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第9話 王妃と後継者

お読み頂きましてありがとうございます。

 母の話によるとマクシミリアン様は、遅い時間にいらっしゃるということだった。


 今日こそは、歌と踊りだけですむだろうと思っていたのだが、貴族のご子息に指名された。それも、マクシミリアン様に見られたときのことを考慮してか、1対1では無く集団だった。


 ちなみに見習い楽士のリリアンも同席している。リリアンは、マクシミリアン様が通っていることを聞きつけ辞めたいという発言を翻した。マクシミリアン様を狙っているのだという。もしかすると、手をつけてくださるかも、側室として迎え入れてくださるかもと夢みたいなことを言っている。


 まあ、僕としては、僕のかわりにそうなってくれる方が助かるのだけれど・・・。


・・・・・・・


「へぇ、君が国王様が固執してらっしゃる娘か。確かに可愛いけど、周囲の娼婦達からすると見劣りするなぁ。胸は、真っ平らだし、まだ隣の娘のほうが抱き心地がよさそうだよね。」


 うん。僕もそう思う。鑑賞するだけならまだしも、この僕をほしいなんて酔狂この上ないね。


「まあとにかく、早く結婚して後継者を作って差し上げてよね。」


 どうも彼らの話しぶりだと、僕とマクシミリアン様の噂に対して貴族は、真っ二つに割れているらしい。あくまで、侯爵家や伯爵家から王妃を出したいグループと、とにかく相手は平民でもいいから後継者を作り国の安定を願うグループ。


 彼らは、後者のグループに属するらしい。


「でも、勅令のこともありますし・・・。」


「国王様も国王様だよね。なんで、あんな勅令なんか出したんだろう。でも、関係ないよ。君が後宮に入ることさえ、了承してくれれば。あの勅令もこと夫婦間においては、例外としているんだから。」


「え、そうなの?」


 それって、ヤバイんじゃ・・・。もし、権力で後宮入りをごり押しされたら、逃げ道がなくなるじゃないか。


 隣でリリアンがテーブルの下で小さくガッツポーズするのが見えた。


 リリアンは、僕より1つ下の12歳だ。この店にマクシミリアン様が通われているのを知ってから、断然ヤル気を出している。もちろん、処女らしい。マクシミリアン様さえ気に入れば後宮に入るのは、なんら問題はない。


 彼らは、その話がしたかっただけらしく。三々五々、娼婦のお姉さま達と個室に消えていった。


 マクシミリアン様は、2回目の歌と踊りを披露する直前にいらっしゃった。


 なぜか、酷く疲れている様子だった。


「どうされたのですか?あとで肩でもお揉みしましょうか?」


「うん、お願いしようかな。でもまずは、君の歌声を聞いて元気になるとしよう。そろそろ、時間だよね。いってらっしゃい。」


「では、後ほど。」


・・・・・・・


 歌と踊りの披露が終ると、マクシミリアン様は、立ち上がって拍手してくれた。皆それに習うかのようにわざわざ立ち上がって拍手してくれる。スタンディングオベーションだ。コンサートホールでも、やたらめったに見られない光景だ。


 もちろん、僕も初めての経験だ。というか、師匠の僕を差し置いて、弟子が先に経験するというのは、どうなんだ?どちらも自分なのに、なんだか悔しい気がする。


 僕がステージから降りていくと、マクシミリアン様が手を広げて待っていてくれる。あの胸に飛び込めってことなんだろうけど、絶対なにかイヤらしいことをされるに違いない。


 僕は、気づかなかった振りをして、直接マクシミリアン様の方に向かわず、ステージ袖から後方に回り込み、元の席に付いた。


「すばらしかったよ。」


「ありがとうございますぅ。」


 席についたらついたで、今度は、膝枕をせがまれる。まるで、子供みたいだ。


「きゃっ!」


 まあ、それくらいならと了解したのが不味かったらしい。僕の膝の上に頭を乗せたまでは、よかったのだが、まるで僕の腰に抱きつくようにお尻と腰の中間辺りに手を差し入れてきたのだ。


「もう、なにをなさいますの?」


 僕が抗議するが、あっという間に寝付いてしまった。本当に疲れていたらしい。狸寝入りかもしれないけれど。


 しかたないので、マクシミリアン様の肩や目元などに手を置いて癒していく。僕の光魔法の得意技の1つで手を翳すとその部分暖かくなるのだ。暖めながら擦るだけで、大概の肩の凝りや目の疲れは、癒されるのだ。


「君は、光魔法の使い手なのだね。俺といっしょだね。」


 やっぱり狸寝入りか。そうこの国の王族の血統は、光魔法だという。詳しい内容は秘密だが、王も王弟も部位欠損どころか、半径1キロの広範囲治癒までできたという。


「俺は、そういったコントロールは難しいんだ。疲れると弟がよくこうやって擦ってくれたよ。俺の心も身体も癒してくれる存在なんて、もう出会えないと思っていたのに・・・。」


 先の戦争で、王も王弟も戦場で活躍したそうだが、王弟は即効性の毒矢で亡くなったらしい。


 マクシミリアン様は、そう言うと本当に眠ってしまったようだ。そんなに疲れているなら、学園にもここにも来ずに王宮で休めばいいのに・・・。


 隣で羨ましそうにしていたリリアンに言って、なにか掛けるものをもってきてもらうことにした。さすがに僕の能力だけでは、マクシミリアン様の身体をすべて温めることはできないのだ。このままでは、お風邪を召してしまう。


「あらあら、本当に子供みたいね。」


 母がやってきて、マクシミリアン様に薄布を掛けてくれる。


「おっきな子供ですぅ。」


「もう、お母さんの心境?」


「お母さんとしては、こんなに無理してほしくないんですけど。」


「いっそのこと、後宮に入って癒して差し上げれば・・・。」


 母は、ニヤニヤと笑っている。僕は、口を突き出すしかない。


「もう、人事だと思ってぇ。」


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