第29話 休息は訪れそうにない
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僕は、そのまま娼館に向かうと伯爵とマクシミリアン様からのお土産を母に渡した。
「えっ、そうだったの。マクシミリアン様、みえているいるわよ。」
「嘘。何しにきてるの?」
まさか本当に娼館を利用しようと思っているとは思えないし・・・。
「今は、マーガレットとリリアンに相手してもらっているけど。どうする、挨拶だけでもしてくる?」
「お酒は、入っているの?」
「いえ、召し上がっていないわ。」
それなら、大丈夫か。まあ、娼館だし大丈夫だろう。
「わかった。化粧を直してから、お相手をしてくるよ。」
「大丈夫。疲れてない?」
「もちろん、疲れているよ。また、今度、お休み貰うからね。」
「はいはい。わかりましたよ。マクシミリアン様に伝えてくるから・・・。」
僕は、娼館の控え室で、化粧をやり直し、衣装もマクシミリアン様から頂いたものに着替えた。これに袖を通すのも久しぶりだ。
・・・・・・・
僕が席に伺い。お土産に対するお礼を言った。リリアンとマーガレットさんは、歌の支度のために控え室に向かう。ひさしぶりにマクシミリアン様と2人だ。
「ユーティー君は、優しいね。」
「師ですかぁ、厳しい人だと思いますぅ。」
「ユーティー君も一連の俺のしでかしたことを知っているのだろう?」
「ええまあぁ。」
「そのことになにも触れず、優しくしてくれたよ。」
厳しく接するのは、母やマムだけで十分だと思ったからだ。
「わかりました。あのことを無かったことには、できないですぅ。でも、マクシミリアン様の楽しみを奪うことはないようにするように主人に伝えておきますぅ。」
僕は、暗に娼館でお相手すると言った。
「今日は、楽しかったですかぁ?」
「うん。骨休めができたよ。でも、隣に君がいないのは、寂しかったな。」
「まさか、私といっしょに温泉に入りたいと・・・。」
「・・・・ま、まさか。そ、そんなことは、考えていないよ。」
そんなにどもらなくても、解かりやすい人だ。
流石にあまり居座っては、ダメだと気づいたのだろう。少しおしゃべりをしたあと、マクシミリアン様は、帰っていった。
・・・・・・・
母屋に戻り、化粧を落として、服も着替えた。
伯爵とマクシミリアン様から頂いた封筒には、1日のアルバイト代としては、破格な金額が入っていた。でもそれは、それほど常識から外れた金額では、無かったのでありがたく頂いておくことにした。
「マムは、それでいいの?」
「ええ、娼館でお相手するだけならば・・・。当分、外で2人っきりになるようなことは、したくないけど・・・。」
「もちろん。それは、お断りするわ。」
「フローラさんは、どう思う?」
「そうね。そろそろかなとは、思っていた。マムの気持ちさえ、そちらに向いているならね。」
・・・・・・・
前の通りとは、行かないが平穏な日々が戻って来た。唯一違うのは、時折、マクシミリアン様からユーティーに指名が掛かることだ。癒しの手が目的だ。
マムに対しては、まだ、言い出しにくいのだろう。僕を指名することで暗にマムにしてほしいとアピールしているのかもしれない。
ただ視線が気になる。もしかすると、マクシミリアン様のお稚児様と思われているのでは、ないかと・・・。娼館で男同士で膝枕、目立って仕様がないのだ。
わざわざ、マムと同額だけの指名料を払っていくので娼館の人間としては拒否することもできないのだ。
しかも、最近、どこで聞きつけたのか。マクシミリアン様への嫌がらせなのか、伯爵まで真似するように指名してくる。
マムの出番は減ったが前以上に忙しくなった。2人いっぺんに指名されたら、どうしようと思うがそれは、母がうまく裁いているらしい。あたりまえだが早着替えをやらされることは、あっても同時ということはない。
「ねえねえ、へとへとだよ。なんとかして!」
マクシミリアン様と伯爵の指名で前よりも2倍近く働いているのだ。早着替えの労力も含めれば、もっとだ。
「若いんだから、大丈夫。大丈夫。なんなら、今度のお休みの日にまた、温泉に行ってくれば?」
「そんなことをしたら、伯爵が聞きつけて同行しなければいけなくなりそう・・・。」
「それも、ありねぇ。」
母は情報を漏らす気マンマンだ。
「もうそろそろ、マムがマクシミリアン様への癒しの手を解禁してもいいよね。」
「えー、それじゃ、ユーティーへの指名が減っちゃうじゃない。ダメよ。」
最近、母が守銭奴に見える。確かにお客さまを大切に思う心は大事だが僕をもっと大事にあつかってくれよーー。
そして、ユーティーに当分、休息が訪れることは、無いのだった。
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これで書きため期間に移行します。1~2週で復帰できたらいいな。
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