表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/59

第34話 兄弟でデート

お読み頂きましてありがとうございます。


「遅れてごめんなさいですぅ。」


 デートは、誰もが知っているスポットで待ち合わせすることにした。実は、本当に全ての人と手が切れているのか知りたかったのだ。鐘半分くらい遅れて到着する予定だ。その間、隠れて恋人に声かけられたりしないか見張るつもりだ。


 待ち合わせの時間よりも随分前に行ったのだが、それよりも先に到着しているとは、思わなかった。暫くそのまま隠れて見ていると予定時刻を過ぎてから逆ナンされようが、時には元彼女なのだろうどうやらその場で復縁を迫られているらしく、ドキドキと見ていたが仕舞いには、頬に手形を付けることになったようだ。


 見たところ本当に全ての彼女と手を切ったみたいだ。そして、少し駆け足気味に近づいていったのだ。


「いいよ。いいよ。俺も結構遅れてきたし・・・。」


 へえ、経験値の違いかな。こういうふうに気遣いができるんだ。僕もこういうところは、見習わなきゃね。


 その後もエスコートや会話の仕方や距離感など、こっちが文句のつけようがない。あまりの経験値の違いを見せ付けられ、なんかだんだんと落ち込んできたのだ。


 流石にポーカーフェイスは、いろいろと鍛えられているから、表情には出ていなかったと思うけど。


「これ、プレゼント。今日の記念に受け取って。」


 あっ。これ、今日ショップで一番ほしいと思ったけど、余りにも高くて手が出せなかった財布だ。しかも、身分不相応だよねってお喋りしていたやつなのに。


「同意したじゃない?」


 身分不相応だよねって言ったら、同意してくれたのに。なぜ、ココに。


 うそつきが居るよ。ココに。


「え?」


 兄がアルバイトをしているのは、知っているが殆ど1ヶ月分のアルバイト代が吹っ飛びそうな金額なのだ。


「うん。でも、マムが喜ぶと思ったから・・・。」


「っ。」


「ごめん。迷惑だった?」


 まだ、心の奥底では、どこかこれが兄のナンパの手口なんだと思っていたのだが、それが霧散してしまった。


 ・・・確信してしまう。兄の向けてくれる好意が本当なのだということに・・・。


 決してマムがユーティーだとわかってからかっているわけじゃない確信・・・。


「・・・こんな高価なもの貰ったら、お返しが大変ですぅ。」


「別にいらないんだけど・・・。どうしても、マムの気がすまないんだったら、今1つだけお願いを聞いてくれる?」


 ほらきたぞ。なにをされるんだろう。キスかな。まさか、いきなりその先なんてことは、ないよね。


「お願い?」


「手を繋ぎたい。」


 ・・・・へっ・・・手・・手を繋ぐだと・・・それは、どういう意味なんだろ。


「この財布のお返しがそんなのでいいのですかぁ?」


「うん。」


 ・・・本気なのだろうか。まさか、からかっているのだろうか。まあ、手を繋ぐことくらいなんでもないか。無理にキスされそうになったら、引っ叩いてやろう。


「はい。」


 そういって、手を出すとしっかりと握りこんでくる。さあくるか?


「手、小さいな。」


「そうぉ?」


「ふ。」


 何、なんか笑っている。


「凄く嬉しいよ。」


 なんだ?まさか、純真なのか。いやいや、騙されてはいけない。これが兄の手口なんだ。


「本当に嬉しいの?今まで彼女とかいたんだよねぇ?」


「好きな人と繋いだのは、初めてだよ。」


 えっ、どういう意味だ。


「前の彼女は、好きじゃなかったのぉ?」


「うんそうみたい。こんなことが、こんなに嬉しいなんて・・・。マムが初めてだ。」


 騙されん。騙されんぞ。このナンパ師め。思い出すんだユーティー、子供のころから、こいつの爛れた女性関係で苦労したことを。


 そもそも、好きでもない相手と付き合うだけでも、僕の理解の範疇を超えていると思う。ということは、僕ってマクシミリアンを好きなのか?それとも、僕も兄と同じなのか?


・・・・・・・


「どうしたんだ。今日は?」


 今は、娼館でマクシミリアン様の相手をしているところだ。マクシミリアン様には悪いが、今日のデートのことを思い出して、ついうわの空になってしまうのだ。


「私って、マクシミリアン様を好きなのかな?って。」


「ど、どうしたんだ。突然。」


 ゴン。


 マクシミリアン様が僕の膝から頭を起こして酷く動揺している。動揺するだけなら、まだしも、テーブルで腕をぶつけるなんて・・・。悪いけど、笑ってしまう。


「プッ。・・・・ひっ・・・痛そうぅ。」


「我慢せずに笑えばいいだろう。」


「ひょんな失礼な・・・ひっ・・。・・・・・ゴメンなさいぃ。あら、真っ赤になってるぅ。押したら痛い?」


「まあ、ちょっとだけな。」


 指で突いてみると。


「ギャッ。」


 結構、痛いみたいだ。


「ゴメンなさいぃ。治療しておくね。」


 手を翳して治療した。


「だから、どうしたのだ。」


「なんだっけ。そうそう、今は、好きじゃないけど。前は、好きだったのかなって?」


 マクシミリアン様は、がっかりとした表情をする。


「私って、好きじゃない人とデートできるって理解の範疇じゃないのよねぇ。」


「それは、ユーティーくんの兄のことかの。」


「どうしてぇ?」


「それはだ。王宮で噂になっているからだ。あのナンパ男に本命ができたと。王宮職員の中にも幾人か付き合っていた娘がいたらしい。片っ端からお断りしているってな。噂好きの侍女が、話してくれたのだ。」


「えっ。」


「まさか、マムのことなのか?」


「うん。そうみたいですぅ。何人もの女性と付き合うような人とデートは嫌だって、申し上げたら・・・。」


「全て、切ったというのか。」


「王宮で噂になるくらいだから、本当のことなんですねぇ。」


「まさか、俺は、彼の援護射撃をしてしまったのか?」


「そうなりますねぇ。」


「俺は、バカだ。」


「そうですね。でも、おバカちゃんのほうが、狼よりは、可愛げがあって好きですよぅ。」


「そうか?」


 さっきまで、落ち込んでいたのに、いきなり復活しているし。


「愛すべき、おバカちゃんを目指すか。」


 なんか、変なことを言っているよ。この人・・・。


・・・・・・・


 マクシミリアン様に狩りに誘われた。狩りと言ってもバッファローとかオークだという。


「友達を連れて行ってもいい?」


「男か?」


「いえ、女性の友達ですぅ。」


「それなら、かまわないよ。」


 アーマリエ様を連れて行こうと思ったのだ。キスの現場でも押さえれば、正妻を押し付けられるかもしれない。そこは、じっくり作戦を練っていこう。


 アーマリエ様には、ユーティーから伝えた。


「本当にいいのかのう。」


 マクシミリアン様が手配した馬車にアーマリエ様と共に乗り込む。そして、コソコソと作戦を伝える。


「わかった。頑張って押し倒してみせるのじゃ。」


・・・・・・・


「師のご学友のアーマリエ様ですぅ。私も仲良くさせてもらっていますぅ。」


 マクシミリアン様は、アーマリエ様を見るなり、苦い顔をした。もしかして、もう知り合っているのか、それとも、つりがね書でも送られてきているのだろうか。


「これは、王女、よくいらっしゃいました。いつぞやは、晩餐会の席で、勇敢な演武の舞を見せていただき、ありがとうございました。」


 うわっ、最悪、マクシミリアン様は、アーマリエ様の本性を知っているんだ。今日は、かなり女性らしい姿でいらしているのに、何にもならないではないか。


「おお、覚えておられるのか?もう10年も経つというのに。」


 そんなに前なのか。やはり、つりかね書でも送られてきているのかもしれないな。


「王立学園に留学されているとか。どうですか、我が校は?」


「ええ、我が国の騎士団にスカウトしたいくらいの方々が講師として多く在籍されているようですので、大変勉強になります。」


 王女も本性がバレていることがわかったのだろう。もう隠さずに喋っているようだ。


 本陣というべきところにやってきた。


 作戦は私が席を外し、戻ってくるころを見計らって、押し倒す。そんなふうに考えていたのだが、全くそんな雰囲気の場所じゃなかった。


 時折、瀕死のバッファローや魔獣が連れてこられるのだ。しかも、トドメは、私の仕事らしい。トドメを差すことで、倒した経験値が入り、職業レベルがあがるのだと言う。


 アーマリエ様も遠慮されるし、マクシミリアン様も譲ってくるので、トドメを差す役は、僕にばかり回ってくる。


 女の子らしく、ハンカチで口を覆ったり、トドメを差しながら、目を瞑ったりしていたが、だんだん、面倒になり、流れ作業で殺していく作業になってしまった。


 そのため、その日は、魔術師レベルが5まであがってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ