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第56話 潜入

お読み頂きましてありがとうございます。


本日3話更新します。

 リラ様は、子爵夫人宅で近衛師団に連絡が行くようにしたようだ。


 あとは、全力でロビン先生を助けに行くだけだ。


 門の前で暫く伺ったが特にだれも出てこなかったので、行くことにした。


 リラ様は、マムに世話を焼く付き添いの女性というところだ。視線さえ合わさなければリラ様とわからないはずだ。それほど地味なのだ。


 扉をノックして要件を告げる。


 ほどなくして扉が開いた。


「1人で来いと言ったはずだが・・・。」


「コレは、私の世話をするための女性です。それとも、この私に誰も友を付けずに出歩けと。」


 そう言って片眉を上げて威圧してやる。せいぜい、悪役っぽくふるまってやろう。


 男は、ジッとリラ様の方を見ていたが、フッと視線を外す。


「まあ、いいだろう。」


 態度には出さず。ホッとする。第一段階は成功だ。


 大きな部屋に通される。子爵夫人の子供に聞いたとおり、9人ほどの人間が現れる。残り2人は、ロビン先生の部屋で待機しているという。


「ロブは何処なの?」


「ああ、向こうの部屋に居る。」


「お前、確認してきて。」


 リラ様に向かって言う。これも打ち合わせどおりだ。リラ様にロビン先生を確保してもらえば、あとは敵を叩くだけなのだ。


「おい。付いて来い。」


「はい!」


 へえこんな可愛らしい声も出るんだ。ロビン先生は、この部屋から1分ほど歩いた場所に軟禁されているらしい。向こうで戦闘が開始するまでは何にもアクションを起さずに過ごす。そこから、スタートだ。


「黙ってないでなんとか言えよ。まさか、生きて帰れるとでも思っているのか?」


 まだまだ。無言タイムだ。


 男が僕の肩を掴む。少し痛い。


「ほら、何とか言えってば!」


 パーン。


 男が僕の頬を叩いた。それでも女性相手のつもりはあるのだろう平手打ちだ。


 僕が打たれた頬を庇い睨み返す。


 その時だった。奥の部屋からなにやら騒がしい音が聞こえてくる。


「なにを女相手にやってるんだ。おい、ちょっと見てこい。」


 目の前の男が後ろを向いて指示を出す。


 僕は事前に身体に掛けておいた肉体強化を使い目の前の男から後方へ飛び退き、と同時に唱える。


『ウィンドウォール』


 目の前に風の壁を構築する。とにかくリラ様がロビン先生を連れて来るまで持ちこたえれば勝ちだ。


「それで勝ったつもりか?俺たちが何も調べずにここに居るとでも思ったか?」


 男は平然と風の壁を潜り抜けてきて、僕の手首を捻り上げる。


「ほか、これはなんだと思う。風耐性の指輪さ。手に入れるのに少々てこずったが・・・。」


 男は僕の目の前にこれ見よがしに見せ付けてくる。火耐性の指輪や水耐性の指輪は、かなりの数出回っているが風耐性となるとオークションでも出回らず、出品されても伯爵家の年間収入に匹敵するほどの値段が付くと言われている。


 男は、その手を僕の胸元の服を掴むと一気に引き裂いた。


「王は何でこんなのが・・・。まあいい。とにかく処女さえ頂けば諦めるだろう。」


 男は露わになった僕の上半身を見下すとそう言ってのけた。


 冗談じゃない。


 男だってバレるじゃないか。男だと知れば止めるだろうが、これまで守ってきたものが全て崩れてしまう。


 僕は思いっきり男の股間を蹴り上げる。


 うにゃ。やな感触が足先に伝わったが忘れることにする。


 男は涙目で股間を押さえている。わ、痛そう。


 僕は構わずスライデングタックルをかます。男は両手が塞がっているためひっくり返ったが辛うじて頭をブツけなかったようだ。しかも、片手は僕の足を掴んでいやがる。


「へっ、捕まえた。」


 僕は、もう片方の足で男の頭を蹴り上げようとするが、もう片方の手で掴まれてしまった。


 ヤバイ。片足で僕の足を押さえ込み、手は太もも辺りに伸びてくる。上半身は丸見えでスカートが捲りあがり酷い状態だ。しかも風の壁の効力が切れたのか。他の男たちもやって来て押さえ込むのを手伝っている。


「はっとんだじゃじゃ馬だ。しかし、もう観念しな。」


 そのときだった。


 バーーーン。


 入り口の扉が吹っ飛ぶ勢いで開いた。新手の敵か?


「マム!!貴様ら!!」


 マクシミリアン様だった。


 マクシミリアン様が次々と敵を切り伏せていく。


「王。お待ちください。この女がどうなってもよろしいんですか?」


 初めに僕を押さえ込んだ男が僕の首元にナイフを突きつけている。


「マムを放せ。放せば命だけは助けてやろう!」


「王。貴方は騙されている。あの娼館のオーナーの子供に1歳年下の従妹など居りませぬ。」


 そうか。詳しく調べられたら解かるよな。確かに僕には年下の従妹は居ないのだ。咄嗟に付いた嘘とはいえもうちょっと考えて話すべきたった。


「マムが俺を・・・か。そんなことは、どうでもいい。マムがどこの誰であろうと俺の愛は揺るぎはしない。」


 うわー。くさいよ。くさい。


 よくもまあ、こんなくさいセリフを吐けるもんだよなあ。


 僕は呆気に取られる男の隙を見逃さず、ナイフと首の間に手を割り込ませる。手から血が流れ落ちるのを構わず、ナイフを握りしめ、叫ぶ。


「マクシミリアン様!!!」


 咄嗟にそのままでは王に殺されると思ったのだろう。男は僕を放り出すと剣を構える。


 しかし、隙だらけだったのだろう。あっさりとマクシミリアン様が切り伏せてしまった。



 バーン!


 後方の扉が開き、ロビン先生が飛び出してくる。


「貴様が首謀者か?覚悟はいいか?」


 マクシミリアン様は剣を振り上げている。


「違う!!ロビン!!!」


 間に合え!!!


 肉体強化魔法を足に最大で使い、ロビン先生とマクシミリアン様の間に割り込みロビン先生を庇う。


 つうううううううううぅぅぅ・・・・。


 剣が僕の背中を切り裂いていく感触、と同時に激痛に目が眩む。


「「「「マム!!」」」」


 マクシミリアン様とロビン先生とリラ様の声が重なる。


 もうひとりは誰だ。


 これは母さんの声だ。


「マム大丈夫?」


「・・・・・・・マ・・・ム・・・マム!!!」


 目の前のロビン先生は大量の血を見たせいか。気を失った。


 でも激痛は一瞬だった。マクシミリアン様が剣筋を逸らしてくれたのか。内臓にまでは届いていなかったらしい。僕は見えないがおそらく急速に傷が治っていく様子が見て取れるはずだ。


「こ、これは、な・なぜマムが・・・そ・・そんなバカな。フローラ!!これは、どういうことなんだ。」


 なぜか、マクシミリアン様が酷くうろたえている。

さあなぜ、マクシミリアン様はうろたえているのか?


次話で解き明かされます。18時更新です。

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