七色高校文芸部活動録~NGワードな人狼編~
ここは七色高校文芸部部室。文芸部を名乗っているが部員のほとんどはただのオタク高校生であり、今日も大半の部員がトレーディングカードゲームに励んでいた。
あの男が部室に入ってくるまで――
部長「新しいゲームを思いついた!」
緑谷くん「入って来るなりいきなり何言ってんですか部長」
部長「まあ待ちたまえメガネくん」
緑谷くん「あんたもメガネでしょ!?」
土田くん「それで今度はどんなゲームを考えたんすか」
部長「それはだな土田君、男女でカードゲームをやるという、カードゲーム屋だったら奇異の目で見られる行為を毎日のようにやっている君らにぴったしのゲームだよ」
青野くん「え、女の人とカードゲームやっちゃいけないんですか?」
部長「可愛いな青野君は」
黒井さん「……変態がいる」
赤瀬くん「いいから本題を進めてください」
部長「うむ! 今回考えたのはNGワードゲームと人狼を組み合わせた全く新しいゲームだ!」
空山さん「よく分からないけど、面白いかも」
白峰さん「あの~、私どっちもやったことないんですけど……」
金本くん「部長。検索したらそのゲーム、もう誰かが考案してます」
部長「細かいことはいいんだよ!! 今からルールを説明するからよく聞きたまえ!!」
ルール:
・基本は人狼ゲーム
・人狼は言霊に捕らわれているという設定で、村人はそれぞれに定められているNGワードを言わない限り人狼に襲われない
・人狼にもNGワードが決められており、それを言うと夜パートの始めに死ぬ
・人狼は村人のNGワードを見ることができる
・占い師は占った相手が人狼か村人かだけでなくNGワードも見ることができる
・NGワードはゲームマスターが各人に対し定める
部長「さて、ホワイトボードに書いたこのルールに対し何か質問は?」
金本くん「部長、これって人狼側が凄く不利じゃないですか?」
部長「その通りだ。よって人狼側の人数を増やす。今日いるのが9人。俺がゲームマスター、すなわちGMをやるから……村人4、占い師1、人狼3でどうだ」
赤瀬くん「ゲームバランス悪そうですね」
部長「悪いだろう、だが男は度胸、なんでも試してみるもんさっ!!」
白峰さん「あの~、私男じゃないし、人狼やったことないからルールが……」
黒井さん「……これ」
白峰さん「あっ、これ人狼ゲームのルールですね。ありがとうございます黒井さん」
黒井さん「……」
部長「さて、準備も整ったことだし」
緑谷くん「整ってませんよ!?」
部長「NGワード人狼ゲーム、ぐだぐだに始めようじゃないか!」
赤瀬くん「ぐだぐだってもう言ってやがる……」
(*)ここからは『名前(NGワード)』の表記による会話をお楽しみください
なおNGワードを言ってしまった場合はNGワードの部分が「OUT」になります
~1日目・昼~
部長「村に人狼が紛れ込んでなんか人を襲ったっぽいので適当に村人内で人狼が全滅するまで処刑しまくってください。人狼側は自分の言霊を言わないようにしながら村人に言霊を言わせてください。では開始!!」
赤瀬くん(部長)「部長、適当すぎです」
部長「言っておくけどもう開始しているからな」
赤瀬くん(OUT)「分かってます」
土田くん(俺)「それで、どうするよ」
空山さん(受け)「あ、私占い師だから結果言うね」
青野くん(姉)「ちょっと待ってください、ボクも占い……」
金本くん(人狼)「ちょっと待て2人とも。役職とかはいかにもNG……ダメな言葉っぽくないか?」
青野くん(姉)「あ、確かにそうですね」
緑谷くん(メガネ)「そう決めつけるのは早計では……」
土田くん(俺)「念のために越したことはないだろメガネ君」
緑谷くん(メガネ)「なんでみんな人のことをメガネ君扱いするんですか!?」
金本くん(人狼)「とりあえず2人の結果を聞こう」
空山さん(受け)「じゃあ私から。緑谷くんは村……ノンケで、ダメ言葉は『メガネ』だったよ」
緑谷くん(OUT)「……ってもっと早く言ってくださいよっ!? もうNGワード言っちゃいましたよ!」
空山さん(受け)「ドンマイ♪」
緑谷くん(OUT)「あああ……」
金本くん(人狼)「青野の方は?」
青野くん(姉)「空山先輩が……ウルフで、禁句は『受け』です」
空山さん(受け)「そんな言葉なの!?」
白峰さん(ピザ)「ということは、今日は空山さんを処刑すればいいんですか?」
金本くん(人狼)「いや、青野が偽物の可能性もある。だから吊るべきかどうかは普通悩むんだが……」
黒井さん(ゲーム)「何か……アイデアでもあるの……?」
金本くん(人狼)「少なくとも占……正体を見破れる2人の内、片方はウルフだ」
土田くん(俺)「そうだな」
金本くん(人狼)「その2人を先に吊れば残りはウルフ2人とヒューマン4人。しかもウルフは禁句を言わせないと襲えない」
青野くん(姉)「つまりヒューマン側が有利ってことですね」
土田くん(俺)「バランス悪いなこのゲーム……」
金本くん(人狼)「だから今日は空山さんを吊るのが良いと思う」
緑谷くん(OUT)「論理的ですね……」
赤瀬くん(OUT)「まぁ、それでいいんじゃないかな」
土田くん(俺)「俺もそれでいいぜ」
青野くん(姉)「了解です」
白峰さん(ピザ)「よく分からないけど、わかりました」
黒井さん(ゲーム)「決定……」
空山さん(受け)「くやしいけど、今日の受けは私ってことね……!」
今日の処刑:空山さん(受け)
~1日目・夜~
緑谷くんが行方不明になりました。
土田くんが行方不明になりました。
~2日目・昼~
赤瀬くん(OUT)「いきなり2人消えたぞ!?」
金本くん(人狼)「禁句が相当厄介なんだな……」
青野くん(姉)「えっと、見破りの結果、赤瀬先輩がヒューマンで、禁句は『部長』です」
赤瀬くん(OUT)「分かった。気を付ければ襲われないわけだから、勝利確定か」
黒井さん(ゲーム)「……」
白峰さん(ピザ)「どうしたの黒井さん?」
黒井さん(ゲーム)「……いえ、なんでもないわ」
金本くん(人狼)「それで、青野はどうして赤瀬を調べたんだ?」
青野くん(姉)「口数が少ない気がして……」
金本くん(人狼)「なるほど。妥当な判断だな」
赤瀬くん(OUT)「それで、今日は青野を処刑か」
青野くん(姉)「そうなりますね。でも赤瀬先輩がNGワード言わなければ勝てます」
黒井さん(ゲーム)「……言ってる」
青野くん(姉)「え?」
黒井さん(ゲーム)「一番最初に……赤瀬君言ってる……」
赤瀬くん(OUT)「マジで」
黒井さん(ゲーム)「……マジで」
赤瀬くん(OUT)「やっちまったか……」
金本くん(人狼)「赤瀬がウルフだったら、青野を吊ればヒューマンの勝利になるな。赤瀬がヒューマンなら、青野を吊ってもウルフは残り1人。ヒューマンは赤瀬が消えて残り2人。ギリギリの勝負だな」
白峰さん(ピザ)「残るのは私と黒井さんと、金本君だよね」
黒井さん(ゲーム)「……」
青野くん(姉)「どれも怪しくないですね」
赤瀬くん(OUT)「口数で言えば黒井さんが怪しいが、確証は無いな」
青野くん(姉)「白峰先輩も口数少ないし……金本先輩は頼りになるから違うかな……」
白峰さん(ピザ)「う~ん、全然わからないし……」
金本くん(人狼)「今までの発言を思いだしながら考えるしかないな……」
黒井さん(ゲーム)「……」
今日の処刑:青野くん(姉)
~2日目・夜~
赤瀬くんが行方不明になりました。
~3日目・昼~
白峰さん(ピザ)「今日はどうすればいいのかな?」
金本くん(人狼)「今までの発言を思い出す限り、黒井さんは赤瀬のミスを指摘しているからヒューマン側の感じがする」
黒井さん(ゲーム)「……」
白峰さん(ピザ)「黒井さんが思い出してくれたから、余裕が出来たと私は思うよ」
金本くん(人狼)「ただ……信用を得るための指摘だった可能性も否定できない」
黒井さん(ゲーム)「……そうね。でも、それなら金本君も同じでしょ……?」
金本くん(人狼)「同じだな」
白峰さん(ピザ)「え~と、つまり2人とも怪しいってこと……?」
金本くん(人狼)「そういうことだ」
黒井さん(ゲーム)「……そういうことよ」
白峰さん(ピザ)「金本君も黒井さんも、なんか似てるよ……」
金本くん(人狼)「白峰さんは……どっちが怪しいと思うかなんて、決まっているかぁ……」
白峰さん(ピザ)「え?」
金本くん(人狼)「でも良く考えてからにして欲しいかな」
黒井さん(ゲーム)「……」
白峰さん(ピザ)「えぇ~……」
投票の結果――
今日の処刑:黒井さん(ゲーム)
~3日目・夜~
今日の行方不明者はいませんでした
~4日目・昼~
白峰さん(ピザ)「金本君がおおか……ウルフだったなんて……」
金本くん(人狼)「白峰さんは真面目だからね」
白峰さん(ピザ)「何言って……ねぇ、なんで両ヒジを前に出してるの?」
金本くん(人狼)「ねぇ白峰さん、ピザって10回言ってみて」
白峰さん(ピザ)「なんで?」
金本くん(人狼)「いいから」
白峰さん(ピザ)「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザ、ピザ」
金本くん(人狼)「ここは?」
白峰さん(OUT)「ヒ……ひっかからないよ!」
金本くん(人狼)「ちっ!!」
白峰さん(OUT)「金本君、もしかして元から人狼みたいな性格なの? 人狼君なの?」
金本くん(人狼)「人狼君ってなんだよ……」
白峰さん(OUT)「む~……」
金本くん(OUT)「まあ、もう投票して終わらせちゃおう」
白峰さん(OUT)「……もしかして私、言っちゃってた!?」
金本くん(OUT)「うん」
白峰さん(OUT)「ひどい……」
投票の結果――
引き分けのため、今日の処刑はありません
~4日目・夜~
金本くんが無残な姿で発見されました
よって村人側の勝利です
部長「決着!! 勝者、白峰さん!!」
白峰さん「え? あれ? え?」
金本くん「……」
緑谷くん「いやこれは……」
空山さん「ちょっとねぇ……」
~今回の感想~
村人側:
緑谷くん(メガネ)「メガネをいじらないでください」
青野くん(姉)「姉ってなんですか!? 別に姉のことはそんなに話していませんよ!」
赤瀬くん(部長)「部長は死ね」
白峰さん(ピザ)「よく分からないけど勝ちました~」
黒井さん(ゲーム)「……白峰さんに裏切られた」
人狼側:
土田くん(俺)「一人称はねぇだろ!?」
空山さん(受け)「そもそも攻めだの受けだのしょっちゅう言っているわけじゃないですからそういうイメージを植え付けるようなことはやめてほしいですよね。ちなみに最近個人的におすすめのカップリングは(以下略)」
金本くん(人狼)「……このゲームないわー」
部長「それでみんな、このゲームはアリ? ナシ?」
一同「ナシで」
部長「分かった! もうやらない!!」
こうして今日も文芸部の活動は無為に終わったのであった。