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第42話 第二夫人

お読み頂きましてありがとうございます。


「決ったんですか?」


「うむ、あれほど頑なに拒否しておったのにのう。やはり、マム様を後宮に入れる準備なんかのう。」


 アマーリエ様が正式に王妃候補となったことを伯爵が教えてくれた。救国の王女の申し出を無碍にはできなかったらしい。この国の国民としては、王に後継者ができるのだ。こんな嬉しいことはない。


 マムはとりあえず最終的に姿を消せばいいだけだ。マクシミリアン様も始めは嘆くかもしれないが伴侶を持つとなれば、考えも変わってくるに違いない。


「だがのう。マム様を妃候補に押す声もあがってきているのじゃ。」


 流石に正妃ではなく、第二夫人ということらしい。それでも身分違いも甚だしい。過去の歴史を振り返っても平民が正式な国王の夫人になった例はないはずだ。


「え、私がですかぁ?そんなぁ。」


「そうじゃ。主にあの戦に行った兵士たちから伝え聞いたものたちなんだが、『救国の王女』が正妃なら『戦いの女神』も妃だいう声が日に日に大きくなりつつあるのじゃよ。」


 側室なら後宮に囚われることになるのだろうが、第二夫人だと公式行事にも出席することになるらしい。もう、話が大きくなりすぎててどうしたらいいのだか解からない。


「そういえば、ユーティー様から聞いてますかのう?」


「お礼だなんてぇ。こうして指名してくださるだけでもうぅ。十分ですぅ。」


「いえいえ、それではいけませんのじゃ。私は貴女に救っていただいたも同然なんですのじゃ、何でも言ってください。私が叶えられることなら、なんだって構いませんのじゃ。」


 本当に叶えて欲しいことは、お嬢さんをくださいと言いたいがそれはできないので・・・。


「こんなことをお願いしてもよいか解からないのですぅ。」


「本当に何でもかまわないのじゃよ。」


「では、お嬢さんのロビン様を解放してあげてください。」


「解放というと?」


「ロビン様は、マクシミリアン様の伴侶になるために育てられたと聞きました。」


「ああ、その件ですかの。しかし、どこでそれを・・・。」


「ロビン様のレストランでロビン様のお兄様と仰る方がそのように・・・。」


「そうですか。そのことなら、ロビンの希望は聞いておったのじゃ。もうそのつもりも無くなっていたのじゃが、どうも、うまく伝わらなかったようですじゃの。でも、それだとお礼になりませんのじゃ。なにか他にないのですかの?」


 その後、何度もお断りしたのだが、どうしてもお礼がしたいと仰るので、伯爵が選んだプレゼントなら何でも構わないと申し上げた。まあ、常識のある伯爵なので、マクシミリアン様のように不相応な宝石とかが送られてくることはあるまい。


 と、その場では思っていたのだが、後日いらしたお使いの方の話を聞き、頭がクラクラした。なんと伯爵のプレゼントは、伯爵が経営するレストラン3店舗を譲るというものだった。昨年はこの3店舗だけで娼館の利益に匹敵するほどの利益があり、今後10年以上に渡ってその利益が見込まれるという。


 貰ったときは、お返ししようと思っていたのだが、よく考えると万が一、マクシミリアン様から逃げ出さなければならなくなり、収入がなくなったときに、これらの利益が入ってくるなら生活に困ることは、ないだろうと思い受け取っておくことにした。


 その日は、伯爵のほかに意外な方が来店された。マクシミリアン様の叔父上であるクラーク侯爵だった。


 先王のご兄弟は、既に亡くなっており、マクシミリアン様のお母さまである皇太后も亡くなっており、皇太后の弟であらせられるクラーク侯爵はマクシミリアン様に唯一、意見を申し上げることができる存在だ。


 しかも中立派が多いこの国の貴族の中では、珍しい親王派の貴族なのだ。そのため、マクシミリアン様と言えど、その意見を全く無視することは、出来ないという存在だと聞く。


「ほうほう、マイルズの言う通り、姉上の小さいころに似ておるわ。」


「私が皇太后さまにですか?」


「顔立ちといい。声といい。そっくりだ。もしかすると、マクシミリアンは、そなたの中に姉を見ているのかもしれん。まあ、奴の女性不信からすると仕方が無いのかもしれんがな。」


 マクシミリアン様は、マザコンなんだ。そういえば、どこかしら子供のような時があるのも、それが理由なのかもしれない。


「これでは、マクシミリアンを諌めることなどできんではないか。しかも、姉上にそっくりなそなたに向かって諦めろなどと言えんくなってしまったわ。」


 クラーク侯爵が僕の顔を目を細めるように見て言った。どうやら、マクシミリアン様から僕を娶りたいという話を聞き、平民のしかも娼館の楽士であることを理由に諌めるつもりで僕の人となりを確かめるために会いにきてくれたらしい。


「それで、どうなんだ。そなたは、マクシミリアンを支えたいと思うのか?」


「お慰めはしたいと常々思っておりますが、それはあくまで、お客さまと私という関係であって、マクシミリアン様の妃になろうとは、思っておりません。私は、ただの楽士ですから、そんな恐れ多いこと欠片も思っておりません。」


「ほう、まあそうだろうな。わしが言うのもなんだが、魑魅魍魎のような貴族たちと渡り合いながら、マクシミリアンを支えていくのは、至難の業だからのう。しかも、後ろ盾となる人間もいないんではのう。わしがバックアップしたとしても、難しいに違いない。」


 魑魅魍魎か。では、王立学園の生徒など可愛いものかもしれないな。まあ、国を裏切っても僕を消そうとする人間が居るコミュニティーなのだ。どう考えても僕の手には余る。しかも、僕は男なのだ。どうしても、この機会にマクシミリアン様を説得してもらわなければならない。


「わかった。とにかく、説得してみよう。わしも、時折会いにきても構わぬか?わしもシスコンだったというわけか。この年になって初めて解かったわ。」


申し訳ありません。今週も1話更新です。

また、来週までに沢山書けるように頑張ります。

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