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第4話 国王様のお相手

 辺りが暗くなりステージの周囲だけの照明になったとき、先ほどの外国の騎士は、そそくさと隣に居た娼婦のお姉さまに連れられ個室に入っていった。


 陛下がいらっしゃるということで気を引き締めなおし本日3回目となる、歌と踊りを披露した。3回目にもなると、肩の力がぬけたのか。今日1番の出来となった。


 披露し終わるとしばらく無音だったが、静かに拍手が始まり、ワーンと虫が鳴くように大きな拍手へと変化し静まっていった。


「なるほど。これは、滅多にみれないほどの歌声と踊りだ。マクシミリアンだ。しばらく、席に付いてて貰ってもよいだろうか?」


 どうやら、今日3人目のお相手は、国王陛下のようだ。


「はいぃ。見習い楽士のマムと申しますぅ。お見知りおきくださいませ。」


「そのほう、今いくつだ?」


「13になります。」


「やはり、未成年なのだな。知っているか、未成年に対して出した勅令を。」


「はいぃ。もちろんですぅ。私のようなものに気遣ってくださるような法を整備して頂き、感謝に耐えません。」


「うむ。最近、富に権力を持つものが、未成年に対し酷い行いを致すものでな。」


「そうすると、庶民だけでなく貴族様もですか?」


「ああ、もちろん。王族も対象になっておる。安心してよいぞ。もちろん、私もだ。」


 王が自ら定めた法なのだから、貴族が対象というのは、わかるがまさか王族や国王自身も対象になるとは、思わなかった。まあ、自分で定めた法をすぐさま自身で破るようでは、王としての資質を問われる事態になりかねないだろうから、絶対にしないだろうが・・・。


「マムよ。貴女の師は、どなたかな?」


「はいぃ。当館主人のご子息ユーティー様ですぅ。」


 自分の名前に様をつけるのに、照れないようにするのは難しい。自然に喋れたかな。


「そうか。フローラの子供か。」


「ご主人様とお知り合いですか?」


「ああ、フローラが結婚する前にな。ここに来るのも久しぶりだ。」


 ええと、母が結婚したのが14年前で今28歳だから、母が14歳で陛下が18歳のときか。とすると前国王がご存命のときだから、彼が王太子のときか。母は娼館の1人娘で父が養子に入ったはず。そうすると、娼館の客かな。個人的な知り合いではなさそうだ。


「王太子の時に娼館に出入りされていたのですか?」


 しかも、この王は、まだ王妃を迎えていないのだ。側近達は、やきもきしていることだろう。そんなときに、また娼館に出入りしても大丈夫なのだろうか。この国の王族のパートナーは、処女である必要があるという古臭く前時代的なルールが残っている。


 一般庶民ならまだしも、たとえ王が愛しても相手が娼婦では、傍にも付けないだろう。まあ、2人とも割り切った付き合いならば、問題ないのだが・・・。


「なんだ。興味があるのか?」


「それはもうぅ。お世継ぎは国民の悲願ですから・・・。」


「それか。なら、君が産んでみるか?」


 僕は、男だから無理なんだが、そんな猫が子供を産むかのように簡単に言われるとは、思わなかった。まあ、冗談なんだろうけど。絶対からかっているな子供だと思って、そっちがその気なら・・・。


「ご冗談が過ぎますぅ。王が勅令に反するつもりですか?」


「まあ、そうなるのか。それは、不味いか。」


「早く由緒正しいお嬢様を後宮に入れて、国民を安心させてくださいぃ。」


 この手のことは、きっと、耳がタコになるほど言われているのだろう。顔を顰めている。


 王は、結局どの娼婦にも手を付けずに帰られたことで、その日のパーティーは、終わりとなった。


 店は、警備の人間を残して、パーティールームの火を落とし、僕と母は、母屋に引っ込んだ。泊まりの客もいらっしゃるから、扉は開けたままなのだ。


・・・・・・・


 家に帰り着くと、かつらや衣装を脱ぎ、お風呂場でメイクを落として、さっと身体を洗い、ゆっくりと身体を温めて出てきた。


「僕の評判どうだった。娼館のランクは下がらない?」


 娼館のランクを下げないことが目的だったのだ。無難に過ごせればそれでいいのだ。


「うん、評判は上々よ。国王様の従者の話ぶりだと、ユーティーが定期的に出演すれば、娼館のランクが上がるかもって言われたわ。」


 珍しく母が欲を出してきている。今日1日と思うからなんとか乗り切れたのだ。あの外国の騎士のような輩がまた出てこないともかぎらない。毎回、国王様のような方が介入してくれるとは、かぎらないのだ。


「ダメだよ。ダメだからね。」


「そうね。今日1日だったのよね。もったいないわ。」


 やる前は、あんなに嫌がっていたというのに・・・。


「でもね。明日1日だけでも、お願いできない?実は、貴方がお風呂に入っている間に国王様の側近がいらっしゃって、昼食の招待状を手渡されたのよ。」


「え、国王様が・・・。って、どうするんだよ。真昼間に、間近で顔を見られたら、バレるんじゃない?断ってよ。」


「ダメ、行きなさい。行かなきゃ明日には、娼館自体が潰されるかもしれないわ。」


「やっぱり。そうなるのか。服は、どうするの?あれ1着しかないんだろ。」


「私の若いときのがあるから、それを着ていけばいいわ。メイクも手伝ってあげるわ。かつらもあるし、メイクも多少濃い目にしておくから大丈夫。まあ、楽しんでらっしゃい。決して酷いことをなさる方ではないはずよ。」


「知り合いなんだって?そんな若いときから娼館に出入りしていたんだろ。結構遊び人なのかな。よくそんな人間に預ける気になるな。心配じゃないのかよ。」


「まあまあ、そんな風に考えていたの?優しい方でしたでしょう?」


「うん、表面上はね。でも、男なんて頭の中では、エロの塊だよ。きっと。」


「悪く言わないの。あの方は、誠実な方よ。少し女運が悪いだけで・・・。」


 国王様が結婚しない理由を知っているみたいだな。


いつもお読み頂きましてありがとうございます。


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