリシアに頭を下げられて、二人は苦笑した。仕方ないわね、と肩をすくめると三人を振り返る。
「さ。男性陣は退出を」
「はい」
三人は大人しく部屋を出ていった。ジョナスがちらりと見ると、フェリシアは侍女長に手を引かれていた。大丈夫そうなその様子に安堵した。




