僕にとっての非日常
僕が腕を失ってから二か月が経った。
僕はCSGの支援もあり、大きな病院で治療を受けさせてもらえることになった。
スポーツサングラスの男も何とかっていう表彰を受けて今は戦場からかけ離れた場所で暮らそうとしているらしい。確か警官になったと聞いている。
僕の身体も安定した状態になったため色々聞かれる。
名前やどうして少年兵になったか等を聞かれる。
僕には名前がなかった。いつも番号で呼ばれていたから。
今日はとてもいい天気だ。窓から流れ込んでくる風はどことなく春の匂いがする。
真っ白な病室から青い空を眺めているとドアを開ける音がした。僕の主治医だ。
「やぁ、調子はどうかね」
少し歳のいった男だが医者としての腕は確かだ。あの出血量の状況の僕を生かしてくれた。
「はい。おかげさまで」
僕は表情を作れなかった。笑顔を作ることが今まで無かったからだ。
「今日は何の話をすれば良いですか?あの反政府軍のことは何も知りません。言われることやっていただけです。自分のことも分かりません」
先生は困った顔をした。こんな大きい病院で少年兵の相手はしたことがなかったのだろう。
「いや違うよ。今日は君の里親になりたいという人たちを連れてきたんだ。」
親という久しぶりに聞いたほんのりと温かみのある言葉に僕は頭が回らずボーっとしてしまった。
「じゃ、入ってください。」
やっとこの少年が安心できる環境になりましたね。話にはないですが、十年以上の苦節な日々を暮らしてきた彼は救われたのです。