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第11話 楽しいデュエット

お読み頂きましてありがとうございます。

「もういっそのこと国王様に潰してもらおうかしら、伯爵家。ねえ、そう思わない?」


「はあ。」


 なんと言って慰めればいいのだろう。気のきいた言葉が思いつかない。その間にも馬車は、娼館に戻っていく。あの楽しかった1日がこんな終り方なんてあんまりだ。そうだ、約束を守ってもらおう。


 娼館に帰り着くともう夕暮れ時だった。


「不愉快な思いをさせて、ごめんなさい。いったい、どうやって謝ればいいの。」


「じゃあ、こうしましょう。約束通りデュエットしましょうよ、この娼館で。先生は同伴のお客様で1回目のステージだけでいいから、いっしょに歌いましょうね。」


「そんなことでいいの?」


「お願いできますか?」


「もちろんよ、喜んで!」


・・・・・・・


「ただいまぁ。ああ、フローラ!」


「おかえりなさい。」


「同伴出勤してもらったわぁ。少し早いけど、入れてねぇ。こちら、ロブさん。」


「ロブです。よろしくお願いします。」


「まあまあ、この娘がわがまま言ったみたいで、お時間大丈夫でした?」


「ええ、もう少しマムとお話ししたくて御伺いしてしまいました。」


「ロブは、声楽もできるのよ。素敵な歌声だったわ。それで、娼館でデュエットしてもらおうと連れて来たの。フローラお願いね。」


「はいはい、わかりました。じゃあ、支度してらっしゃい。やはり、ステージ用に衣装や化粧を替えなくてはね。」


「わかってるってぇ。じゃあ、ロブ待っててね。」


 母屋に行き、軽くお風呂に入ると早速、化粧を始める。ここ数日で、化粧も1人でできるようになったし、衣装も自分で着れるのだ。


 衣装もマクシミリアン様が沢山プレゼントしてくれるが、今日の衣装は、母から小遣いとは、別に貰っているギャラで初めて買ったお気に入りの衣装だ。


 母屋においてあった夕食を軽くつまみ、最後に仕上げの口紅を塗り、鏡で最終点検。よし、これならOKだ。可愛くできました。


 母がお話し相手になってくれると思って置いていったのに帰ってきたら、ロブは、娼婦のお姉さん達にモテモテだった。


 中身が女性だからギラギラしたところが無いのにこれだけ美男子なのだ。モテないわけがない。ロブも一応にこやかに応対しているが、お姉さま方の猛攻に顔が引き攣っていた。そろそろ、助けるか。


「はいはい。私のお客さまなのぅ。お相手ありがとうございますぅ。」


「えー、いいわね。マムのお客はいい男ばっかり、少しはこっちに回してよ。」


「ロブとマクシミリアン様は無理だと思うよ。あとは、お姉さま達の腕次第でしょ。」


「えー、この人もロリコンなの?こりゃだめだ。」


・・・・・・・


「ごめんなさい。ロリコンにしてしまって。でも、これなら彼女達に個室に連れ込まれる可能性も小さくなると思うの。」


「連れ込まれないって言ってくれないんだね。」


「だってぇ、好みのタイプが娼館にきてくれたら、何が何でもゲットしたいって、いつも言ってるもの。」


「はあ。とにかく、助かったよ。ところで、マムって、ユーティーの従妹って聞いているけど間違ってない?」


「そうですねぇ。どっちかというと師匠という感じで、あんまり親戚のお兄ちゃんて感じじゃないですねぇ。」


「そうなの。好きじゃないの?」


 どういう意味だろう。まさかね。


「マクシミリアン様と同じ質問するんですねぇ。もしかして、私愛されている?女性同士かぁ。どういうふうにするんですかぁ?」


「いや、その・・・あの・・・。」


「はっきりおっしゃって!」


「わ・わたし、ユーティーが・・・好きなのかな・・・?」


 こんなこと聞き出してもいいのかな。次の授業のときに真っ赤になりそう。


「なんで疑問形?へぇーそうなんだ。もしかして、伝えてほしいの?」


「・・・・・・・ダメ。それだけは、ヤメて。」


 もう遅いけど。物凄く真っ赤になってて可愛い。僕も男の子だな。もっと虐めたくなっちゃう。まあ、この辺にしておこう。嫌われても嫌だからね。


「ほらほら、そろそろ出番よ。このお水を飲んで、頭を冷やしてね。」


・・・・・・・


 デュエットするのが楽しくって、いつもの倍以上歌っちゃった。いつもは、ひとりだけど、ふたりならばといろいろ試せそう。もっと誘ってみようかな。


「お楽しみだったようですね。」


 あちゃ、マクシミリアン様だ。席に戻るといつのまにいらっしゃったのかマクシミリアン様がいつもの席に座っていた。うーん、不味い不味いぞ。どうしよう。


「では、俺はこの辺で・・・。」


 ああ、折角仲良くなったのに、帰っちゃう。


「ま、待ってお送りするわ。」


 僕は、マクシミリアン様のほうを見ないようにしながら、ロビン先生を玄関までお送りする。


「今日は、ありがとうございました。とっても楽しかったですぅ。ぜひまたいっしょに歌ってください。」


 心を鎮めながら、一生懸命に喋るがつい、涙が湧いてくる。


「ね。泣かないで。うん、またくるわ。こんどは1日中でも付き合ってあげるから、泣かないの。」


 なんであのタイミングで来るかな。折角の楽しい気分が台無し。先生をお見送りし、まずは、母のところへ戻った。


「マクシミリアン様って、今日来る予定じゃなかったよねぇ?」


「ええ、急にマムの顔が見たいと仰って来られたのよ。」


「このまま引っ込んじゃダメだよね・・・・。少し時間を頂戴。お化粧を直してくる。」


「わかったわ。そう伝えておくわ。できるだけ早くね。」


「わかった。」


 僕は、メイクルームに入ると鏡を見る。酷い顔だ。一度フェイスオフした上でメイクをやり直す。ぜんぜん気が乗らないが、仕方が無い。さあ行くか。


「マム、ダメよ。そんな顔で行かないの。マクシミリアン様は、貴女に逢いにいらっしゃってるのよ。そんな引き摺った顔で行かないの。」


 そうだ。今の僕は、マムなんだ。マクシミリアン様が大好きなマムなんだ。自己暗示を掛けつづけるとようやく心が落ち着いてきた。


「もう大丈夫そうね。じゃあ、行ってらっしゃい。」


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