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Ⅰ-i 花嫁修業事始め

 もう忘れられた噂ではあるがその昔、隣国シャシーにこの世のものと思われぬ美しさを纏って生まれし王女がいたそうな。豊かな黒髪は月夜に一層艶めき、雪のように白い肌、漆黒の瞳は濡れて星の煌めきを宿し、頬は桃色、唇は熟れた林檎のように紅く、しなやかに伸びた肢体は行住坐臥全てにおいて舞うように優雅であったとかそうでなかったとか。その美しさに惚れこんだ求婚者が後を絶たなかったのも、今はもう昔の噂。終には数人の従者と共にラカ王国に嫁ぎ娘を一人生んで数年後、その美貌衰えぬ内に没したとか。その時の従者の内、王女に最も忠実なりし者、王女の死んで後も娘共々王女の忘れ形見である姫によく仕えているとかいないとか――。


 「――つーかーれーたー!眠いっ!」

一般庶民ならば十分家族共々暮らせる広さの一室は、豪奢な家具で彩られ、その中でも優に大人五人は転がれそうな大きな寝台は、寝心地抜群の最高級品だった。そんな最高級品のベッドに、黒髪を切り揃えた女王は思いっきし沈み込んだ。

「シーナ様、お化粧だけは落としませんと。」

「……んー、気持ちいー。アズリルの用意してくれる蒸しタオルは最高だ。」

半分夢の中なのか、目を閉じアズリルのなすがままに任せる。蒸しタオルと化粧水とその他諸々を駆使して化粧落としに励むアズリルは、主君の心からリラックスした顔を見て眉間に皺を寄せた。

「……相当疲れてますね。目の下にこれほど隈ができるなんて。」

「だがお前のおかげで疲れてもすぐ回復できるよ。――ありがとう。」

途端、ぱっとアズリルの頬が赤らむ。昔からの日常茶飯事なやり取りではあるのだが、王になって続く激務の中、以前よりアズリルを頼ってくれているようなのが心底嬉しい。

 そんな嬉しさを滲ませ微笑みながらアズリルは誇らしげに、目を瞑る主に言う。

「当然のことです。――私にできることでしたら何でもやりますわ。」

「ありがとう。」

シーナも微笑みを返す。……と、何を思いついたのか、頬笑みが苦笑に替わった。

「でも今私の考えてることはちょっと我が侭すぎかもなあ。」

「そんなことありませんわ。何でも仰ってください。」

胸を張ってそう言うアズリルに、シーナは困ったように笑って、そして恥ずかしげに言った。

「実は…………レントのオムライスが食べたいんだ。」

「え!?」

戸惑ったように、アズリルが声をあげる。言われたところでアズリルに用意できないものであるし、そんな無茶ぶりするシーナでもない。だからこそ心からの我が侭なのだろうが、なんでそこでレントの名前が出てくるのかアズリルは理解に苦しんだ。

 そんな彼女を見てシーナは笑いながら話した。

「いやあ、最近あいつの顔見ると無性に食べたくなるんだ。昔一回だけ三人で食べただろう?」

「ええ、そんなこともありましたわ。」

 ラカ王十一世の正妃であった母の方針で男として育てられていたシーナ、その乳姉妹であるアズリル、それから当時の有力者、魔帥ガルガレントの一人息子レントの三人は幼馴染であり、アズリル一人身分の差はあったものの、子供故の無知と無邪気さで問題なく三人一緒の日々を過ごした。確かにそんな幼い頃一度だけ、レントがオムライスを作って三人で食べたことがある。シーナはもちろんレントも料理なんて自分で作らなくていい身分なので、何故そんなことになったのか不思議なのだが、どうしても思い出せない。

「さすがにニージェやシャロットの手前言えんし、言ったところであいつも疲れてっからな。家人も雇ってないって言うし。」

「え、まさかカイさんがお一人で家の事やってるんですの?」

信じられない、といった顔つきだ。

 アズリルがそう思うのも無理はない。レントがつい最近まで暮らしていたような山小屋ならともかく、執政官となった以上格というものが必要で、どれだけ本人が質素に暮らしたくとも周りがそうはさせないはずだ。王都の貴人街に居を構えるならば最低ランクの屋敷でも到底唯一の弟子カイ一人で管理できるものではない。執政官の家の雑務を一人でこなすのは無謀でしかないだろう。

 しかしながらシーナは意外な反応を返した。

「あいつの屋敷、本人の希望で書庫だけやたら大きいがニージェやシャロットに比べたら全くもって小さいんだ。今まで山暮らししてた大賢者様だってことで私が許した。だからカイ君一人でもなんとかなる、ってわけさ。

 ……まあ家人は本人の勝手だからいいんだがな、問題は護衛だ。」

「護衛も雇ってないんですの!?」

完全に呆れて、アズリルは言った。執政官となった以上命を狙われる可能性は大いにあるのに、護衛なしとは何とも不用心な話である。

 質素な家を許しはしても、その点に関してはシーナも困っているらしい。大げさとも言えない溜息を吐いた。

「何度言っても『大魔法使い狙う馬鹿はいない』の一点張りだ。全く困った話だ。」

シーナの即位と共に三人いる執政官の筆頭に大抜擢されたレントは確かに表向き無敵の大魔法使いであるのだが、レントに使える魔法はシーナいわく“へたれ”なのである。実のところ、精霊術と魔術を組み合わせた稀な魔法を自由自在に操れる史上最強の大魔法使いであるのは、単なる平凡な一家臣としてシーナに使えている、アズリルの方なのだ。

「呆れた阿呆ですわね。」

「心配か?」

アズリルも溜息ついて呆れていると、シーナがからかうように笑った。その目は見開き、アズリルを下から見上げている。……アズリルは憤慨したように答えた。

「あの阿呆の心配はしてませんが、シーナ様が大変でしょう?阿呆一人護衛つけないせいでただでさえ心労の多いシーナ様の悩みの種を増やすなんて……。」

シーナは自嘲するように笑い、アズリルの向こう、遠くを見つめるようにして言った。

「ま、多少は自業自得だ。あいつを大魔法使いに仕立て上げたのは私だからな。」

「そんな!シーナ様は悪くありません!あの阿呆が自分の身も護れないのが悪いんです!」

 大体男のくせに武術はからっきしだし、からっきしならからっきしで護衛(プロ)に任せりゃいいものを、などと不当な憤慨は続く。シーナは苦笑し、はたと思いついたように表情を変えた。

「そうだ!アズリル、お前レントのところで暮らしたらどうだ?」

反射的に、アズリルの眉間に皺が寄った。

「は!!!!?……あ、すみません、突然のことで……失礼いたしました。」

慌てて取り繕うものの、明らかに嫌そうな顔は直せない。しかしシーナは自分の思いつきが気に入ったらしく、ますます顔を輝かせ、説得にかかった。

「別にずっといろ、ってわけじゃないさ。しばらくの間でいい。どの道ちゃんとした護衛はつけないといけないからな。

チィの姿なら四六時中一緒でも怪しまれないし、そうすれば一時でも本当の大魔法使いだからな。私も安心できる。それに……」

シーナは極上の笑顔でにっこり彼女を覗き込む顔に微笑みかけた。

「一緒に暮らしてればオムライスの作り方聞く機会もあるだろう?」




 王都セイジェンの起源は遥か数百年前に遡ると言われている。ラカ王国ができるよりも遥か昔から人が集まり暮らしていたらしいのだが、その詳しいところは誰も知らない。

 だが実際、今のように王都となったのはラカ六世の治世である。ラカ六世は兄であるラカ五世にあらゆることで対抗意識を燃やしており、兄が亡くなり玉座を継ぐや否や遷都を宣言したのだと言う。それまでの王都がラカ五世によって盛期を迎えた、と言われていたのが気に食わなかったらしい。ならば自分は最初から栄ある都を造ってやろう、そう意気込んでの遷都だったそうだ。

 そんなラカ六世の都づくりは、王城を中心に配置し、中心部に貴族・役人の区画、その外を常時護りに駆けつけられるよう常備兵と魔導師たちの区画が囲み、さらにその外側は放射状に市や商店などの商売区画、役所や開放書庫などのある公共区画、宿や他国の寺院などのある滞在区画、花街と呼ばれる賭け事の許された例外区画などが大まかに決められ、一番外側を退役兵や兵役中の都外民、それから少数ながら外国から雇われた傭兵などの暮らす区画が囲む。区画と言っても、王都を護る戦力住まう二重の円状住宅街に簡単な商店や手習い所、治安支部なんかの住民の生活に必要な施設も含まれていたり、逆に商売区画や滞在区画に暮らす兵なんかもいるので、あくまで大雑把な区画である。

 円状区画よりも放射状区画の方が総面積は大きいのだが、その中でも最も大きな面積を持つのが商売区画である。商売区画はさらに扱う商品によってなんとなく区画が分かれている。

 そんな商売区画でも胡散臭げな一角に、特に看板の出ていない一軒があった。元は結構大きな書店だったのだが、店主一家が流行り病で亡くなって以来住む人住む人に不幸が訪れるという曰くつきの屋敷で、縁起を担ぐ商人たちの支配する区画なのに、未だ取り壊されていないのが不思議なくらいだ。取り壊せば取り壊したで呪われるのを恐れているのかもしれない。そんな屋敷に新しく引っ越してきた物好きは、不思議と未だに顔を知られていなかった。

 「――単なる偶然だろ?雨漏りしなくて書庫がこんだけあれば十分だ。」

ご近所に顔の知られていない新しい屋敷の主人は、彼の山小屋からアズリルに協力してもらい運び込んだ決して少なくない荷――といってもほとんど書物ばかりで生活に必要な物は最低限だ――をせっせと解いてはしかるべき場所に収めながら言った。一緒に越してきた弟子兼雑用係のカイが不安そうに噂について口にしたので、ばっさりその不安を切って捨てていたのだった。

「まあ確かにこれだけ立派な書庫と、その店主の残した書物がおまけとして残ってるのは魅力的ですけど……。でも国を担う執政官がそんな曰くつきの場所に住んでいいもんですかね?しかも貴人街じゃなくって胡散臭い商売区画の一角に。」

カイの常識としてありえないと思うのだが、レントは逆に胸を張って新居のよさを主張した。

「だからこそ、ここならうざったいおべっか使いの連中が訪ねてきたりもしないだろ?生活するには便利だぞ。薬問屋もすぐそこだし、滞在区画も近いから異国の書物もすぐ手に入る。」

「異国の書物って、滞在区画に本屋でもあるんすか?」

王都にきてから何かと慌ただしかったもので、カイはご近所ですらろくに巡っていなかった。北国から帰還して住居が見つかるまで数日滞在させてもらった王城も大して見学できたわけではないが、今のご近所よりは詳しい状態だ。

「そんなもんはないがな、寺院とか行くと大概書庫があって、手習いとかで写本してたりするんだ。上手くすりゃその写本を手に入れられるのさ。」

「へえ。王都にいた頃そうやって本手に入れたんすか?」

「ああ、まあ大体は城や魔導館なんかの書庫からよく借りたな。その写本ってのはそこの薬問屋の親父が無類の本好きでな。その親父から聞いたんだ。」

「薬問屋の親父って、確かここ紹介してくれたのもその人でしたっけ?」

カイは屋敷の近くにあった、如何にも老舗らしい風体の薬問屋を思い浮かべた。まだ中に入ったことがないのでレントの言う親父はわからぬが、相当親しいらしい。

 レントは大好きな本の話から一転、嫌なことを思い出したのか、苦々しく言った。

「貴人街に居を構えるなんて真っ平ごめんだったからな。……本当にここが見つかったのはありがたい。」

 荷を解く手を止め、しみじみ言う。……山小屋で暮らしていた頃から思っていたが、師匠は結構若いくせに人嫌いの気が強いな、とつくづくカイは思う。貴人なんてレントに弟子入りしていなければ全く縁のなかった人種なので実態はよく知らないのだが、多分レントの人嫌いはその貴人という人種に端を発しているのだろう。

 カイが師の人嫌いについて分析しながら荷ほどきをしていると、シャラシャラと、表の呼び鈴の鳴る音がする。誰だろう、と思いながら手を止め「はあい。」と当然のごとくカイが立ち上がり対応しに行く。

「――身なりのいい奴だったら追い返せよ。」

ぼそっと後ろ背に向かって放たれた言葉に、カイは苦笑しながら扉を開けた。

 扉を開くとそこに立っていたのは、カイよりすらっと背の高い人物で、羽織ったマントのフードに隠れて顔が見えない。と、フードが外される。

「ご機嫌よう。」

フードからこぼれた金髪の縁取る顔は複雑そうな表情で、カイはあっと驚いた。……人間姿のアズリルを見たのは王都に着いて以来久しぶりだ。

「あまり人に見られたくないので、とりあえず中に入ってもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ。」

カイが招き入れると、アズリルは羽織ったマントを外してカイに従った。

 「誰が来たんだ――?」

そう言って振り返ったレントの顔を見た瞬間、アズリルの複雑そうな表情が、余計複雑さを増した。

「家人を一人も雇ってないというのは本当でしたのね。」

「アズリル、おま、一体何の用だ?」

動揺しながら、こちらもまた複雑な表情をしてレントが言うと、アズリルはふんと鼻を鳴らした。

「護衛も雇ってない馬鹿なへたれのために、シーナ様より派遣されましたの。」

「は!?あいつ一体……。」

すっと、レントの目の前に、アズリルの手から一通の書状が差しだされる。目を白黒させて驚きながら、レントはその書状を手に取り、封を開けた。カイも師匠の後ろに回って書状を覗き見る。

『アズリルがお前のオムライスの隠し味を見つけるまで四六時中傍につくから宜しく』

「……オムライスって、なんだよ?」

「最近お疲れ気味のシーナ様が、私の作ったオムライスを食べたいと。」

「は!?お前オムライスくらい作れるだろ?」

 確かに、チィの時にカイはよく一緒にご飯を作ったが、包丁の扱い方が明らかに料理のしたことのある人間のそれで、危なげなかった。その時はきっとよく手伝いをする子に違いない、と思っていたが、シーナに仕える乳母子である以上、幼い頃からそれくらいできて当たり前だったのだろう。

「作れますけど…………苦手なんですもの。」

「え!?」

意外な言葉にレントが驚いていると、アズリルは心底嫌そうな顔つきで繰り返した。

「ですから料理だけは昔っから苦手なんですの!何回も言わせないでください!」

そう言って、ふん、と鼻を鳴らす。

 いやそこで逆ぎれされてもなあ、と思いながらカイは苦笑した。師匠なんかは意外そうに心底驚いた顔をしている。が、ふとその表情が嫌なことを思い出したのか、歪む。

「……シーナの奴、余計なことを……。」

「まあなんですの!?勿論美味しいオムライスの作り方教わりたいというのは建前ですわ。本音としてはあなたが護衛もつけないから心配なさって……。あなたのせいで私はまたシーナ様と離れて暮らすことになって、ホントいい迷惑ですわ!」

どきっぱりとした台詞に、口をパクパクさせているレントはまるで死にかけの金魚のようだとカイは思った。というか、実際どう見てもシーナにあがっていた軍配をそこまでどきっぱり宣言されてはショックであろう。

 さすがに師匠が可哀想なので、カイは助け船を出してやることにした。

「まあまあまあ、いいじゃないっすか。この前みたいに弟子が一人増えたと思えばどうってことないですよ。えーと、アズリルさん、自分の荷物は?」

「ありませんわ。――お気づかいありがとうございます。でも基本的にチィの姿でいるつもりですので、特に必要なものもありませんわ。」

「チィの姿って、どっちの――?」

カイが戸惑いながら尋ねると、一転二転三転、黒猫チィの姿が目の前に現れた。

「にゃあ。」

そうやってカイの方ににっこり黒猫が微笑みかける。……黒猫に表情筋があるのか手近な書物で確かめたい衝動に駆られる。

「……この家にいる間は人間の姿でいろ。ここで暮らすならそれが条件だ。」

静かに、黒猫を見つめて、レントはきっぱりと宣言した。カイは師の言葉に先ほどの知識欲なぞどこ吹く風、驚きながらも感激して、黒猫と師匠を交互に見比べていた。

 黒猫が一転二転三転、再び少女の姿に戻る。少女の顔はレントの言葉が気に入らなかったのか、むっとしている。

「どのような姿でいようと私の勝手ですわ。」

しかしかつてはいつもアズリルに言い負かされていたというレントは、少しも動じなかった。

「俺はお前に護ってもらいたいなんざ思ってないんだ。いいか、この家の主人は俺だ。この家のルールは俺が決める。」

そしてどきっぱりと宣言した。

「黒猫になったら追い出すからな。」

 はたとカイが気づくと、何故だか二人は睨みあうようにしていて、最悪の喧嘩現場のごとくになっている。……あれ、何か間違ってるような……。

「……はん、家で権力ふりかざすなんてどこの亭主関白ですの、あなた?」

「居候は家主の言うことを聞くもんだろ?大体他の誰に見られるわけでもないのに、その姿でいることに何か問題でもあるのか?」

しばし重い沈黙が降りる。……師匠の言葉は図星だったらしく、アズリルはものっすごく嫌そうな顔をしていたのだが、どうしてもその理由は言いたくないらしかった。とうとう一つ溜息を吐くと、渋々言った。

「……はあ、そう、ですわね。シーナ様のご命令を支障なく全うするためですもの。仕方がありませんわ。」

シーナ様、の一言で一瞬レントの眉が痙攣したが、結局師匠の勝利に終わったことに満足したらしい。カイは心の中で師の一歩前進に全力で拍手してやっていた。

 和解の空気になった途端、アズリルが大きく手を振り、一斉に解いていなかった荷の口が開く。

「全く、荷物運び込んでから何日経ってますの?これでは執政官の仕事が滞ってシーナ様がお困り致しますわ!山小屋にあったのと同じような感じでいいんですの?」

「え、あ、ああ、むしろそうだとありがたいが……。」

レントが言い終わるよりも早く、荷は空っぽになり、あっという間に中の荷物は全て収納しようと思っていた場所に収まってしまった。

「……さっすが、世界一の魔法使いですね。」

カイが感心してそう言うと、アズリルは軽く顔をしかめて咎めた。

「その呼び方、やめてくださいます?どこかのへたれと被りますから。」

「誰がへたれだ!」

「べっつに誰もあなたのことだなんて申しておりませんわ。それよりなんですの、その衣服?仮にもシーナ様の執政官ともあろう者が普段着だとしてもそんなみすぼらしい格好で許されると思ってますの?」

アズリルがそう言った傍から、レントの纏っていたローブの生地が簡素な木綿から上質の絹になり、光沢を放った。

「あ、こら、勝手に人の服変えんな!さっきの言葉そのまま返すぞ!どんな格好でいようと俺の勝手だ!」

「冗談じゃありませんわ!シーナ様に仕えるからにはそれなりの格というものが必要に決まってます!大体あなた今まで山暮らししてたからって多めに見てもらいすぎですわ!幾ら質素好きでもシーナ様のお顔立てるくらいの格好なさい!」

「はん、あいつの強みである民衆の人気は俺の質素さも手伝ってるんだ!だーかーら、俺が好きな格好でいるのをあいつも許可せざるを得ないんだよ!」

「まあ、シーナ様の弱みにつけこんで何ですの!?大体昔っからあなたってば……。」

 カイは言い争う二人を後にして、静かに戸を閉めた。わざわざ静かに閉めずとも、二人の大音声ならば全く気付かなかったに違いないが。

 これから毎日これが続くのかと思うと、少々うんざりしてしまう。……いっそ商売区画に暮らしていることだし、薬でも売っぱらって家出でもしようか。いやしかし、まだまだ師匠から学びたいこともたくさんあるし……。

 二人の喧嘩は、そんな弟子の悩みを預かり知らず、大声で続くばかりであった。

道化(以下道)「はぁい、はじめましての人もそうじゃない人も、みんなの人気者、道化だよ☆」

少年R(以下R)「君さあ……なに勝手に僕のいない世界に出張してるのさ。」

道「あれれ?我らがダメ作者はどこ行ったの?」

R「せっかくだから僕の出番をつくってやろうって。言伝も預かってるよ。」

道「ほぅ、へぇ、ふぅん……。つまり面倒になったらかサボタージュ?」

R「あはは、否定できないかもねぇ。」

道「ってかさあ、我が主よ、君が相手だと、突っ込み役いなくて僕十分にボケられないんだけど。せめてアーミーちゃんつれてきてくれればよかったのに。」

R「はいはい、君が勝手に出張しなけりゃいつでも会えるだろ。それより言伝を伝えたいんだけど?」

道「はーいへーいほーい、しょうがないなぁ。」

R「あんぐより、『遅くなってごめんなさい。可能な限り予約投稿しました。1~3日程度の間隔で更新される予定です。みなさまに少しでも楽しんでいただければ幸いです。』だって。」

道「いつも通りのつまんない挨拶だねぇ。なんかさあ、たまには他にもっとないわけ?ってか1~3日ってどういうことよ?」

R「第一部の反省生かしてだってさ。そもそもそれ言ったら君の自己紹介もマンネリ化してるだろ?ま、それはともかくとして、僕らはこの物語に一切関係ないけど、たまにこんな感じで茶々入れにくるから。よろしく~。」

道「というか僕らの物語こそ、いつお披露目になるのやら……。というかデータとんだせいで描くの諦めてるよねぇ。ひどい話だ。ま、また君たちに会える日を楽しみにしてるよ☆」

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