人の善意
僕の後ろにいるどこで拾ったか分からないスポーツサングラスをいつもかけている金髪の男が僕の肩を叩いた。❛行け❜彼は僕にそう合図を出した。
彼の額には明らかに暑さとは別の汗があった。
僕にはわからない。僕たちは仲間だ。だけど、命を張って助けられるほどの絆は無い。むしろいつも大人たちに暴力を振られているのが僕たちだ。
しかも、彼は今回のミッションで初めて顔を合わせた。
僕にはどうすればいいか分からなかった。すると彼は勢いよくその場に立ち上がり深く息を吸った。その場にいたCSGの団員も含め誰もが彼を見た。
「ここに少年兵がいる!引き取ってやってくれ!」
CSGの団員は護身用の銃を下ろし、周囲に目をやっていた。
「ばっばか…」
隊長は思わず立ち上がり彼に銃を向けた。
「何してくれてるんだ!ここまでやってきて目標まであと少しなのに!お前のせいで築き上げていたものが全部パーになるじゃないか!」
この状況で計画を話そうとしている…。まぁCSGは関係ないから大丈夫なのだろう。
「少年兵の三人ぐらい引き取られてもこの計画は成功するだろうが。ここにいる三人だってここより普通に暮らしたほうが幸せに決まってるし、アンタみたいにならせたくない」
喧嘩腰の口調で彼は隊長に眉を細めながら言った。
「何も分かっていない若造が!」
隊長は血管が浮き出るほど怒りを露わにしていた。CSGの連中はただの支援団体で戦闘には参加しないし、こちらから手を出せばメディアからの評判にも関わる為戦闘行為はしない。茫然と突っ立っているだけだった。
「コイツ等がいないと囮役は誰がやるんだ?!」
僕たちは戦闘ではなく囮役の任務だったのか…。どうりで隊長と目が合う訳だ。ここは団体に引き取ってもらう理由が強められたし、反政府軍へのメディアの風当たりを強める言い回しだった。
「そこの反政府の兵士!動くな!子供支援団体の権限において、少年兵を保護する!異論は認めない!」
やっとCSGの団員が口を開いた。これで隊長が抵抗をしなければ僕たちは助かる・・・。
「くそ!貴様の責任だ!」
銃口を彼の頭部へ向ける。
まずい・・・!
人の善意とは時として人の苦になることがある。
それらは勘違いや考えの違いから出てくるものである。だからこそ現代人は人にどう思われるか、やっていいことなのかが分からなくなり人との接する力
が弱くなってしまうのではないだろうか。失敗を恐れずに何事もやることが大事なのである。