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第52話 訓練風景

お読み頂きましてありがとうございます。


今週は2話更新します。

「はっ!」


 僕は、剣を振るう。剣は、物凄く重いが軽がると振れる。


「そうそう、いい感じだ。」


 リラ様が褒めてくれる。


 いま着ている鎧は、ミニスカート状になっており生足を晒しているので心元ない。時折、リラ様や周囲のチラ見が気になるがそうも言っていられない。


 今、僕は、王宮の近衛師団の訓練所でリラ様に風魔法を教えて貰っている。


 風魔法でもリラ様が得意とするのは、身体強化代りに腕から剣にかけて風を纏わせてを振る速度を上げたり、足に風を纏わせて走る速度を上げることだ。


 極めつけは、『フライ』で飛んで上空からの攻撃なのだが、これらの身体強化の基本を覚えなくては無理だという。


 これで10回目だというのに素手では重くて振れない剣がようやく振れるようになったり、若干走る速度が上がっているだけだ。なかなか上達しない。


 見た目だけは、可愛い女の子が一生懸命に練習している姿は、珍しいのか日に日に観客が増えていくのは、仕方が無いと思うのだが・・・。


「なんでこんなところに居るんですかぁ?」


 僕の生足にベタベタとした視線を送ってくる主が近くに居るのだ。


 もちろん、マクシミリアン様だ。


 リラ様が報告しているだろうから、ここで僕が訓練をしていることを知っていることは、解かっている。


「ほら、視察だ。視察。」


「リラ様。陛下は、よく視察にいらっしゃるのですかぁ?」


「そうだな。1年に1回くらいはな。今年は、これでもう10回目だな。」


 そう毎回いらっしゃるのだ。


「ぐ、偶然だよ。偶々、視察の時にマムが居ただけで・・・。」


「偶々偶然、今年に来た視察の全てだなんて、マクシミリアン様、凄い言い訳だな。」


「別に来て貰っても構わないですけど・・・。」


 その視線をヤメテ欲しい。本当に。僕が動くたびに横から生唾を飲み込む音が聞こえてくるのだ。こっちは、訓練しているのに気が散って敵わない。


「来てもよいのか?」


 ダメと言っても、ここは、マクシミリアン様の宮殿なのだ。誰に遠慮をする必要は無い。


「はいぃ。でも、あそこの本来視察する場所でご覧頂いては、どうでしょうぅ?」


 やや高台に訓練を視察するための場所があるのだ。数代前の王が訓練の様子を見るのが好きで作らせたらしい。立派な椅子も据え付けられている。


「あそこか?」


 マクシミリアン様がその方向を向いたあと振り向く。視察用の場所は訓練所全てを見渡せるようになっており、僕が訓練している場所からは、かなり離れている。


 あ、少し涙目になっている。よく泣くな。この王。


「どうしても、あそこでなくてはダメか?」


 ソウシテホシイです。なんて言えない。


「それにマムが怪我したときに治療士が必要だろ。」


 訓練所には、専属の治癒魔法を使える人間が常に待機しているらしいので必要ないのだが・・・。それに僕は、自己治癒能力が人より高いのだ。


 男の子だから子供の頃は、屋根によじ登って落ちて怪我したものだし。


 王立学園の一般課程で習う剣術や体術で怪我を負うこともある。だが女装が可能であることからも解かる通り、それらの怪我は、綺麗さっぱり消えてしまうのだ。


「それならば、マクシミリアン様。マムの相手役をしてあげてください。」


 僕が答えに窮したことが解かったのか。マクシミリアン様への助け船なのかリラ様がそんなことを言ってくる。


「そうだな。おれが相手をしよう。」


「ダメですぅ。万が一、怪我をされては困りますぅ。」


 それなりに訓練しているのだろうが、マクシミリアン様の技量なんてわからない。


「大丈夫だ。俺は、怪我には強いのだ。ちょっとした怪我なら一晩あれば治ってしまうぞ。」


 へえ、僕の体質と同じようなモノなのかな。


「それは、本当だよ。マムちゃん。遠慮なく打ち込んでやれ!」


「はい!!」


 僕は、マクシミリアン様に向かって剣を構えた。マクシミリアン様も同じような訓練用の剣を持つ。


「はっ!・・・やっ!・・・たっ!」


 意外と避けるのが上手いな。まあ、僕が下手というのもあるんだろうけどね。


 徐々にスピードを上げていく。


「はっ!・・やっ!・・たっ!」


 それでも、余裕綽綽の様子で僕を顔を見てにっこり笑いかけてくる。


 くっそう。


「はっ!・やっ!・たっ!」


 おしい。だが、それでも、剣を少し浮かせるだけでこちらの剣が逸れてしまった。やっぱり、舐めるような視線をむけてくる。


 すこし、ゾゾっときたので、今までで一番の速度で振りぬいた。


「はっ!やっ!たっ!」


 やばい、この速度だと避けきれないのか。それとも、やましいことでも考えていて動きが遅くなったのか・・・。きっと、後者だな。


 流石に近くに居た兵士が剣で僕の剣を受け止めるが、僅かながら遅く、剣先がわずかながら腕を傷つけてしまった。


「ほらね。大丈夫だろ。」


 そう言ってマクシミリアン様が見せた腕に切り傷や打撲の跡は、見られなかった。結構手応えがあったのに何も無いなんて・・・。きっと国王だから、防御用の魔法具でも付けているのだろう。


 そうか。だからなんだな。


 先の戦の際に砦に引きこもるタイミングがあったにも関わらず、戦いのど真ん中で参戦していたのは・・・。防御用の魔法具があるならば、多少の傷は厭わないはずだ。


 あの時は、俺が兵士たちを守らなくてはいけないなどと自慢げに言っていたのには、こんな訳があったんだ。


次は18時です。


マクシミリアン様は何を思ってマムを見つめているのか・・・。


きっと、マムを迎える準備が進むことで妄想が膨らんでいるのでしょうね。

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