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第37話 暗殺者

お読み頂きましてありがとうございます。


本日2話目です。

 マクシミリアン様を罠にかけるつもりで、入り口付近にアマーリエ様、そして奥に僕が寝ていたところを明け方近くに何者かに襲われたのだ。


「こんな夜更けにおなごを襲うなど卑怯ものめ、なにものじゃ!わしをルム国の王女と知っての狼藉か!!」


 アマーリエ様は、その殺気が解かっていたようで近くに置いてあった剣を布団の中に持ち込んでいたようで、襲ってきたものを切りつけるとそう言う。


 この時間では、娼婦のお姉さまたちも仕事を終え、寝ているはずだし、その客である兵士たちも、マクシミリアン様と入れ替わりに戻って来た兵士たちも疲れて眠っているはずだ。


 咄嗟に僕も近くにあった剣を掴み立ち上がり、アマーリエ様の近くに行く。


 室内には、その男を含め、黒装束に身を包んだ男達が3人も居る。


「何事ですか?アマーリエ様。」


「暗殺者だ。気をつけるのじゃ!」


 駆けつけてきた護衛たちにそう指示を出すアマーリエ様。


「マムもわしの傍に付いておれ!」


 僕は、恐怖に足が竦み、アマーリエ様に向かって頷くのが精一杯だ。


 1人の男が入り口付近に陣取っているため、護衛たちが合流できないのがもどかしい。状況としては、2対2だが僕が一方的に足手まといなため、圧倒的に不利な状況なのだ。


 ジリジリと僕のほうへ近づいてくるところや始め僕の髪色のカツラを被っていたアマーリエ様を襲ったことなどから、どうやら、狙われているのは、僕のようだ。


 相当な使い手が2人も狙っている状況となると自分も戦力になるしかない。僕は覚悟を決めて、剣を握る。一応、王立学園の楽士専攻といえど、一般課程の剣士も取っているのだ。


 だが、本格的に実戦を経験しているわけでは、ないので足が震える。


 アマーリエ様も敵を僕のほうへ行かせないように仕掛けてくれるのだが、このままではジリ貧になる。


「1対1なら大丈夫ですか?時間稼ぎをしますから、お願いします!」


「わかった。」


 僕がアマーリエ様の耳元で囁くと了承してくれる。


『ファイアー』


 僕が唱えた魔法に対して、敵は右手に嵌めた指輪を掲げる。やはり、アレは火耐性の指輪のようだ。


『ウォーター』


 さらに続け出した魔法に対しては、左手に嵌めた指輪を掲げる。水耐性の指輪も所持しているのか。しかし、見たところ、指輪は2つだ。本当は、火魔法も水魔法も僕の得意魔法ではないのだ。


『ウインドウォール』


 僕は、ちょうどテントの角付近に居た敵に対して風の壁を作り上げた。これで、時間稼ぎにはなるはずだ。


「今です。」


 僕が叫ぶのが先か、アマーリエ様が飛び掛っていく。一進一退の攻防を続ける二人。そして、決着がつく。アマーリエ様が暗殺者の剣を弾き飛ばし、そのわき腹に一撃を入れる。それで終ったかと思ったのが間違いだった。


 暗殺者は、アマーリエ様の横をすり抜けると僕のほうへどこから出したのか短剣を取り出し襲いかかってきたのだ。


 ただ直線的に襲い掛かってきた僕の手には、剣があった。スイっと剣を暗殺者の方へ向けるとそのまま、ズブリと突き刺さった。目を見開く暗殺者がそれでも、なお先に進んでくる様子がゆっくりとした動きだが、確実に迫ってくる。


 そして、その腕が短剣を振りかぶり、止まった。絶命したようだ。


「す、すまん。大丈夫じゃったか。」


「アマーリエ様、次は左。」


 僕は、風魔法が切れ掛かっている方向を指差し、叫ぶ。その声に呼応するかのように僕を暗殺者の間に入るアマーリエ様。僕は、絶命した暗殺者から剣を引き抜き、入り口付近に向かって構えなおす。


『ウィンドボール』『ウィンドボール』『ウィンドボール』


 今度は入り口付近の暗殺者に向かって3連発だ。1発目は、避けた暗殺者だったが2発目は背中に当たり、テント奥まで吹っ飛ばされた後、3発目に直撃されて気絶した。そこで、アマーリエ様の護衛たちが雪崩れ込んでくる。


 そこで暗殺者の最後の1人は気絶している仲間のほうに駆け寄ったかと思うと手にした剣を仲間の喉元を切り付け、自らも短剣でお腹を切り裂き、倒れた。


「むむ、活躍できんかったのじゃ。」


 終ったと思い、暢気なことを言い出したアマーリエ様だったが。僕は、最後に倒れた。暗殺者に近寄り、短剣を蹴り上げる。


「すみませんが、この者を押さえつけて、サル轡を!」


 とアマーリエ様の護衛に指示を出す。僅かに虫の息があるようだ。何の目的で襲い掛かってきたか聞き出す必要がある。


「早く!」


 呆気に摂られるアマーリエ様と護衛たちだったが、再度催促するとようやく動きだしてその通りしてくれた。


 そのまま死なれたら意味が無いので、切り裂かれた腹は治癒魔法で治していく。


「この中で拷問の経験者は居られますか?」


 護衛たちは、顔を見合すが誰も返事をしない。くそ、ルム国では、そういうことを教えないらしい。僕は、頭を振り、再度発言しなおす。


「では、私の替わりに拷問してくださるかたはいらっしゃいますか?」


「私が・・・。」


 護衛たちが押さえつけるのを見守っていた1人が発言する。この人は、いつもアマーリエ様を諌めていた人だ。おそらく、護衛たちの中でも偉いひとなのだろう。


「では、手の指の爪に短剣を挿入するようにして剥がしてください。」


 立て続けに10本の指をしてもらった後、何者かを問う。しかし、無反応だ。さらに足の爪、足の腱、わき腹、腕の筋、耳の剥ぎ取り、まで行ったがまだ無反応だった。


 僕は、更に指の爪を治癒魔法で治しては、剥ぎ取り、質問、治しては、剥ぎ取り、を延々と5回繰り返したところでゲロした。


 やはり、この暗殺者は、今敵対している軍事国家の手の者で僕を暗殺して、マクシミリアン様に心理的なダメージを与えることだった。


 しかし、マクシミリアン様たちが国境付近を視察しに行ったタイミングといい、僕の情報といい情報が詳しすぎる。さらに流出元を問い詰めていくと、我が国のある貴族の名前が出てきた。やはり、国内にマムの存在が邪魔だと思う人間が居るらしい。


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