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第27話 癒しの手

お読み頂きましてありがとうございます。

「気持ちよかったです。」


 僕は、率直に感想を伯爵に言う。


「わしは、やはり、マムの癒しの手のほうが、良かったな。」


「え。マムが裸になった国王様をマッサージするのですか?」


 嫌だー。僕がマッサージをして、マクシミリアン様のあそこが困った状態になって、しかも個室だったりしたら、絶対に貞操の危機だ。


 マクシミリアン様も、同じ想像をしたのだろう。顔を真っ赤にして言う。


「違う。違う。光魔法に癒しの手というものがあってだな・・・。」


 そういえば、マクシミリアン様がお疲れになったときにしてあげたことがあったな。そのときもあそこが困った状態になっていたのだろうか。


「へぇー。マムが国王様に・・・。感じました?」


「違う。違う。・・・・からかっているのか?」


「大丈夫ですよ。マッサージの際にあそこがあんなことになっていたなんて、マムには言いませんから・・・。」


「見たのか?・・・絶対だぞ!言うなよ。いや、言わないで!」


 マクシミリアン様が懇願してくる。やはり、マムのことを盾にすると弱いな。まあ、この辺にしておこう。マムならもっと弄り倒すところだけど。


「そうか。癒しの手か。今度、導入してみよう。」


 先ほどから伯爵が大人しかったのは、マッサージに癒やしの手のサービスを導入しようと考えていたのが原因らしい。癒しの手の使い手は、光魔法を血統魔法とする王族でも半分くらい。市井になると10人に1人もいないくらいだという。


 まあ、ここでは、おそらく、VIPに対して行うであろうから、相当な高収入が予想できる。羨ましいかぎりだ。


「ユーティー君、どうしました?」


 僕の視線が物語っていたのだろう。伯爵が聞いてくる。


「ええ、僕も使えるのですが、教会での奉仕くらいしか使い道が無かったですから・・・。」


「なんなら、アルバイトしてみる?君なら身元もしっかりしているし。」


「そうですね。学園を卒業するころになったら、考えてみます。」


「そうか、惜しいね。」


「今は、マムへの指導もありますから・・・。マムの出来が悪くてマムの出勤日数が減ってもかまわないというなら、休みの日くらいはできますが・・・。」


 そんなことをしだしたら、とてもじゃないがマムになっている時間がとれない。本当は、興味はあるんだけど・・・。


「「それは、困る。」」


 やはりと言おうか、当然と言おうか2人とも声を揃えて言う。


・・・・・・・


 その後、昼食となった。前にもマクシミリアン様と食事をしたが、今のほうが緊張している気がする。給仕たちも、まさか、あるじと国王様と同席しているのが、娼館の子供だなんて考えていないに違いない。


 必死にマムの時に習ったマナーを思い出しつつ、食事をする。味なんか、わかったものでは無い。


「国王様、どうかされました?」


 マクシミリアン様がじっと、こちらを見てくるのだ。物凄く落ち着かない。


「いや、マムに食べ方がそっくりだなと・・・。」


「申し訳ありません。なにか粗相をしましたでしょうか?」


 こちらは貴族レベルのマナーが身についているわけでは、無いのだ仕方がないだろう。とりあえず、謝っておく。二人とも、そんなことは、気にしないタイプの人間だから、軽くでいいだろう。


「いや、大丈夫だ。君たちの食べ方は、とても優雅だ。」


 マクシミリアン様、それは目が曇り過ぎというものです。


 もしかして、腐ってますか?


「ありがとうございます。母の仕込みのおかげと思っています。」


「フローラか。厳しいからな。うんうん。」


 物凄く実感が篭もっている。マクシミリアン様も昔、母に躾けをされたのだろうか。まあ、そんなことはあろうはずもないが・・・。ときどき、母とマクシミリアン様を見ていると錯覚しそうになることがある。


「娼館のご主人ですか。どこかでお会いした気がするのですが、国王様とは、どんな関係でしょうか?」


「ああ、隠してもいずれわかるだろうからな。フローラは、弟の知り合いの知り合いだ。」


「ええっ、あの方の知り合いですか。それは、頭が上がりませんな。わかりました。もう聞きません。」


 そうか母は、王弟の婚約者だったという娼館の子供と知り合いだったのか。きっと親しい友人だったのだろう。あの事件で友人が危ない目にあって、マクシミリアン様に噛み付いている母の姿が目に浮かんだ。やっと納得がいった。


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