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17 山越え2

「ここまでくりゃ、安心か」

 五徳とせんを乗せた馬車を止めて、氏郷が山道を振り返った。

「彼奴らなら、心配いらねーか」

 と、言ったその時、背後に有る物に気が付いた。

「・・・これは?」

 そこに在ったのは、奇妙と盛信の太刀である。

 慌てて、その太刀を腰に差して槍を担ぐと、

「うおおおお、今行くから、待ってろよ!」

 今来た街道を走り出した。

 氏郷が、息も絶え絶えに山道の曲を回った時、 奇妙と盛信が走って来た。

 その顔は、必死そのものである。

「お前たち! 無事だったか!」

 二人は、氏郷に呼びかけられたが、足を止めなかった。

「おい!」

 自分を抜いて行く二人を振り返ったが、その理由が直ぐに分かった。

 野盗が物凄い形相で追って来る!

 氏郷も二人を追いかけて走り出した。


 馬車が見える所まで逃げてくると、

「五徳逃げろー!」

 奇妙が叫んでいる。

 野盗は、すぐ背後まで迫っていた!

 ――――その時。

 ドカーン!!

 爆音が轟いて、山並みに木霊した。

 せんが、鉄砲を放ったのだ。

 当たったのか、音に驚いたか、野党が一人転んだ。

「バカ野郎! こっちに向かって打つんじゃねー!」

 氏郷が叫んだが、

「にゃはは! 心配ご無用!」

 せんが、煙の登る鉄砲の構えを解きながらニッと笑った。

「五徳ちゃん! 早く」

「面倒くさい道具ね」

 言いながら、五徳は棒で銃口を突くと、替えの鉄砲をせんに渡した。

「にゃはは! もう一発いきまーす」

 ドカーン!!

「だから、こっちに向けるんじゃねー!」

「まったく、文句が多いんだから」

 五徳が、次の鉄砲の用意をしながら、文句に文句を言っている。

 少年達は、馬車の横まで来ると。奇妙と盛信は、太刀を構え、氏郷は槍を構えて、振り返った。

 せんは、替えの鉄砲を構えてた。

 が、そこに野盗の姿は無かった。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 完全に息が上がっている。

 三人は、緊張した顔を見合わせた。一瞬間があったが、

「・・・ぷっ……はははは!」

 安どの表情を浮かべて笑った。

 

「おい見てみろよ」

 氏郷が振り返って皆に促した。

 そこからは、伊那平が一望できた。そして、遠望にそびえる山脈は、光を反射して白く輝いている。

 眼下の緑と山脈の輝きが相まって何とも美しい。

「これが、信濃の山脈かぁ」

 奇妙が景色に圧倒されるように言った。美濃から望む山並とは比べ物にならない。

「素敵な所ねぇ!」

 五徳が、心奪われるように言った。

「そうか? 何もない所だ」

 盛信は、意外と言った感じである。田舎に住む少年の感想であった。

「私は、気に入ったわ! ほんとに素敵」

「それは、良かった」

 盛信は、笑みを作って返した。自分の国を気に入ったと言われれば悪い気のする者は、いないであろう。

「では、今晩の宿は、俺が用意しよう。天然の湯もあるからくつろげよう」

 盛信は気を良くしたのか、自分から提案した。

「わぁー! 温泉ですかー! 楽しみー!」

 せんが、はしゃいで、飛んだ。

 ―――ドカーン!!

「おわああ!」

 鉄砲の火蓋が切られたままであつたのか、暴発したのだ!

 皆思いもしない不意打ちに、尻餅をついている。

「にゃはは・・・ごめんちぃ・・・」

 せんが申し訳なさそうに、しかし何とも憎めない口調で皆に詫びた。




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