第49話 打診
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「あ~あ、やっぱりこうなってしまったか。」
マクシミリアン様が隅っこのほうでブツブツ呟いているようだ。
今日は、リラ様もマクシミリアン様に同行してきたのだが、リラ様が現れると知ったとたん、休業日だった娼婦のお姉さまや近隣の娼館のお姉さまたちでリラ様の周囲にいっぱいだったのだ。
「うん。陛下が言っていた以上だわ。これまでに聞いたどんな歌よりも素晴らしかったわ。」
僕が歌と踊りを披露して席に戻ってくるとリラ様が、立ち上がって出迎えてくれた。リラ様は僕を軽く抱きしめると自分の席の隣に無理矢理押し込める。
その途端、周囲のお姉さまたちの視線が一瞬険しいものになる。嫉妬の視線なのだろう。流石にこれだけの数の視線を集めるとめちゃくちゃ怖い。
「その娘が今度のお相手なの?」
隣の娼館のトップのお姉さまだ。たしか、メリーさんと言ったはずだ。リラ様のことをうっとり見ながら喋り出す。
「いやいや、メリー。私は、君に夢中だよ。この娘は護衛対象なのさ。」
リラ様は、そう妖しい、いや。麗しい笑顔で答える。この場所で修羅場にするのは、止めてほしいんだけどな。
「そう。本当に?リラは、ここ何年もいくら誘っても、娼館に遊びに来なかったじゃないか。」
「それは、ここのオーナーに止められていてね。」
どうも、母から聞いた話だとリラ様のあまりの行状に近隣の娼館を含めて出入り禁止にしていたようなのだ。
それを今回、陛下からの依頼もあって、取り下げられたという訳なのだ。
「まあ、この娘は、可愛いから食べちゃいたいけど。」
「やっぱり!」
この娼館のお姉さまたちは、僕のことを男だと知っているからか。厳しい視線を向けてこないけど、他の娼館のお姉さまたちは、リラ様がそう言うといっせいにこちらに視線を向けてきて、周囲は騒がしくなった。
「でも、私にロリータの気は無いから、もう少し育ってからのほうがいいな。」
一応フォローのつもりなのか。マクシミリアン様に遠慮しているのか、そう言って誤魔化す。うーん、遠慮はないな。陛下との力関係からするとそれは、絶対にない。
僕が席を外して戻ってくると、今度は、マクシミリアン様が引っ張ってくる。
「だから、あいつに任せるのは、嫌だったんだ。」
マクシミリアン様の愚痴が始まった。僕に逢いにきたはずなのに、こんな隅に追いやられてしまえば、愚痴の1つも言いたくなるだろう。
しかも、周囲はロリコンの敵である娼婦のお姉さまたちばかりなのだ。国王という権力を行使しようにもマクシミリアン様にとっても、凄い怖かったらしい。マクシミリアン様がなにかを言いかけると幾多の視線が降ってきたらしい。
それでなくても、マクシミリアン様は、普段からリラ様の近しい人間として、嫉妬の視線に晒されているらしい。王宮でもリラ様と喋っているだけで、王宮職員の女性たちから、嫉妬の視線が降って来るらしいのだ。
しかし、それを僕に言っても、逆効果だろう。ぜんぜん男らしくない。まあ、マクシミリアン様は、大事な僕のお客さまだから、膝枕をして慰めてあげたけど、太ももやお尻を触っても許してあげたけど、さらには、胸を・・・。
こいつ調子に乗りすぎ!
僕は立ち上がるとその隣に居た伯爵の傍に行く。
「ほっほほぅ。凄いのリラ様の人気は。」
「そうなんですぅ。街を歩いているだけでも、いったいどれだけの女性たちに声をかけられるか。嫉妬の視線をむけられるか。」
僕は、そう言って溜息をつく。いかんいかん、僕が愚痴を言ってどうする。伯爵も大切なお客さまなのだ。こんなことをしては、いけない。
「すみません!」
思わず僕が口に手をやり謝る。
「いやいや、客としては、マム様のそういう話も聞きたいんじゃよ。気にせんでよいよい。むしろ、頼られている感じがして、嬉しいのじゃよ。」
そういうものなんだ。でも、その匙加減は、むずかしいそうだな。やっぱり、気をつけないと。
・・・・・・・
「しかし、困ったわね。マム。」
お客さまが全て帰ったあと、フローラさんと相談しているところだ。今日正式に僕を妃候補として迎えたいとマクシミリアン様が言ってきたのだ。
マクシミリアン様としては、フォローのつもりだったようだが、おもわず、イライラしてしまった。相変わらず空気が読めないらしい。
とうとう、妃候補までいってしまいました。
ピンチです。いったいどうやって、乗り越えるのか?




