表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/59

第20話 嘘吐き

お読み頂きましてありがとうございます。

「・・・・・・。」


 マーガレットさんがマクシミリアン様の顔を覗き込み頭を捻っている。どうしたんだろう。


「マム、国王様は、最近ここに通うようになったの?」


 マーガレットさんは、囁くように聞いてくる。


「ええ。でも、かなり昔によく来ていたらしいですよ。」


 そう僕が答えるとマーガレットさんの瞳が爛々と輝きだした。なにか不味いことでも言ったかな。


「あなた、マーくんでしょ。」


 マーガレットさんが突然、マクシミリアン様に向かってこう言った。昔の知り合いなのか?娼婦のお姉さんが10年以上同じ娼館に留まることは、少ないが楽士は別だ。マーガレットさんも随分昔から居るから知り合いでもおかしくはない。


「ほら、13年くらい前だったか夜のお相手してあげたことが、あったじゃない。貴方は、女性を抱くのが初めてみたいだったし、朝起きたとき、なんか慌ててたじゃない?」


 それが本当なのは、マクシミリアン様の目が泳いでいることではっきりわかる。


「・・・し、知らない・・・。人違いだろう。」


 嘘をついた。最低・・・・。


「さ・・い・・て・・い・・。」


 僕は、思わず我を忘れて地声を出してしまった。


「ひぃぃぃ。」


 マクシミリアン様は、情け無い顔をして、僕とマーガレットさんの顔を交互に見ている。


「マクシミリアン様ぁ。ご主人さまに聞けば解かることですよぅ。なんなら、聞いてきましょうか?」


「わ、解かった。ごめん。謝るから許して。ね。」


 マクシミリアン様が涙目になって、謝ってくる。でも、許してあげない。


「マーガレットさん、もっと話してなにがあったのか聞きたいなぁ。」


「うんうん。いいのかなぁ。」


 マーガレットさんは、そう言いながらも僕の意図を汲み取ったのであろう。悪戯っけたっぷりな目をして続ける。


「マーくんは、ね。酔い潰れていたのよね。ときおり、貴族の悪口で奇声を挙げたりして。でもそんな様子が可愛くて、つい悪い癖で、ペロリと頂いちゃったのよ。」


 ああ、悪い病気が出てしまったと・・・。


「私は、子供を産んだばかりで今より胸が大きくて、その胸に吸い付いてきたわ。なんだか、子供に吸われているみたいで幸せだったわ。たとえ、そのあと、全く姿を見せなくなったと言ってもね。」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もうその辺にしてくれ!!」


 マクシミリアン様は、顔を真っ赤にしながら、平身低頭、頭を下げ続ける。


「ねえねえ。今日は、どう?あなたも女性の扱いには、慣れたよね。お勉強の成果を見せてくれない?」


「マクシミリアン様。許してあげますぅ。その代わり、マーガレットとスッキリしてくれば?」


 少しでも、此方に向いている欲望を逸らしたいと思い提案してみる。


「ほ、本気か?」


 マクシミリアン様は、涙目で僕のほうに訴えかけるような目を向けてくる。なんでだろう。僕を好きだと言うけど、あと2年近くは手を出せないのだから、スッキリすればいいのに。僕が了承してるんだから。


「うん、まあ。」


 なんか、僕が悪い気がして少しぼかして答える。


 マクシミリアン様の肩がガクッと落ちたようだ。


 そんなショックを受けるようなことか?


「マーガレットさん、ダメみたいだよ。もう、一回酔い潰してみれば?そうだ!マクシミリアン様が好きなお酒入りのジュースがあるんだ。それを持ってきてもらおうよ。あのジュースなら飲めますよね。」


「か、帰る。」


 イキナリ立ち上がったマクシミリアン様は、逃げるように母のところに向かった。


・・・・・・・


「泣かしちゃ・・・ダメじゃない。」


 その日は、後をマーガレットさんに任せ帰宅した。深夜になって、母が母屋に戻って来た。


「うん、でも・・・。嘘をつくなんて・・・それも、自分の初めての相手に対して・・・。酷いよ。」


「あの日はね。侯爵令嬢が処刑された日だったのよ。」


「ああ、マクシミリアン様が貴族不信になった日か。それは、酔い潰れたいかも知れないな。でも、関係ないじゃないか。嘘をつくこととは。」


「それは、知られたくなかったんじゃないかな。マムに。」


「あんな、バレバレの態度で?まあ、とにかく、セクハラが減りそうだから助かったよ。それよりも、聞いてるの?僕を後宮に入れたいだなんて言っているけど。もちろん、断るよね。」


「さあ、それはどうかしら・・・?」


 どうやら、今度は、僕が虐められる番らしい。


「へっ、どういう意味。」


「言葉通りよ。流石に権力やお金を積まれたら考えちゃうな。」


「え・・え、で、でも、母さんも困るだろ!ほら、僕は男の子だし。」


「王家の恥になることをわざわざ言ったりしないものよ。そのまま、後宮に一生監禁されるだけだと思うけど。マクシミリアン様のことだから、そのまま愛してくれるかもよ。」


 マクシミリアン様が僕を男の子のままで愛してくれるのも嫌だが、一生監禁されるのも嫌だ。


「嫌だよ。嫌だ嫌だ絶対嫌だ。」


「まあ、それぐらい、マクシミリアン様も知られるのが嫌だったのよ。解かった?解かったならもう寝なさい。時折、マーガレットを緩衝材に使うのは、構わないけど、いつも付けたりしないわよ。多少のセクハラくらい自分でなんとかしなさい。マクシミリアン様は、貴女に逢いにきているんだから、次からはそうするって言ってあるから・・・。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ