第21話 バレた??
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それでも、マクシミリアン様は、疎遠になるわけでもなく、通い続けてきてくださっている。さすがに後宮うんぬんかんぬんという話はしなくなったが・・・。
ウォーレス伯爵もわざわざ、僕に指名してくださる。時折、ロビン先生も同行して来てくれるが、ほとんどの場合1対1でお話し相手をするだけだ。
その後、声楽家の話も後宮の話もされないのだ。他愛もない話題で盛り上がったり、マクシミリアン様と対して変わらない。側室に入ってほしいなどと口説くようなことも平気で言われるので余計に解からない。
「ウォーレス伯爵も少しは、遠慮してくれるか。」
「陛下こそ、先に指名したのは、私ですから邪魔をしないで頂きたい。」
ウォーレス伯爵とマクシミリアン様がブッキングしたときが一番大変だ。マクシミリアン様が予約を入れてくれるときは、優先しているので問題ないのだが、時折、マクシミリアン様がフラッとやってくることがあるのだ。
そういうときは、1人で2人を相手することになる。伯爵は伯爵でその言動から、陛下のことを実の子供のように可愛がっていることが言葉の端々に現れていることは、確かなのだが僕の前に居るときは、1人の男として陛下と取り合ってくれるのだ。
僕が女性ならモテモテで嬉しい状況なのだろうが、内心困惑するしかない。そう言っても接客業、そんなことは、おくびにも出さない。
「そういえば、今年の周年は楽しみにしているぞ。」
「はいぃ。マクシミリアン様ぁ。その節は、劇場の手配でお世話になりました。」
そうなのだ。『チェリーハウス』では、毎年、娼館主催の周年パーティーを行い、上得意さまを招待していたのだが、50周年を迎える今年は、一般の方にも気軽に来て頂けるショー形式の見世物を用意することになった。
今居る3人の楽士の歌と踊りを中心として、娼婦のお姉さまたちがセクシーな衣装を着て踊るというものだ。そのための披露する場所をマクシミリアン様に手配して頂いたのだ。
場所は、王宮併設の迎賓館の一部にある賓客に付き添ってくる従者を持て成す施設で、王宮の施設とはいえ、割と敷居が低い施設だ。実際に大勢の随行者をつれてくる会議などで、賓客を迎賓館で持て成しつつ、随行者をその施設で持て成すといったことが行われたり、王宮楽士がお祭りの際に王都の市民に向けていろんな催しを提供したりしている。
マクシミリアン様は、その施設と王宮楽団も無料で貸してくれるらしい。これは、元々私達だけでは、楽団として楽器の弾き手が足らないため、追加手配する必要があったのでなによりうれしい。
「伯爵様もロビン先生が快く演出を担当してくださるそうでありがとうございます。」
本当は、今、学園でロビン先生に習っている歌と踊りの演出をそのまま使わせて頂ける様にお願いしに行ったのだが、そのときに演出を担当してくれることを申し出てくれたのだ。
休日の昼間に娼館で数回に分けて練習を既に実施している。あとは、前日のリハーサルで数回、会場の大きさに合わせた演出を行うつもりだ。
「いやいや、私自身もなにか協力したい・・・。そうだ!皆様の揃いの衣装をお作りしましょう。娘から聞いた話だと衣装は、持ち寄りだとか。最後のフィナーレでは、皆が持っているよく似た衣装を使うとか・・・。それならば、揃いの衣装のほうが決るでしょう?」
「え、えぇ・・・。よろしいのですか?」
「もちろんだとも。」
僕は、即座に母に伝えると、その場に居た娼婦のお姉さまたち、1人1人がこちらに寄ってきてお礼を言いにくる。もちろん、僕もお礼を言った。
「ありがとうございますぅ。」
こういう娼館全体に対する気遣いができるところが大人の男性だなとうっとりするところだ。
「なら、俺は、マムのメイン衣装を提供させてもらおう。」
うっとりとした態度が目に入ったからだろうか。即座にこんなことをマクシミリアン様が言い出した。ああ、またとんでもなく高い衣装が送られてきそうだ。こういうところに幻滅してしまうのだけど、わかっていないらしい。
「ありがとうございますぅ。」
しかし、接客業、そんなことは、おくびにも出さず感謝の意を伝えた。しかも、いい格好をするのは、僕相手ばかりなのだ。なんで、こんな簡単な気遣いができないのだろうか。やっぱり大きな子供なのだろう。
・・・・・・・
「あ、あなたは・・・マムは、ユーティーなのね。」
ロビン先生が演出を担当してくださると言い出したときから、その予感は常にあった。結局その予感が当たってしまった。
学園でも同じ演出で男性パートを練習していたし、娼館でも女性パートを練習していた。どうも、それが仇になり、王宮の劇場でのリハーサルで、うっかりユーティーの声で男性パートを歌ってしまったのだ。




