第57話 王族特有の身体
お読み頂きましてありがとうございます。
本日2話目。
「見ての通りですが・・・?」
割と冷静な母の声が返ってくる。
「これはどう見ても王族特有の・・・・。」
王族?なんだろう。
「マクシミリアン!!」
「リラ。これはどういうことなんだ。弟の子供は死んだのでは無かったのか?それともマムは先祖に王族でも居たというのか?」
「いえ、マムは彼の子供で間違いありません。」
えっ・・・僕が王弟の子供。
じゃあ、僕の母さんはフローラじゃないのか。
僕はそのことで頭がぐるぐるになる。
僕は、そのまま立ち上がると母さんの元に向かおうとする。
そのとき、腰から何か血のこびり付いたものがハラリと落ちた。
パンツだった。
背中を切られた際にパンツまで切られたみたいだ。
ワンピースだったモノは腕にわずかに残っているだけでほとんど裸だったのだ。そして、母さんの手前には・・・・マクシミリアン様が・・・・。
「君はユーティーなのか?マムは、どこなんだ!!」
マクシミリアン様は悲鳴のような声で言う。目の前でマムがユーティーになるところを見ているはずなのに現実逃避なのか。
別にマムが居ると信じて疑っていない。いや疑いたくないのだろう。
「マクシミリアンさまぁ。ごめんなさいぃ。」
僕はそのままの姿でマムの声で謝った。
・・・・・・・
その後、茫然自失のマクシミリアン様を放置して母から聞き出したところ、僕は母の従妹で王弟の毒殺されかけた正室ミーナの子供であり、マクシミリアン様には、わずか半年で死んだと伝えていたそうだ。
当時、後宮では、侯爵家取り潰しの原因となったミーナやその子供である僕に度々、暗殺者の手が差し向けられていたそうである。
その暗殺者から守るためにリラ様が後宮から連れ出し、替わりに市中で死んだ子供を偽って、マクシミリアン様に死んだと報告したそうだ。
ただ、それでも僕がミーナの子供では無いかと疑いを持つ人間が度々現れるため、その度にリラ様が娼館に通う振りをして、そう言った人間を撲滅してくれていたのだという。
「だから、近衛師団に謝ればなんとかなるって言ったじゃないの。」
どうやら、わざわざ僕がマムに変身しなくても、マーガレットが居かったことはリラ様に一言謝るだけで終ったという。僕が逆に問題をややこしくしたのか。
「じゃあ、何で許可したのさ。」
「それは・・・あんなに女装を嫌がっていた。お前がノリノリだったじゃないか。お前を見ているのが面白かったのよ。」
面白いだけかよ。
「まあそれに、そろそろマクシミリアン様に本当のことを伝えようと思っていたところだったから・・・。ちょうどいい機会だと思ったのよ。」
・・・・・・・
「よし!決めたぞ!」
突然、後ろで声が聞こえる。
実はその前からなにやらブツブツと呟いていたが怖かったのでそのまま放置しておいたのだ。
もちろん、もうこのときには子爵夫人も駆けつけており、いっしょに持ってきてくれたユーティーの服を着ている。
「なにをです?」
「もちろん、俺を騙してくれた君に与える罰を決めたんだ。」
「そうですか。命ですか?私のモノでしたら何でもお渡しします。できることなら、他の方々には恩赦をお願いいたします。」
もうそのときには、覚悟を決めていた。母やリラ様は正体を晒せば大丈夫と思っていたがそんな甘いモノではないだろう。
「もちろん、フローラもリラもロビンも罪に問おうとは思って居らぬので安心いたせ。ただ、君には死ぬよりも、もっと過酷な罰を与えることにする。それはだ。」
死ぬよりも辛い罰・・・?
「そ・・それは・・・。」
「それは10年後に君に国王を譲ろうと思う。10年間で全てを覚えてもらおう。覚悟は良いな。」
えっ・・・、僕に国王・・・そんな・・・バカな。
「おまちください。それは・・・。」
「まさか出来ぬと申すか?」
「いえ、あの、その・・・。」
「さらに後宮では、10年間マムを演じ続けてもらわねばならない。安いモノだろ。俺の純情を返せとは言わない。ただ国庫を使って建てたのだ。いまさら出来ないとは言わせぬ。わかったな。」
10年間マムを演じ続けつつ、王族としての立ち振る舞いから国王になるための勉強もするのか?
無茶苦茶だな。
・・・・・・・
その後、僕の生活は一変した。
今回の件に関わった貴族たちが処罰され、それに関わった人々が王都から一掃された。
どうやら、詳細に調査したらしく子爵夫人の子供が関わっていたことまで突き止めていたのだが、救出に手を貸したことで軽い処罰で終ったようだ。
その後、しばらくしてマクシミリアン様から国民に向かって僕のことが発表され王宮に迎え入れられた。
それに前後してマムとして、後宮に入っている。
後宮に建てられたマムの部屋は、地下で壁を隔てた王族の住居と繋がっており簡単に行き来できるという。
後宮に入るに当たって問題となったのは、秘密を守れる人間が必要なことだったが、リラ様昵懇の侍女達と娼館の古株の娼婦たちが侍女となり入ることで事なきを得た。
「ねえ、こんなときに僕らの結婚式をしなくても良かったと思わない?」
僕が15歳になった当日、僕はロビン先生・・・ロビン・ウォーレス伯爵令嬢と結婚した。
ただ、明日にマクシミリアン国王とアマーリエ王女の結婚式が控えており無茶苦茶忙しいのだ。
「私がお願いしたの。」
「えっ。なんで?」
「内緒よ。」
また、内緒・・・いったいどれだけ秘密があるんでしょうね。




