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第12話 告白

お読み頂きましてありがとうございます。

「おまたせいたしました。本日はありがとうございますぅ。」


 心は鎮まったが、なんとなくぎこちない口調になってしまった。


「さっきの男は、なんだ?」


 怒りに目が眩んでいるのか、ロブだとはわからないようだ。わからないなら、そのまま放っておこう。下手にロブだとわかるとややこしいことになりかねない。


「はい。お客さまですか?ええ、声楽をやられているそうで勉強のために、デュエットして頂いたのですが・・・。」


「なんだそうか。君があんまり楽しそうにしていたので、新しい男が出来たのかと・・・。」


 僕は、マクシミリアン様のものじゃないんだけどな。


「・・・・・・。」


「悪かった。そんな顔をしないでおくれ。」


「・・・・・・・・・。」


「どうすれば、そなたを笑顔にして挙げれる?なんでも言ってくれ。な。」


「・・・・・・・・・・・・。じゃあ、マクシミリアン様ともデュエットしましょう。」


「それでいいのか。歌は下手だが、なんでもする。本当だ。」


 マクシミリアン様の歌は、本当に下手だった。楽器は上手いのになんでこんなに音痴なのだろう。不思議だ。しかし、仮にも国王なのだ。皆酷いしかめっ面をしていたが、誰もブーイングをあげないようだ。


 僕は、あまりの下手加減に思わず笑い出してしまった。それにつられるように、皆笑い出した。これは、これで楽しいかも。


「あー、楽しかった。ありがとうございますぅ。とっても楽しかったわ。」


「ひどいな!あんなに笑うことは、ないだろ!」


「でも、私を笑顔にしたかったのでしょ。願いが叶ったご感想は?」


「最悪だよ。人前でこんなに笑われたのは、初めてだよ。」


「よかったですね。初めてのご経験。」


「もういじめんでくれないか。」


・・・・・・・


 今日は、学園の授業だ。ロビン先生の個人授業もある。


「マムちゃんから聞いている?」


 きっと、告白の件だろう。娼婦は、普通どんなことでもお客様の秘密を喋ったりしない。もちろん、娼館の楽士もそうだ。マムが僕だから知っているのであって、別人なら知るはずがない。ややこしいから、無理矢理聞き出すことにしよう。


「えっと、なんのことですか?」


「知らないならいいんだ。」


「なんですか?言ってくださいよ。気になるでしょう。」


「だから、いいんだって!」


「わかりました。マムから聞き出します。先生が話していいよって言ったといえば、多分話してくれるでしょう。」


「・・・・・・・。君が好きなの。」


 先生は、ぼそっとつぶやいた。


「僕も先生のこと大好きですよ。」


「そうじゃないんだ。君が欲しいの。愛しているの。将来結婚してほしいの。」


「もしかして、愛の告白?」


「そう言っている。」


「本気みたいですね。こんなこと酔狂で言えないですもんね。でも、どうやって?仮にも伯爵令嬢ですよね。一般庶民ならまだしも、僕みたいな娼館の息子じゃあ。どうやっても無理ですよね。せいぜいが愛人止まり。」


「それは、大丈夫よ。父は重病であとわずかしか生きられないの。だから、父が死んだら私は、自由よ。誰に遠慮することもないわ。」


「・・・・・。なにから逃げているのですか?僕には、聞く権利がありますよね。」


 なにもかもが、あまりにも急すぎるのだ。もともと、ロビン先生は、男嫌いのようなところがあり子供の僕にターゲットを絞るのもわからないではない。


 だが、僕も娼館の息子だから、女性の視線がどういった意味をもっているかは、直ぐわかる。これまで、先生からそういった視線を受け取ったことが無いのだ。しかも、今現在向けられている視線もそう言った意味で捉えられない。信じろというのが無理があるのだ。


「はぁー。やっぱり、見破られたか。あのね、私は処女なの。これがどう言った意味かわかる?」


 僕は首を振る。意味がわからない。なんで今そういった話になるのかさっぱりわからない。


「王族に嫁ぐには、処女であることが絶対条件ということならわかるよね。」


「え、では。」


「ええ、そうよ。マクシミリアン様の妃候補として育てられてきたのよ。私は君のことが本当に好き。でも、もっとマムのことが好きなの。あの娘が悲しむ姿の原因になるのは、絶対嫌。」


 僕がマムを演った影響がこんなところに出るなんて。


「貴方に私の処女を奪って貰えば、私の兄弟達は、何も言えないわ。だって、マクシミリアン様の大切なマムの従兄だもの。妃候補の処女を散らしたと抗議の声を上げることもゆるさないわよ。きっと。それに、私達の結婚だって後押ししてくれるはずよ。」


 あの御人好しなところもあるマクシミリアン様ならありえるかもしれないが・・・。あの兄弟たちならば、事故に見せかけて殺すなんて芸当もするだろう。簡単には頷けそうにもない話だ。


「わかりました。つらいことを言わせてしまって申し訳ありませんでした。お時間を頂いてもよろしかったでしょうか?」


「うん。よく考えてね。どんな結果がでようと私達の関係は、なにも変わらないから。」


 個人レッスンが終るとすぐに辞去してきた。


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