第28話 泣き虫なロリコン国王
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食事のあとは、日の光が当たっているベランダのソファで昼寝をするらしい。
「ユーティー君、お願いがあるのだが・・・。」
「なんでございますか。国王様、僕ができることならなんでも仰ってください。」
「うむ。隣に座って、癒しの手を使ってくれないか?」
僕が隣に座ると当然のように膝に頭を乗せてくる。しかも、マムのときにヤラレたように抱きかかえてくるのだ。おもわず前回と同様に悲鳴をあげそうになるがなんとか、やり過ごした。
男の膝に頭を乗せてなにが楽しいのだろうか。しかし、マクシミリアン様は、目を瞑る。
「お願いする。」
どこをと言われていないので、前回と同様に頭から上半身に掛けて、癒しの手で擦る。そうするとマクシミリアン様がなにやら、ブツブツと呟きだした。よく聞いてみると『マム』と呼んでいるようである。
僕は代替品かよ、と思いながら、今度は頭を中心に癒しの手で擦っていく。
え。
マクシミリアン様が静かに泣いている?
かすかに目尻から零れ落ちる涙を見て愕然とする・・・。いや、この人は、泣き虫だったな。国王なのに泣いて懇願されたこともあったな。
こんなに落ち込んでいるのか。もしかして、国政に支障がでているのか?
と、伯爵の方をみてみると穏やかな視線でマクシミリアン様をみている。国政に支障が出ているようだ。
普段は、伯爵がマクシミリアン様をからかう場面をよくみるが、仏心をだして、気晴らしに連れ出したのだろう。
・・・・・・・
鐘1つほどの昼寝が終わり、マクシミリアン様がお帰りになるらしい。
「昼寝の時間を邪魔して悪かった。これは、アルバイト代だと思い取って置きなさい。」
マクシミリアン様から封筒を渡される。結構、重いようだからお金が入っているに違いない。中身を確かめたい欲求に囚われるが失礼にあたると思い、そのままポケットにいれた。
さらにおみやげコーナーでたくさんのお土産まで持たされた。本当は、マムにと言いたいのだろうが、娼館の皆にと言う。少しは気遣いができるようになったのかもしれない。
「伯爵、ありがとう。また、娼館でな。」
そうマクシミリアン様は、言うと馬車に乗り込んでいった。
馬車が遠ざかると伯爵と見合わせ。同時に溜息をつく、そして、それをお互いに見て、笑いあった。
「ユーティー君は、事情を知っているようですな。」
「ええまあ。」
「どう思った?」
「従兄としては、国王様でなければ、殴っていたかもしれませんが・・・。只の男としては、まあ、わからないことは、ありませんね。」
伯爵は、その答えに満足したのだろう、うんうんと頷いた。
「ただ、僕がマムたちに何かを言うつもりは、ありません。たとえ、彼女たちの仕打ちが国政に影響を与えているとしても・・・。」
伯爵は、それを聞き目を見開く。
「そんなことが解かるのかい?」
「やはり、そうですか。でも、やりすぎでは、無いと思っています。身びいきかもしれませんが十分な温情を感じます。やろうと思えば単なるお客さまとして感情のこもらない接客もできるはずですから・・・。」
「そうだな。それをやられたら、彼は壊れるかもしれないね。」
「マムのどこがそんなにいいのでしょうか?生意気だし、女性的な魅力も無いし。僕にはよくわかりません。」
「そうだな。近くに居るから、解かりづらいかもしれないが、彼女のお客さまに対する真摯な気持ちや態度は、見ているだけで気持ちいいんだよ。」
まあ、いつもこれが最後になるかもと思い、一生懸命やっているが・・・。
「それは娼館の皆が言えることだと思うのですが・・・。」
「そうだな。君を含め、娼館のご主人の教育の賜物なのだろうね。特にそれが現れているのが、マム様なのだと思うな。」
真摯か、本当だろうか。娼館のランクを下げたくないという不純な動機で始めたし。マクシミリアン様をバカにするようなことも、有ったような気がする。そう見られているのなら、もっともっと真摯にするべきだろう。
その後、辞退したにも関わらず、アルバイト代だと言い封筒を渡され、さらに娼婦のお姉さまたちとマムと母の分まで、温泉水で出来た化粧水を渡された。うーん、やはり、マクシミリアン様とは、気遣いのレベルが違うな。
そのまま、伯爵の馬車で送り届けてくれるという。
「癒しの手の件、本当に考えてくれないか?」
「はい。母と代変わりするのは、随分先の話となると思いますので、期限付きでよろしければ、進路の1つとして考えたいと思っています。」
「ああ、それでかまわないよ。」
・・・・・・・
「わざわざ、送っていただきましてありがとうございました。」
「ついでだしね。かまわんよ。」
「今日は、娼館のほうは、お寄りにならないと思いますので、マムに挨拶をさせますので、お待ちいただけますか?」
「マム様は、お休みの日なのだからゆっくり休んでくださいと伝えてください。」
「伯爵様。伯爵様の仰る真摯に向き合っているマムだったら、絶対に挨拶したいと言うと思いますが・・・。」
「うん、そうか。そうだな。」
「では、失礼します。」
僕は、慌てて母屋に戻り、薄化粧をして簡単に支度をする。そして、伯爵の馬車に再び向かった。
「ユーティーがお世話になったそうで、ありがとうございましたぁ。それにお土産まで、ありがとうございますぅ。大事に使わせてもらいますぅ。」
「お休みのところ、押しかけてしまって申し訳ないね。じゃあ、また。ユーティー君にも、よろしく、言っておいてください!」
伯爵は、そう言うと馬車はそのまま、出発していった。




