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第31話 食堂

お読み頂きましてありがとうございます。

「おねえさま!」


「冗談じゃ。冗談。そんなに怒るでないわ。」


 いきなり驚かされる出来事であったが、なんか面白い姉弟みたいだ。平凡な学生生活が、がらりと変わるかもしれない。そんな予感がする。


 ケイと2人で学園内を案内をすることになった。まずは、昼食の時間だったので食堂に連れて行くことにした。王立学園の食堂は、3箇所ある。


まずは上級貴族や王族のための食堂でここでは、時間目一杯かけてコース料理が出される。


次が下級貴族や裕福な商人が利用する食堂、そして準貴族や平民が利用する食堂だ。


「ここが面白そうじゃの。」


 王女様は平民たちがセルフサービスで並んでいる食堂をみて、ここが良いと言い出した。


「なりません殿下。ここでは、警備に支障が出ますので、あちらの食堂になさりませ。」


 王女と王子には、それぞれ帯剣を許された自国の騎士を1名ずつ伴ってきている。


「では、食事が終り次第、ここでお待ち申し上げておりますので・・・。」


 王族や上級貴族が利用する食堂へは、護衛以外の平民が入ることは原則禁じられているのだ。


「いいじゃないか。聞いているぞ。学友は入れても構わぬのであろう。なら問題ない。」


 確かに規則上は、当人が認めたご学友ならば、いっしょに食事を摂ってもいいことには、なっているが、他の上級貴族の非難の視線をモロ浴びなければいけないので避けたいのだ。


 それでなくても、マクシミリアン様を誑かした娼館の息子として、侮蔑が混じった視線を受けることがあるのだ。


 ケイと顔を見合わせて渋い顔をしているとさらに言い募ってきた。


「頼む。1回だけでかまわないからもちろん昼食代は、こちらで持つから。な。」


 流石に王族だからか、頭を下げないが言葉と態度は、下手に出ている。


「わかりました。1回だけですよ。」


 これ以上渋って、彼女たちに頭を下げられたところを見られたらもっと困ることになりそうだから引き受けることにした。まあ、この食堂の料理がどのようなものかは、興味はあるのだ。


 食堂に入ると受付があり、案内の女性に連れられて、5人掛けの丸いテーブル席が置かれた中央を奥の個室に向かって歩いていく。


 案の定、鋭い視線が降り注ぎ、通り抜けた後方の席からは、コソコソと話し声が聞こえてくる。何を言っているかは、よく聞こえないがおよその想像はつく。聞こえなくて良かったというところだ。


 何もなければいいけど・・・。


・・・・・・・


「すまんの。こんなに風当たりが強いとは思わなかったのじゃ。」


「いえ、アマーリエ様が気にすることでは、ありません。半分は、純粋に私へのものですから・・・。」


「ほう。なにをしたのか。聞いてもよいかの?」


 簡単にマクシミリアン様とマムの関係を話した。


「そちの所為では、無いではないか。この国の貴族は、ケツの穴の小さい奴ばかりじゃの。」


「姫さま。」


 あまりの王女とは思えない下品さに御付に騎士から声がかかる。


「そんなにマムって娘は、可愛いのかの?」


「アマーリエ様のほうがお綺麗ですよ。」


 おべんちゃらではなく、本気でそう言ったのだが・・・。


「ケイは、どう思う?」


 ケイに振られてしまった。


「いえ、あの、その・・・。」


 ケイは、ドモってしまった。それは、そうだろう。なんと言ってもケイはマムに惚れているのだ。さすがにマムのほうが綺麗とはいえないだろけど。


「そうか、そんなにか。一度、会ってみたいものよの。一度連れて行ってはくれぬか?」


「ダメですよ。若い女性が立ち入るところでは、ありません。」


「ならば男装すれば、よいのじゃろ。我が国でも時折、男装して皆のまえに出るが評判はなかなかだぞ。特に女性からは、評判がよいのじゃが。」


 まあ、確かにこの体型で男装をすれば、少々童顔だがイケメン男ができあがりそうだ。


「護衛の方々も止めてくださいよ。」


「・・・・・・・。」


「すまんの。こやつらも、慣れておるからの、わしに付いておればしょっちゅうじゃ。」


「なんでそこまでして会いたいのですか?」


「それは、1度はライバルの顔を拝んでおかないとな。」


「ライバル?」


「そうじゃ。留学は、単なる名目じゃ。自国の諜報部の奴らが聞きつけた情報によるとマクシミリアン殿は、ロリコンだという話じゃ。そこで、わしが送り込まれたわけじゃ。既に何度か正式に姉上たちを送り込もうと画策したのじゃが、断られての。」


「それでマムに会ってどうするつもりで・・・。」


「もちろん、正妻の座を譲ってもらい。必要ならマム殿の後宮入りも後押しさせてもらおうかと。協力できれば、そのほうがよいからの。」


 後半は聞き捨てられなかったが、こちらが正妻へ後押しする対価にマクシミリアン様が断念するように仕向けることもできそうかもしれない。僕がこの場でマムの気持ちを言うわけには、いかないので会って話をするしかないのだろう。


「わかりました。セッティングさせていただきます。護衛の方1名とアマーリエ様でよろしいですね。」


「そちは、同席せぬのか?」


「私は、家の手伝いがありますもので・・・。」


「そうか。ケイはどうする?行きたいのであろう。遠慮するでないぞ。」


「もちろん、御伺いします。」


 ケイが同行すると返事をする。


「ヨハンはどうする?」


「申し訳ありませんが、当館は未成年の方はご利用をお受け兼ねます。」


 これだけ、可愛い男の子が来たら、また、マーガレットの悪いくせがでる・・・いやいや、ケイが同席するのだから、休みだなきっと。


「えーそんなぁ?マジ?」


「だってさ。ざんねんね。」


 アマーリエ様は、対して残念そうでもないように言い放った。


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