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第14話 エスコート

お読み頂きましてありがとうございます。

「これ。」


 ロビン先生の個人授業の際にチケットを渡された。行って見たかったオペラのチケットだ。これはどういう意味だろう。まさか、ロビン先生とデートか?


 いや、違うだろう。確かに愛の告白をされたがことを公にして、今発覚すれば引き離されるのは必死だ。ということは・・・。


「マムに渡せばいいのですね。」


「いや、君の分もあるから・・・。」


 本当だ。2枚ある。しかし、マムと僕は、同時に存在できない。ロビン先生は、マムと行きたいみたいだから・・・。


「その日は、ダメなんです。偶々用事があって・・・。」


「ならば、誰か友達にあげなさい。」


「わかりました。」


 僕の友達でマムと出かけたい奴なんて1人しかいない。


・・・・・・・


「え、いいのか?もちろん、よろこんで行くよ。」


 僕がオペラのチケット譲ると言ってもケイは渋っていたがマムもいっしょだというと途端に喰いついてきた。たとえ2人っきりでなくても、マムと出かけられることがうれしいらしい。


「今度なにか奢るよ。」


「いいよ。別に。それよりも、そのチケット、マムのもう1人の同行者から貰ったものだから、愛想よくしてくれよな。」


「その同行者って、男性なのか?」


 はて、ロビン先生は、どちらの姿で来るんだろう。でも、公的にライバル関係にあるはずの2人が並ぶことは、ないか。とするとロブの姿で来るんだろうな。


「さあ、そこまでは、わからないけど。男性だとしても、突っかかったりしちゃダメだぞ。苦労するのは、マムなんだからな。」


「まさか、国王様じゃないよな?」


「うん、それは無いって聞いたよ。」


「それなら大丈夫だな。」


・・・・・・・


 オペラ鑑賞の日、ケイが自宅の馬車で迎えにきてくれた。ロビン先生とは、会場の前で待ち合わせをする予定だ。マクシミリアン様の話では、結構、僕がだれそれと歩いていたという告げ口が多いみたいで、特に大人の男性と歩いているだけで眼光が鋭くなるのだ。


 できるだけ、人目を避ける必要があるのだ。それにケイとロブとならば、僕が悪く言われるだけで、ロブが目立たないだろう。


「こんにちわ。マムちゃんいますか?」


 娼館ではなく、自宅のほうに来てもらうように言ってある。


「あらあら、いらっしゃい。マムは支度しているから少し待ってね。」


 ケイは、娼館に来た時とは、違いしゃちほこばっているようだ。僕は、いつもの舞台化粧というほど濃いものでは、無いがケイ相手ということで昼間にしては、濃い目のメイクを施している。


「ケイ様、お待たせいたしておりますぅ。」


「マムちゃん・・・きれい・・・。」


 ケイは、僕の顔を暑苦しい視線で見つめている。少しドキドキしながらも、平然とした態度を装う。


「ありがとうございますぅ。ケイ様も凛々しいですぅ。」


 ケイもオペラ鑑賞ということもあってか、かなりめかし込んできている。


「あ・・ありがと。では、乗って。」


 馬車に乗り込むのに手を貸してくれる。さすがに士爵とは言え貴族の坊ちゃんだ。礼儀作法が身についているようだ。普段のケイとは、大違いだ。


 馬車といっても、専用の御者がいるわけではなく、ケイが制御するようだ。僕が、乗り込むと御者席のほうから、ケイの声が聞こえ、馬車が走り出す。


 程なく会場に到着する。馬車を出る際にも、ケイが手を貸してくれた。そのまま、ケイは、馬車を置きに行った。待ち合わせ場所である会場の入り口は、鑑賞をする客達が整然と列を作っている。ほとんどが貴族らしく、あそこに1人で並ぶのは勇気が要りそうだ。やはり、ここでケイとロビン先生を待つことにする。


 女1人は、珍しいのか通りがかりに声をかけてくるナンパなにーちゃんが多い。ほとんどが、無視していると勝手にどこかに行ってしまうがタチの悪い人間も居るようだ。


「ねーちゃん、いくらだ?」


 なにを勘違いしているのか。僕を街娼と思い絡んでくる。


「わたくし、待ち合わせをしていますので・・・。」


 初めは無視していたが、なんども絡んできたのできっぱりと断る。


「こう見えても俺、子爵だよ。コレ見るのに付き合ってくれればいいだけだよ。相場の倍は、出すからよ。」


 無理矢理、その男が僕の手首を捕まえたそのとき。


「なにをしている!」


 この声は。


「こ、これは、陛下、ご尊顔を拝謁させていただきまして・・・。」


 助かった。が、マクシミリアン様か・・・。


「なにをしている。と言っている!」


「あの、その、この女性が迷っていたもので道案内をしようと・・・。」


「マム、そうなのか?」


 うーん、どう答えるべきなのか。下手な答え方をすれば、子爵が土下座させられて・・・その恨みがこっちにくるのだろう・・・。


「子爵、ありがとうございましたぁ。」


 僕が子爵に目で合図をするとさっさと逃げ出していった。ここは、ひとつ釘をさしておく必要があるだろう。


「マクシミリアン様。お久しぶりでございますぅ。」


「よかったのか。嫌がっているように見えたぞ。」


「マクシミリアン様。誰にでも土下座を強要するのは、困りますぅ。最初は、注意だけで十分ですぅ。」


「しかしだな。」


「マクシミリアン・さ・ま。私は、闇討ちが怖いのでございますぅ。私だけならまだしも、娼館の人間が狙われたら・・・。」


「そんなことがあったのか?」


「滅相もございません。マクシミリアン様の気持ちはありがたいのですが・・・。」


「そうか、気をつける。」


「お気遣いありがとうございますぅ。あっ、待ち合わせの方がいらっしゃいました。では、このへんで失礼します。」


 ロビン先生が男性の姿で現れた。この場に限って言えば、ケイのほうがよかったが、もう遅い。


「たしか、ウォーレス伯爵家のロブだったな。女性を1人で待たせては、いかんぞ!」


「はっ、申し訳ありません。」


「まあよい。マム、じゃあまたな。」


 マクシミリアン様は、あっさりと引いてくれた。釘を刺したことが効いたようだ。


 僕は、マクシミリアン様の背中に頭を下げた。


 程なくしてケイもやってきたので僕は、ケイとロブをそれぞれ紹介した。


「では、ケイ様、ロブ様。エスコートをお願いしますぅ。」


 僕は、そう言って差し出された2つの腕に両腕を絡ませた。


あっさりと引いたマクシミリアン様・・・。


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