表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/59

第38話 国歌

お読み頂きましてありがとうございます。


本日3話目をお届けします。

 さらに潜入の様子を聞きだして行くと賊は、およそ20名ほどでここにくるまでにおよそ100名の兵士たちの腱を切るなどの方法で動けないようにしたらしい。そして、砦の外には、およそ300名の兵たちが、暗殺者が開けるであろう門を前に待っているというのだ。


「マム?おまえさんは何者だ?」


 それまで黙っていたアマーリエ様が発言した。拷問の仕方を知る楽士なんて怪しいかぎりだ。どう答えたものだろう。


「拷問の仕方は、師匠に教えてもらいましたぁ。なんでも、一般課程の剣士で習うとか、そのときに師匠だったら、治癒魔法を有効に使うというのを教えて貰いましたぁ。もうすぐ、アマーリエ様も習うと思いますぅ。」


 これは、本当だ。一般課程の剣士の教養の選択肢の1つとしてあるのだ。


「そ、そうなのか?」


 アマーリエ様は、確認するように護衛のほうに話しかける。


「はい。確かにそのような選択肢は、あるようなのですが、姫は別の選択肢であったと記憶しています。」


「なぜじゃ。賊に襲われたときにこんな有効な手段は無いぞ。」


「ですが・・・。」


「わかった。わかった。」


 おそらく、こんな手段を王女に取らせたくはなかったのだろう。気持ちは、わかる。僕も兄に騙されて取らされた口なのだ。


 娼館を利用する客や娼婦たちを護衛するのに役立つと言われ選択したのだが、動物を相手にした実習での悲痛な鳴き声が暫く耳に付いて離れなかった。


「アマーリエ様、とにかく門付近で頑張っているであろう。兵士たちに応援を向ける必要がありますぅ。手伝って頂けますか?」


「無論じゃ。じゃが、待てその前に・・・。」


 アマーリエ様が懐から何かを取り出すとなにか文章をしたため、空中に放り投げる。なにか紙でできた鳥が飛び立ったかと思うとスッと消えていった。


「先ほどのは?」


「あれは、緊急便じゃ。父に至急、軍を送ってくれるように頼んだのじゃ。わしに手を上げたことをやつらに後悔させてやるのじゃ。」


 どうやら、アマーリエ様は、王に対して緊急の際に直接伝達できる手段を持っているようだ。


 暗殺者を柱に縛りつける。そしておもむろにマクシミリアン様から戴いたレアのMP回復ポーションを飲み干した。


「さあ、行きましょうぅ。」


 敵は、門付近に集中しているようで周辺に誰もいない。時折、うずくまっている兵士たちに治癒魔法を使いながら、慎重に門に近づいていく。そこで目にしたものは、門の前で仁王立ちで絶命している兵士の姿だった。


 あっと、言う間に門の閂がはずされた。門は、外に向かって開く観音開きだ。


『ウィンドストーム』


 僕の手から繰り出された風魔法が門を急激に開き、さらに開けようとしていた敵ごと外に居る敵も吹き飛ばした。


「今ですぅ。閉めて!!」


 アマーリエ様の護衛と兵士たちが門に詰めかけ、間一髪、門を閉じ閂を閉めた。


「櫓に上がりますぅ。付いてきてくださいぃ。」


 僕は、物見櫓の天辺まで螺旋階段を駆け上がった。戦力は、僅かだがここを攻め落とすには、螺旋階段を上がってくるしかないのだ。要所要所に護衛や兵士たちが居り、螺旋階段の天辺で待ち受けるアマーリエ様までたどり着けるものは、そういないに違いない。


『広域治癒』


 これは、レベルが上がったお陰で使えるようになった魔法だ。小さな外傷の怪我ならたちどころに治り、HPも10%ほどだが回復する。


 物見櫓から見渡すと、必死に隠れ潜んでいたと思われる兵士たちが数十名ほど立ち上がったのだ。そして、そこかしこで敵と渡り合っているのだろう。剣を打ち合わせる音が聞こえてくる。


 そして、僕は歌い始める。彼らたちへの応援歌は、国歌だ。


 歌を風魔法に載せる。声楽のプロが使う技法なのだが、魔術師でないものだと半径10Mで最大10曲程度が限界なのだが、僕は風魔法を得意とする魔術師。最大半径10KMまで届くものだ。


 これなら、なんとか、国境の山岳地帯にいるマクシミリアン様に届くかもしれない。ただただ届くことを祈り、捧げるように歌う。


『おお 見てみろ 夜明けの光を』


『夕暮れ 陽が落ちる時 我等が思う』


『それは輝く星の旗を我々は目にした』


『櫓に見た 勇壮に翻りし あの旗』


『赤き炎立ちのぼる 砲音空に轟く中』


『耐えろよ 旗は尚そこにあり』


『おお 星輝く旗は 今ここに棚引く』


『楡の大木 勇者の故郷』


 1番から3番の歌詞をなんども繰り返し繰り返し歌う。時折、枯渇し出したMPにポーションで喉を潤す。実は、ショーの時に何回アンコールが掛かってもいいようにこの物見櫓に隠してあったのだ。まあ、そのときは、マクシミリアン様の1回だけだったのだが・・・。


 歌い始めてから鐘半分後には、兵士たちが砦内に居た敵を殲滅、そして、鐘2つ後には、山岳地帯からもうもうと土煙が上がった。将軍とマクシミリアン様に歌声が届いたらしい。


 一騎当千の将軍達に加え、要所要所でマクシミリアン様が血統魔法の自軍の兵士のみを回復できる『広域回復』を唱える。僕が唱えた『広域治癒』は敵味方関係なく回復するが、これは違うらしい。


 戦場で倒した相手が絶命していない限り回復して戦場に復帰してくるのだ。使われた側は反則以外なにものでもないだろう。


国歌の歌詞は、適当に考えたものですが、兵士たちが奮い立つようなものに聞こえたら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ