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第15話 ロリコン国王の思い違い

お読み頂きましてありがとうございます。

 オペラ会場では、開会前の挨拶でマクシミリアン様が貴賓席に居られることが伝えられ、手を振る姿が見られた。オペラは、前評判どおりの素晴らしい出来で、自分が声楽家としてまだ入り口付近でうろうろしていることを思い知らされた。


「マム、あなた国王様に劇場で会ったんですってね。」


「ええ、しつこいナンパ男から助けて頂きました。」


「国王様から、次の休日に別のオペラを一緒に鑑賞しようと言ってきてるのだけど・・・。」


「それって断れるの?」


「断れないわ。」


「じゃあ、行くしかないじゃない。貴賓室なんだよね。襲われないかな。」


「大丈夫よ。私も行くから。」


「フローラさんが同行してもいいって言ったの?」


「ええ、だから了承したのだけど・・・。」


・・・・・・・


 そして、次の休日。今日の衣装とアクセサリーは、マクシミリアン様に買っていただいたものだ。娼館では、高価すぎてほとんど着ける機会がなかったが、オペラ鑑賞ならば問題ない。


 全ての支度が整ったあと、マクシミリアン様の馬車が娼館に到着したと連絡があり、向かおうとしたときにその連絡が入ってきた。娼館の警護役トップの先代が亡くなったというのだ。


 娼館の警護役は、裏方そのものだ。娼婦の警護はもちろん、客達から要望があれば買い物や付け届けなど、ありとあらゆる裏方の仕事を行う。


 もちろん、娼婦に手を出すことは、禁じられているが、気心のしれた仲になることが多く、娼婦が引退するときの受け手となる男性も多い。


 その警護役のまとめ役を長年に渡って努めたという男性が亡くなったというのだ。もちろん、母もすぐに駆けつける必要がある。


「行かなくちゃ。あれだけお世話になったんだもの。行かないわけには、いかないわ。」


 行かなければ、今の警護役からの信頼度も激減するに違いない。僕は、実際に警護役をしていた時代を知らないが、ときおり、家に顔を出すおじいちゃんといった関係でよく可愛がってもらった。


 本当ならば、僕も行きたいところだが、マクシミリアン様との約束を違えることは、無理だろう。


「母さん、行っておいでよ。僕なら大丈夫だよ。」


 僕は、素に戻って母の耳元で囁いた。


「ごめんね。」


 まあ多少は、我慢するしかないだろう。まさか、命まで取られることもあるまい・・・。


・・・・・・・


 先に母が馬車に乗り込み、マクシミリアン様と話し込んでいる。きっと、いろいろと釘を刺しているのだろうが、相手は、あのエロ国王だ。何もしないなんてありえない。


 馬車の扉が開き、母が出てきた。


「マイルズ様。本日は、よろしくお願いします。」


 母もマクシミリアン様を信用していないのだろう。マイルズ様にもお願いしているようだ。


「はい。夕刻には、無事送り届けますのでご安心ください。」


 マイルズ様は、苦笑しながらも確約してくれた。


「今日は、お招きありがとうございますぅ。」


 僕は、そう言って馬車に乗り込む。


「今日は、一段と綺麗だ。よく似合うよ。」


 僕がマクシミリアン様に買ってもらった衣装やアクセサリーを着けているのがわかったのだろう。お褒めの言葉を頂いた。


 馬車が走り出すと、早速、僕の手を握りこんでくる。これは、いつものことなので、マクシミリアン様の手ごと膝の上に乗せる。


 娼館ならこのまま膝をなでなでするマクシミリアン様だが、一応自重しているらしく。手を繋いだままだ。念のため、キスを迫られたときに防御するために右手は、膝の上から離しておいてある。マクシミリアン様の大きな手だと僕の両手は、簡単に押さえつけられそうだったからだ。


「今日の出し物は、期待の新星の新人歌手だそうだ。」


 オペラの会場は、同じところだが、月ごとに演目が変わるのだ。そして、月に1度、新人歌手のお披露目が行われる。どうやら、たまたまその公演に当たったようだ。


「それは、楽しみですぅ。」


 新人公演は、月に1度ということもあり、貴族の間でもなかなかチケットがとれないらしい。


・・・・・・・


「お手をどうぞ。」


 会場に到着した。マクシミリアン様が腕を差し出したので、その腕に手を預けて会場内の広間を貴賓室に向かって歩き出した。


 広間では、貴族達の視線が僕にあつまっている。こそこそと囁きあっている貴族達も居る。なにを言っているかは、聞こえないがおよそは、想像が付く。あばずれだとか、誑し込んでいるとかそう言ったことだろう。


 王立学園でも、最近、僕に聞こえよがしに、マムの噂をしている光景に出くわすことがあるからだ。


 だが、さらに近くで貴族達が囁いた言葉が聞き捨てられない内容だった。


 僕の付けているネックレスの値段が、伯爵家の年収に匹敵するシロモノだというのだ。


「ま・・まさか・・。」


 僕が同じく話を聞いていたらしいマクシミリアン様のほうに顔を向け、目を合わすと目を逸らされた。


 僕の選んだルビーのネックレスは、後日宝飾店から娼館のほうに持ってきて頂いたのだが、その時に、見た娼婦のお姉さんの話では、一粒一粒がトップクラスの品質のものだと聞いた。庶民では、どう頑張っても買えないシロモノだという。


 そのときは、聞き流したが娼館の年間売り上げくらいならば、裕福な商人にとっては、がんばれば出せる金額のはずである。マクシミリアン様が後で、同じデザインのさらに値段の高いものに取り替えるように指示したのだろう。


 僕の肩の乗っている値段を考えるとズンと重くなった気がした。

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