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第10話 王妃を輩出する名誉

お読み頂きましてありがとうございます。

「ねえ、マムに相談なんだけど・・・。」


 学校から帰ってくると、普段は娼館の準備に忙しい母が母屋に居た。どうやら、帰ってくるのを待っていたらしい。


「フローラさん、なんでございますかぁ?」


 咄嗟にマムの口調になる。もうこれにも慣れて、マムと聞くと直ぐに出せるようになっている。


「今度の休みの日に予約を入れてもいい?」


「また、国王様ですか?」


 あれから、マクシミリアン様は、3日と置かずに娼館を訪れているのだ。


「いえ、ロブと仰る方なんだけど、正式に謝罪したいと言ってきたのよ。なにか心当たりある?」


 ロブと言えば、ロビン先生が男装しているときの姿だ。娼館では、当然男性ばかりで普通に接してくださるのは、マクシミリアン様だけで他の方はマクシミリアン様の話ばかり聞きたがるので、正直飽き飽きとしていたところなのだ。中身は女性だとわかっているから、安心してお喋りできるのも楽しいかも。


「うん。大丈夫よ。でも、国王様は、大丈夫かなぁ?その日は、予約入っていない?」


「大丈夫、入っていないわ。それに、昼間に郊外のレストランに招待したいっていう話なのよ。」


 そういえば、いくつかレストランを持っていると言っていたな。あの港町のレストランも美味しかったし。期待できるかも・・・。


「受けるよ。その話、進めておいてくださいますぅ。でも、マクシミリアン様を優先にしないと不味いのよねぇ。」


「そこは、相手の方も了解して頂いているわ。」


・・・・・・・


「マム様、お迎えに参上しました。」


 御者は、連れていたがロビン先生、いや、ロブさんが直々に迎えにきてくれた。ちょっと見、女性が男装しているように見えない凛々しい青年ぶりだ。


「ご招待ありがとうございますぅ。」


 僕が馬車に乗り込むとロブさんは向かい側の席に乗り込んだ。乗り合い馬車だと進行方向を横向きに座るが、時折、席が進行方向と逆にしか空いていない場合がある。そういった場合は酷く気持ち悪くなったりするものだがロブさんは大丈夫なのだろうか?


 そこで思い切って声を掛けてみる。


「ロビン先生、こちら側に座りませんか?」


「私のことをユーティーから聞いているのね。ありがとう。では、そちら側に座らせていただくわね。」


「先日は、すみませんでした。まさか、師の先生とわからなかったものですからぁ。」


「謝らないで。私のほうこそ、大変失礼なことをしてしまって、まさか、ユーティーにこんな可愛いお弟子さんがいらっしゃるなんて思わなかったもの。ごめんなさいね。許してくれる?」


「そうですね。もうこれであれは、無かったことにしません。あんなことをさせてしまって言うのもなんですけど。」


 マクシミリアン様が土下座なんかさせるから、微妙なわだかまりが残りそうで嫌なのだ。だからそう提案する。


「そうさせて頂いていい?」


 ロビン先生の手を握り締め、にこやかに笑いかけた。


「もちろんですぅ。」


 仲直りもすみ、しばらくするとレストランに到着した。


「ジビエにしたけど、大丈夫だったかしら。」


「はい!大好きですぅ。」


・・・・・・・


 楽しく歓談しながら、昼食を済ませた。


「ご馳走様でした。このレストランにも、ホールがありますよね。これって、先生が歌われるためのものなんですか?」


「そうねぇ。リクエストされれば私がドレスを着てゲストよって振りをして歌うこともあれば、オーナーが男性パートで歌うこともあるのよ。でもリクエストのほとんどは、父だからなかなか歌う機会は無いわね。」


「えーもったいないですぅ。先生の歌声を聞いてみたいな。」


「では、リクエストにお答えして、まずは私がアカペラで男性パートで歌うから、後でデュエットしましょう。」


 やっぱり先生の声は素敵だ。男性パートでもこんな透き通った声がでるんだ。僕ももっと精進していかなくちゃね。先生が歌い終わった。次はデュエットだ。


 僕が手が痛くなるほど拍手をしていると。後方から、パンパンパンと拍手をする音が聞こえた。


「なるほどプロは、流石に違うね。歌だけで喰っていってはどうだい。こんなレストランなんか必要ないだろう?」


 僕が振り向くと少しだけ顔立ちが先生に似た男が立っていた。


「なんですか、お兄様、嫌味を言いにきたのですか?」


 先生が嫌な顔をしている。今までの楽しい雰囲気が壊されてしまった感じだ。


「いやいや、褒めにきたのさ。よくやった。よくその小娘を落とせたのだな。偶には役に立つではないか。その顔。」


「私の客人に失礼なことを言わないで。ここは、私の店よ。出て行って!」


「いやここは、伯爵家の店だ。だれがなんと言おうともな。伯爵家のものは、私のものだ。」


「まあ勝手に言ってれば!すでに所有権は、私のものなんだから!」


「貴様のその身体も、伯爵家のものなんだ。結婚相手も伯爵家が決めるだろう。どうあがいても、このレストランの所有権は、揺るがないさ。」


「さあそれは、どうかな?今の内に売って自分の好きなものを買えばいいのだけだわ。バカだわね。」


「この兄をバカにするのか?まさか、父上に頂いたものを転売しようなんて・・・。」


「できないって思うわけ?」


「まあいい。その小娘を引き渡したまえ。邪魔なんだよ。その娘が居ると王は、どの貴族からも娶らないからな。まったく、あのロリコン王族め。」


 ロリコンというところだけは、賛成するよ。


「嫌よ!まさか、伯爵家を潰すつもり?今、この娘に手を出せば確実に潰されるわ。それに私の名前で連れ出しているのよ。それだけでもう終わりだわ。」


「ちっ、そうなのか?まあいい。小娘、もし王に請われてもお前は自分から断るのだぞ。でなければ、命は無いと思え!わかったな。」


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