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第50話 修羅場

お読み頂きましてありがとうございます。


今週は2話です。

 パーン。


「おだまり、リラ。やめて聞きたくないわ。」


 僕が王立学園からの帰り道でリラ様を見かけたので声をかけようか。迷っているうちに突然リラ様と喋っていた御婦人がリラ様の頬を派手な音がするほど叩き、吐き捨てるように言うと去っていったのだ。


 どうやら、偶々リラ様の修羅場にブツかってしまったようなのだ。


「大丈夫ですか?」


 王宮からの道が同じなせいか最近、護衛として我が家にくるリラ様と出会うので挨拶をするようになったのだ。


「ありゃユーティー。見られていたのか。いててて・・。」


 リラ様の頬は見る見るうちに腫れていく。


「失礼しますよ。」


 僕は、そう言ってリラ様の頬に手を添えて治癒魔法を唱える。


「珍しいですね。リラ様が修羅場なんて。いつも、うまくやってらっしゃるのに。」


 娼館では、多くのお姉さまたちを侍らせているのに修羅場なんて全く見たことがなかったのだ。


「出会いがあれば、別れもある。別れもあれば、修羅場もあるんだよ。まあ、子供には、わからないだろうけどね。」


「すぐ、そうやって子供扱いするんだから。」


「子供でしょう。恵まれた環境にいるくせに、女も知らないなんて。」


「だってそういうのは、好きな人としかしたくないから。別れ話ですか?」


「ん。まあね。あ、フローラには、言わないでね。」


「そんなこと、ペラペラしゃべったりしません。もっと信用してください。」


「だってね。いつのまにか、マムに伝わっていることが良くあるから・・・。マムと仲いいよね。」


 そうか知らないうちにユーティーしか知らないことをマムが喋ってしまっていたらしい。気をつけないと・・・。


「皆、そういいますけど、生意気なガキですよ。あいつに稽古つけるのは、大変なんですから・・・。まあ、稽古の途中で無駄話させられていることも四六時中だから、よく喋っているとは、思いますけどね。そんな心配するようなことなんて、これっぽっちもないんですからね。」


「ユーティー、ありがとうね。じゃまた。」


 リラ様は、そう言って王宮の方へ向かっていった。


・・・・・・・


 ガラ・・ガラ・ガラ・ガラガラガラ。


 暫く歩いているとすぐ隣に馬車が止まり、人が出てきた。


「そのほう、リラの知り合いか。」


 さっき、リラ様の頬を引っ叩いた御婦人だ。口元を扇で隠して喋っているところを見ると、高貴なお方のようである。僕は、その場に膝付き、御婦人の顔を見ないようにして答える。


「はっ。私、そこの娼館の者です。」


「リラは、また、そのようなところへ通っておるのか?」


 また・・・というと、昔のことも知っているようだ。ということは、古い知り合いかなにかなのだろうか。では、なおさら誤解を正しておく必要がありそうだ。


「いえリラ様は、護衛任務のため、通ってらっしゃるそうです。」


「リラを動かせるとなると陛下だな。今、陛下がご執心な女性が娼館にいらっしゃるという、噂は本当だったのか。汚らわしい。そこな端女は、どのようなおなごなんじゃ。」


 端女とまで言われるとは、思わなかった。でもきっと世間では、そう思われているんだろうな。


「マムは、まだ13歳の未通女でございまして、決して娼婦では、ございません。当館自慢の楽士でございますれば・・・。」


「それでも、平民なのじゃろう。あの弟にして、あの兄ありか。全く困ったものじゃ。」


 一応同意するが、自国の王をそこまで罵倒するとは、この御婦人は、何者なのだろう。


「褒美を取らそう。面をあげぇ名はなんと申す。」


 顔を上げて、名前を告げる。


「ユーティーと申します。」


「ほう。綺麗な顔立ちじゃ。だが、嫌な女を思い出してしもうたわ。まあよい。これは、些少だがとっておけ。」


 そう言って、銀貨を何枚か握らせてくる。いろいろ言われて腹が立ったし、マムの日当の半分以下だったがここで反発しても仕方が無いので、そのまま受け取った。


「ほうほう。指も綺麗じゃな。今度、屋敷に遊びにこないか?」


 散々罵倒しておいて、コナを掛けるか。だが、困ったぞ。穏便にすませてしまおうと思ったのにどうしたらいいのだろうか。


「いえ、私など勿体無いお言葉です!」


 僕は、そう言って逃げることにした。そのまま、走って逃げたのだ。


・・・・・・・


「師匠が怖がっておりまして、あの方は、どういうお方なのでしょうか?」


 翌日、護衛のために来たリラ様に対してどういう方か聞いてみたのだ。


「そうか。私のせいで絡まれてしまったのだな。それは、すまないことをした。謝らなくては、いかんな。」


 そう言ってリラ様が語ってくれた彼女の半生は、驚愕に値するものだった。


 元々は、彼女も先王の側室の1人だったそうである。


 僕が思った通り、リラ様とは、その頃からのご友人だそうだ。


 先王が亡くなったときにアスター子爵家に嫁がれたそうなんだが、彼女は、マクシミリアン様が例の件でお取り潰しになった侯爵家の後ろ盾で後宮入りした男爵令嬢だったそうだ。


 本来ならば、子爵家に嫁がなくても、単独で女性伯爵に推挙されただろうと言われていた人物だった。しかし、後ろ盾が無くなったせいで子爵家に嫁がなくてはならなくなったそうだ。


 アスター子爵家は、彼女の先王時代のコネで頭角を現し、今では、伯爵家に匹敵する実力をもっているという話だった。

なかなか話が進まなくて申し訳ありません。


次は18時更新です。

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