再会からの始まり[その1 ]
すみません。ローレンスの婚約者の名前を変えました。
誤字を直しました。
ご指摘ありがとうございました。
無事に廃嫡から養子縁組まで済むと、さっさとブロウズ伯爵家の領地に向かった。
領地にて遠縁のギーズ子爵の令嬢ライラとローレンスの見合いから婚約までが、三ヶ月も掛からずに済んだのは僥倖だった。
母親と異母姉に冷遇されていたため、歳上の女性恐怖症の気があるフェリシアが、優しくされてライラになついたのが最大の理由だ。ローレンスは重度のシスコンだとジョナスは思う。
しかし周りからすると、ライラにベッタリなついたフェリシアを見て、焼きもちを焼いているジョナスは立派な親バカなのだが。
再び社交ジーンズに入り、ローレンスが夜会に出ると何も知らないオールポート伯爵家夫婦に睨まれたりもしたが、至って平和だった。
夜会でローレンスが口説かれまくっていても平和だった。
フェリシアはあの家族と会わないように領地にいて、ローレンスとジョナスは毎日向こうとこちらを往復している。
表向きはタウンハウスへ帰っているので、知らない人にはバレていないだろう。
そんな平和に、やってきた人物にジョナスはため息をついた。
「何か用ですか?殿下」
口調が冷たいのは仕方がない。こいつがフェリシアをどれだけ傷付けたことか。
前回のお茶会の後、直ぐに社交ジーンズは終わったので彼らは気にしていなかったようだ。
しかしまた社交ジーンズが始まり、フェリシアの姿が三ヶ月近くもないのを不審に思い、探し始めたらしい。
「オールポート伯爵家の令嬢について聞きたい」
「ベリンダ嬢ですか?夜会で見かけたくらいでよく知らないですね」
フェリシアのことだろうとは思ったが、今はもう廃嫡手続きは完了しているので、あの家の令嬢ではないのだ。
「いえ、ベリンダ嬢の下の……」
「オールポート伯爵家には、ベリンダ嬢しかお子様はいらっしゃらないはずですよ」
「……え?夏にフェリシア嬢がお茶会に来ていましたが」
「今は、オールポート伯爵家には、ベリンダ嬢しかいないんですよ」
財務大臣のアッシャー伯爵家の令息、グレンが目を見開いた。どうやらジョナスの言っていることが、理解出来たようだ。
王子ーーアレクシスの様子をちらりと見ると、ポーカーフェイスに徹し切れず、手を握り締めている。こちらも把握したのだろう。
「……俺のせいか」
「そうですね」
「……っ」
ジョナスが肯定すると、アレクシスはギリっと奥歯を噛み締める。
そんなに後悔するなら、王族ともあろう御方が、感情のままにあんな発言をするなよ、とジョナスは苦々しく思った。
「……謝りたいと思っていたんです」
グレンが呟いた言葉に引っ掛かりを覚える。
「君が何かした訳じゃないよね」
「でも、その場にいて、何もフォロー出来なかった訳ですから」
アレクシスはまるで何かに怒っているかのように、瞳に怒りの色が見える。
「探し出すぞ」
「……は?」
「そうですね、見つけましょう」
「見つけてどうするんですか?」
「勿論、保護する」
「女の子一人、放っておけません」
アレクシスとグレンは、お互い頷き合うと、さっさと捜索を開始しそうな勢いだった。
「……見付ける、ねえ」
「ブロウズ伯爵は心配ではないのですか?」
グレンが眉毛を寄せる。
「何を心配するんです?」
「!女子が一人きりだぞ?心配しない訳ないだろう!」
アレクシスがジョナスに非難して声を荒げたが、それすらもジョナスは減点対象としてカウントする。
感情のままに行動するのは王族としてダメだと、フェリシアの件で思いしったはずなのに。
「一人きり、なんて申し上げてませんよね?」
「……え?」
アレクシスとグレンの声が合い、茫然としている。
「オールポート伯爵家との廃嫡手続きが完了して関係が切れてから、フェリシアとその兄ローレンスは私と養子縁組をしましたから」
「えぇ!!」
二人とも声をあげ、こぼれそうなほど目を見開いている。
先にいくらか元に戻ったのはグレンだった。
「あの、ブロウズ伯爵。
一度フェリシア嬢との面会をお願いします」
「お断り致します」
グレンが頭を下げきる前に、ジョナスは首を振る。グレンがその頭を上げる。
「どれだけ傷付けたか分かってますか?
フェリシアはまだ五歳です。
僕のところに養子縁組で来たとは言え、廃嫡されたショックがどれ程か」
毎晩うなされるフェリシアは、タウンハウスの侍女達の涙を誘った。なにしろ、ローレンスが寄り添って眠っているのに、うなされるのだ。
「……それは」
悲壮感漂う表情で、グレンは言葉が出てこなかった。
しかし、アレクシスは引かなかった。
「ブロウズ伯爵の言いたいことは分かった。
しかし、このままでは彼女が同年代と関わることができない。それは彼女にとっていいことではない」
「殿下の発言によって、彼女の印象は最悪でしょうね」
ぐっと一度アレクシスは言葉が詰まった。しかし、それでも止めない。
「俺がエスコートする。
それによって、仲違いが解消ーーまあ、俺が謝罪したことが分ければ、彼女に対して何か仕出かす者もいないだろう」
「王子のエスコートはちょっと。
ウチはギリギリ王妃になれてしまう爵位ですからね。色々危ない」
アレクシスを狙う令嬢はあのお茶会にも何人も来ていた。そこにフェリシアを行かせるのはまだ不安だ。
「では、私がエスコートでは?」
「……君が?」
財務大臣の息子であるグレンだって引く手あまただ。
ただ、王子であるアレクシスよりはまし、というだけだ。
「君達は、自分の影響力を分かってないね」
いい縁を掴もうと、貴族達がどれだけ自分の子供達にいい聞かせているのか。
この二人と関わると、フェリシアが必ず巻き込まれる。
しかし、フェリシアをお茶会から遠ざけるのは、将来的にも確かに良くない。このお茶会のメンツと関わらない配偶者はまずいないだろうーー貴族ならば。
(一生ウチに居てもいいのに)
先日そう言ったら、シスコンのローレンスにも、フェリシアを溺愛しているライナスやリオンにも、ましてやカイルにさえもダメ出しされた。
特にローレンスには、きちんとフェリシアの幸せを考えるなら結婚して新たに家族を得る機会を与えるように、とまるでこちらの方が年下なのではないかというような注意を受けた。
それでもジョナスが口を尖らせていると、フェリシアに似た孫がいらないんだな?とカイルにニヤニヤ笑われた。
まだ五歳だ、と言ったら、お茶会がもう始まってますよね、とローレンスが睨んできた。
確かにその通りなので仕方がない。
(まあ、まだグレンの方がましかな)
ジョナスは二人を観察する。二択なら、王子は排除だろう。結婚して王妃になんて、絶対嫌だ。家に帰って来ないじゃないか。
「エスコート、ってほどきちんとされると困るかなあ。
だから、ね」
ジョナスは二人と打ち合わせを始めることにした。
父親なのだから仕方がない。
なんとかフェリシアにとって、いいお茶会になるよう画策するとしよう。




