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第5話 エロ国王の画策

いつもお読み頂きましてありがとうございます。


 翌日は、休日なので学園は、お休みだ。疲れていたから、ゆっくりと休もうと思っていたのに、朝早くから叩き起こされた。まあ、半分寝ているような状態では、どこでボロが出てしまうかわかったものじゃない・・・。


 いきなり、朝からお風呂に入り、泊まり客の居なかった娼婦のお姉さまと母がいっしょになって、下着や服をつけていく。下着も母の子供のころのものだという。しっかりと洗ってあるのは、わかっているがなんかへんな気持ちだ。


 今日は、メイクやかつらを付けるまえに朝食をたべた。


 あとはメイクの練習を何度かさせられる。向こうで最低限、食事の後で口紅を引き直す必要があるからだ。そして、歌と踊りのおさらいだ。昨日は、娼館に伝わる曲が中心だったが、もっとポピュラーな曲がリクエストされてもいいように練習しておく。


 学園で何度も何度もやっているので身体に染み付いている。女性パートといっても対して違いは、無い曲ばかりだ。


・・・・・・・


 身体が暖まったところで、国王様からのお迎えの馬車がやってきた。


「マム様ですか?お迎えに参りました。」


 国王様よりやや若くて綺麗な男の人が迎えに来た。国王様も美丈夫といった感じだが、こちらは、美しいと表現したほうがいいだろう。


 冷たい水を一杯飲み、身体の火照りを冷ました上で、馬車に乗り込んだ。


 昼食には、やや早い時間だ。行き先を聞くと、ここから少し離れた港町に行くという。およそ、鐘半分の時間で到着するらしい。


 こんな豪華な馬車に乗るのは、初めてだ。しかも、乗り心地も、乗り合い馬車に比べると天と地ほどに違う。これならば、鐘2つ分乗り続けてもお尻は、痛くならなさそうだ。


 馬車の中は、僕1人だ。さきほどの男性は、御者の横に座っている。


 しかも、馬車には、王家の紋章が刻まれており、沿道の住民達が手を振ってる姿も見える。きっと、中に王家の人間が乗っていると思われているんだろう。まさか、娼館の息子が乗っているとは、思ってはいまい。


 王族は、言いすぎでも、貴族くらいの身分になれた気分だ。それだけでもウキウキとしている。なにやら昨日とは、全く違う気分だ。昨日は、ややバレないだろうかと受身気味だったのだが、まるで本当のお嬢様になったような感じだ。


 きっと、外からみたら堂々としているんじゃないかな。まあ、食事だけだが、慎重に行動すべきことは明白だから、気を引き締めて、やや、微笑みを浮かべる感じでと持参してきた小さな鏡で確認する。よし、こんなものだろう。


 こうして、お嬢様気分で過ごすうちに目的地に到着したようだ。


 馬車は、ゆっくりと減速し、どこかに横付けするように回転を始める。


「既に国王様は、お待ちです。」


 到着後暫くして、馬車の扉が開かれるとさきほどの綺麗な男性が、そう言いながら手を差し出した。きっと、入り口に詰めている護衛の騎士に聞いてきたのだろう。


「ありがとうございますぅ。」


 ここからが本番だ。身近に娼婦のお姉さま達が居たから、およそどういうふうに歩けば、綺麗に見えるかは、頭の中に入っている。それを1つずつ実践していくだけだ。


 国王様のお相手なのだからと、頭の中のモデルは娼館のトップのお姉さまだ。


 貴族ご用達なのだろう。その建物は白い大理石で覆われており、港町には、やや似つかわしくないが、周囲に豪奢な別荘ばかりが立ち並んでいるので、逆に港町に見えないのだ。


 内部は、ホールになっており、もしかすると歌や踊りを請われるかもしれない。おさらいしてきたのが無駄には、ならなさそうだ。


・・・・・・・


「本日は、お呼び頂き光栄に存じますぅ。」


 うーん、国王様相手にこの喋り方は、失礼かなと思うが今更直せない。これで行くしかない。


「ようこそ、マム。ここは、ロブスター料理が名物なのですよ。お嫌いでなかったらいいのですが・・・。」


「はい!大好きです。ご馳走になりますぅ。国王様。」


「できれば、マクシミリアンと呼んでください。」


 不敬に当たらないのだろうか。傍に控えているあの男性に顔を向けると頷きながらにこやかな笑顔が返ってきたので大丈夫なのだろう。


「はい、マクシミリアン様。」


・・・・・・・


 暫くするとロブスター料理が所狭しと並んでいく。飲み物は、白ワインが供されたが、乾杯だけして、口を付けない。酔っ払ったらどうなるかわからないからだ。未成年だが、既にお酒の味も知っている。娼館では、どれがどういったものかの説明もできる必要があり、知識として少し飲んだことがあるだけだ。


 僕が口を付けないことに気づいたマクシミリアン様がワインをお気に入りだというジュースに替えてくれた。しかし、少し口をつけてみると・・・それは、お酒だった。ジュースにリキュールを混ぜたもので、娼館でもよく娼婦のお姉さまが、嫌な客を酔い潰す手段に使っていたりするのだ。


 飲み口は、ほとんどジュースと変わりなく波々と大きなグラスに注がれており、全部飲んだら確実に酔いつぶれる。


 この人も男の人なんだ。僕を酔い潰してどうしようというのだろう。


「ごめんなさい。このジュースは苦手ですの。代わりに飲んでいただけません?私が口を付けたので申し訳ないですが。」


 マクシミリアン様の傍にジュースのグラスを置く。


「そうですか。残念です。わかりました頂きましょう。」


 そう言って、グラスを持ち上げて口をつける。ん、僕が口を付けたところだ。もしかして、間接キスなのか。しかし、少し飲んだところで、止めてテーブルの上に置きなおす。


 まあそうだろうな。大人の男性のマクシミリアン様といえど、あんなものを一気に飲んだら倒れるだろう。結構、真っ赤になっているようだ。


「あれっ、お好きなジュースじゃ無かったんですか?」


 僕は、遠まわしにさらに薦める。目が泳いでいますよマクシミリアン様。少し逡巡しながら、半分くらいまで飲み干した。まあ、それくらいで許してあげようと微笑みかけた。さらに真っ赤になっていくマクシミリアン様だった。


鐘=朝から夕刻まで1時間毎に鳴る鐘、鐘半分は30分です。

3種類のメロディーが繰り返し鳴るので今のおよその時刻がわかる仕組みです。

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