表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の趣味に付き合わされて  作者: 五月女ハギ
プロローグよりも前に
10/52

出会いと転機と[その3 ]

 ローレンスの部屋へ移動し、侍女達を下げた。


「俺は部屋を片付けているよ……本当に大丈夫か?」

「はい。デイトン家とブロウズ伯爵家のカントリーハウスを往復したことがあります。大丈夫です」


 フェリシアはにっこり微笑み、呪文を唱え始めた。まだ時間は夕方だから、迷惑な時間帯ではない。


「行ってきます」


 光を放ち、フェリシアは出掛けて行った。


「……ちょっと見ない間に、成長するもんだな」


 年寄染みたことを言い、ローレンスは部屋の片付けに取りかかるのだった。



 □ □ □ □ □



 フェリシアが飛んだ先は、デイトン伯爵家でいつもフェリシアに宛がわれている部屋だった。

 乱れた息を整え、扉を開けるとーーリオンと目が合った。


「……フェリシア?」

「リオン兄様。伯父様はいらっしゃいますか?」

「父上なら、執務室に……」

「ありがとうございます。ご在宅で良かった」


 リオンは階段を下りていく従妹をぼんやり見送った。




 フェリシアが一階に着くと家令のウォルトが一瞬目を見開き、しかしすぐに冷静さを取り戻した。


「フェリシア様。いかがされましたか」

「あの。突然でごめんなさい。伯父様にお願いがあってやって参りました。

 ……取り次ぎをお願い出来ますか?」

「畏まりました。仕事も一段落着く頃ですから、執務室にご案内致します」

「ありがとう」


 フェリシアを連れてウォルトは執務室へ行き、ノックをする。


「旦那様。フェリシア様がお見えです」

「……フェリシアが?すぐに連れてきなさい」

「今ここに」


 言いながらウォルトは扉を開け、フェリシアを中へと促した。


「突然ごめんなさい、伯父様」

「構わないよ。

 ……しかし、ジョナスの教えがさっそく役立ったみたいだね」


 ライナスは微笑むとフェリシアにソファーを勧め、自分も腰を下ろした。


「急用なのかな」

「はい。あの……」


 そこから三十分ほど、フェリシアは自分と兄が廃嫡されること、その際に辞める使用人が出たら口利き、口添えをお願い出来ないかと話した。

 今は兄の部屋にいることになっており、こちらに来ていることは兄しか知らないことも伝えた。

 ライナスは途中から眉間に皺を寄せ、頷くだけだった。

 話終わってもしばらくそのままだったので、不安がったフェリシアが視線をさ迷わせると、ウォルトがため息をつく。


「旦那様」

「……今回きりだ」

「えぇ、そうですね」

「ああ。ローレンスとフェリシアがいなくなるオールポート伯爵家には関わる必要がない」

「伯父様?でも母の実家はここですし……」

「エイダには婚姻の際、一生暮らせるほどの持参金を持たせているよ。

 以降、デイトン家に無心しないことを約束させて、ね。

 あれで足りないのなら、使いすぎだ」


 聞いたことのない話にフェリシアは目を瞬かせる。

 無心しない約束だから、娘を送り付けるのは別に構わないとでも思っているのか、と不思議だった。


「口利きと口添えは、君たち二人が信頼している使用人ならしてあげるよ」

「ありがとうございます、伯父様」

「それとは別に……」


 ライナスが真剣な眼差しをフェリシアに向けた時、突然扉が乱暴に開けられた。


「緊急事態だよ、ライナス!」


 ジョナスが突入してきた。しかし二人を見て、さらに大声をあげる。


「なんでフェリシアが?」

「……いいから座れ」

「いや、フェリシアが茶会でアレクシス殿下に暴言吐かれたんだって?」

「いえ、あの……」

「暴言?」

「許しを出すまで俺の前に顔を出すなって」


 ライナスの目が細められた。


「ジョナス。なぜそこまで知っている?」

「本当は僕が警備の一員だったんだけど、急用が出来て後輩と代わったんだよね。

 そしたら、後輩とフェリシアがいい雰囲気だと殿下が誤解しちゃってさぁ」

「……いい雰囲気?」


 フェリシアが首をかしげる。知り合いでもないのに、いいも悪いもない。


「……殿下の誤解はこの際置いておく」

「えぇ?!」

「ジョナス、お前の跡継ぎ問題はもう解決したのか?」

「それはまだだけど……そんなことよりフェリシアが」

「今回の件で、フェリシアが廃嫡されることになった」

「フェリシア、本当?!」


 ジョナスに肩を掴まれ前後に揺さぶられる。フェリシアは何度も頷いた。


「私と、兄も一緒に廃嫡に」

「なんでフェリシアのお兄さんも?って言うか、フェリシアにお兄さんいたんだ?」

「ローレンスは私が色々領地運営を教えているよ」


 ジョナスがピクリ、とライナスの発言に反応する。

 フェリシアから手を離し、ライナスに視線を向ける。


「……もしかして、それって」

「あの家と二度と関わらないでいいように、廃嫡が済んでから事を進めることになるが。

 一度会ってみるか?」

「もちろん」


 ジョナスに解放されたものの、まだぼんやりしていたフェリシアは、話の流れが分からなかった。


「フェリシア。口利きと口添えは先ほど言った通りだ」

「はい」

「それから、ローレンスとフェリシアに、ジョナスのところーーブロウズ伯爵家との養子縁組の話があると、ローレンスに伝えなさい」

「え?」

「なんなら今からブロウズ家のタウンハウスで会う?」

「え?」

「そうだな。一度ローレンスと会っていた方がいいな」

「じゃあ今からウチにフェリシアと飛んで、フェリシアが家に戻ってお兄さん連れて僕のウチにおいで」

「ジョナス。その後ここにもこい。打ち合わせるぞ」

「了解。行ってくるね」


 ジョナスはまだ理解しきれていないフェリシアの手を取ると、さっさと飛んで行った。


「……騒々しかったな」

「ですが、ローレンス様とフェリシア様には良かったかと」

「ブロウズ伯爵家にとってもね。ジョナスがいい人材を連れてくるとは思ってないだろう」

「しかしブロウズ伯爵家の縁のある方々がどう動くか……」

「デイトン家との繋がりが強くなるんだ、満更でもないだろう」


 ライナスが笑うと、ウォルトも頷いた。そもそも、親戚の男児は使えないとジョナスが判断したのだから、仕方がないだろう。


「さて。うるさいのが帰ってくる前に、今日の仕事を終らせるよ」

「畏まりました」


 ライナスは机に戻り、あと少し残っていた書類を手にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ