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第7話 恋する乙女なら

お読み頂きましてありがとうございます。

 帰り道は、マクシミリアン様の馬車に同乗した。


 僕は、処罰を受けることになるということばかり頭の中で思い描いて上の空だったらしい。


 マクシミリアン様が何度か隣に座った僕を揺さぶったのに気付き、ようやくそちらのほうを向いた。


「怖い思いをさせたようだ。すまぬ。」


 僕が上の空だったことをどういうふうに解釈したのだろう。僕をマクシミリアン様のほうに抱き寄せるとそうマクシミリアン様の方から謝ってきた。


 マクシミリアン様からしてみれば僕は、か弱い少女で震えているのだと思ったのだろうが僕は、どちらかといえば今の体勢の方が嫌だったのだが・・・。とりあえず、おくびにも出さずに身体を預ける。


 僕も男だから、こういったシーンで身体を預けてほしいことは、わかるだからそうしただけだ。できるだけ、恥ずかしいといった感情を殺して・・・。だが、それがいけなかったようだ。


「マクシミリアン様ぁ。やめてくださいぃ。」


 マクシミリアン様がおもむろに顔を寄せてきたのだ。キスをされると思い、咄嗟にマクシミリアン様の口の前に手を出すと睨みつけた。あぶない、もう少しでファーストキッスをマクシミリアン様に奪われるところだった。


 マクシミリアン様は、拒否されると思わなかったのだろう。目を見開いている。


 僕が女性だったら、危機を救ってくれたマクシミリアン様に対して、感動して身体を許してしまうシーンなのだろう。だが僕は、男だ。とりあえず全力で拒否をすることにする。


「マクシミリアン様、お約束は、お約束ですぅ。ダメ。」


「そうだったな。くそ、あんな勅令を出すんじゃなかった。だが、知っておいてほしい。君が好きだってことを。そして成人したら、必ず、迎えに行くからな。」


 あの勅令が無ければ、僕が娼館のステージに出ることもなかったわけなのだが・・・。


・・・・・・・


「大丈夫よ。」


 あの後、そのまま娼館まで送って頂いた。今日あのレストランであったことを母に伝えたが取り合ってくれない。


「そんなに心配なら、国王様が娼館にいらっしゃるときは、お相手してあげてくれる?」


「でも、それだと2年後に破綻してしまうよ。成人したら、娼婦もしなきゃいけないんだよね?」


「ふふふ。そんなことは、ないわ。あくまで楽士は、娼婦のまねごとだけで強要は、できないのよ。トップ娼婦の何倍もの手取りなの。だからほとんどの楽士にとっては、割のいい仕事だから誰も拒否しないだけなのよ。」


「でも、相手は、あの国王様だよ。」


「大丈夫よ。その国王様が出した勅令できまったことだもの。」


「そうなの?」


「そうよ。安心していいわよ。」


 本当に安心してもいいのだろうか?少なくとも、僕を酔わせてなにかをしようとしたことは、たしかだ。しかも、求婚らしきことまでしてきたのだ。さすがに母にそのことまでは、言えなかった。


・・・・・・・


 翌日、学園に行った。1限目は、ちょうど声楽の授業だ。声楽は個人授業だ。先生と1対1で行う。僕の先生は、ロビンという女性の先生で、僕を王立学園に入れてくれた恩人でもあるのだ。


「申し訳ありませんでした。」


 昨日あったことは先生に伝わっているだろう。もしかすると嫌味の1つでも言われているかもしれない。


「ああ昨日のことね。私が言い忘れていたことが悪いのだし、ユーティー君が娼館の子息であることを考えれば、私が教えたことが娼館の見習い楽士に伝わっていくことは、折込済みだったはずで一族も了解していたんだけどね。あんなに早く現れるとは、思って居なかったから・・・彼は、焦っただけよ。」


「国王様の命令とはいえ、貴族の方に、あんなことをさせてしまって、大変申し訳ありません。どんな罰でも受けます。」


「国王様は、ああ仰ったけど、初めからユーティー君に罰を与えるつもりは、無いわ。そんなことより、顔をあげてちょうだい。授業を始めましょ。」


 ロビン先生は、最敬礼をしている僕に近づいてくると、僕の頭を持ち上げるようにした。ロビン先生の顔が間近に見える。ん。


「先生、どうされたのですか?その頬の傷、なにかうっすらと跡が残っているようですが・・・。」


 先生の綺麗な顔にスジのように跡が残っているのだ。あの傷跡は・・・。昨日のことがフラッシュバックのように浮かび上がる。同じだ。だが、そんなことがあるのだろうか?


「昨日怪我しちゃってね。教会に行って直してもらったのだけど、少し跡が残っちゃった。」


 教会には、治癒魔法が使える魔術師が居るのだが、その技術力は、まちまちで王宮の魔術師達のようにキズを綺麗に直すことは、できないらしい。


「言ってくだされば私が治しますのに。」


 僕は、アルメリア神のお告げで魔術師と職業を受けており、光魔法を最も得意としている。これぐらいの傷跡なら、簡単に治せてしまう。魔術師として頑張れば、部位欠損さえも治せるらしいのだ。しかし、普通の生活でそこまでの能力は、必要ない。


 治癒魔法は、主に娼館で怪我人が発生した際に使用するくらいだ。


「ああ、そうだったわね。では、お願いしようかしら。」


 僕は近づき、彼女の頬に手を置き治癒魔法を唱えた。


「先生?そういえば、王立学園の講師って、副業禁止じゃありませんでした?」


「あれは、家業の手伝いという名目なのよ。」


 治癒魔法を使う瞬間は、気を緩めていなくてはいけない。その瞬間を狙い質問してみたところ。狙い通りの回答が返ってきたのだ。とにかく、今日の先生との会話は、不自然だった。


「やはり、そうだったのですね。どちらが、本当の先生の姿なんですか?」


「・・・・・・・失敗したわ。昨日から失敗ばかりだわ。しかしよくわかったわね。」


「マムには、ことのあらましとその傷のことを聞いていましたから。それに先生は、気付いてらっしゃらないようでしたが、ご自分の体験のような口調でしたよ。」


「そうか・・・。まあ、どちらも本当の自分なのよ。母は、伯爵家の側室にも入れてもらえない庶民の出なの。私は私で声楽で身を立てたんだけど、父にとっては、可愛い娘に何かを残したいと思って、あのようなレストランをいくつかくれたのよ。ただ、女性の姿だとオーナーとして、いろいろ不味いことがあるのよね。だから、あのオーナーの姿のときは、男装しているのよ。」


「失礼なことをお聞きして申し訳ありませんでした。」


「いいのよ。きっと、誰かに知っていて欲しかったのかもしれないわ。偶には、オーナーの愚痴も言うけどいいわよね。」


「ええ、僕でよろしければ・・・。」


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