人には様々な問題がある
隊の列の一番前のいわゆる隊長様の胸には錆びついた銅の蛇の紋章が僅かに月光を浴びて濁く輝いている。
蛇の紋章には意味がある。最下級の俗に言うC級クラスの紋章。しかも、銅ときたら更にその下の階級ということだ。その下で動いている僕達は″駒‶でしか無い。
散々こき使われ無造作に捨てられる❛戦場の捨て駒❜。それが僕たち最下級の一生の背負っていかなければならない役目。
上の階級の人間は既にヒトではないと話には聞いている。
体を弄繰り回されて。一説にはサイボーグ。もう一説には超人なんて呼ばれているらしい。僕のいる立場では会う事すら出来ないし、見ることすら出来ないだろう。第一に噂ってだけで信じていない。なんかの兵器が人に見えてそう言っているだけだろう。
毎日生きているのが精いっぱいの僕達にはそんな話を気にしている時間も気力もない。考えるのは今どうすれば生きていられるか、そしてたった一つのパンで三日分の配分をどうするか。これだけだ。
友達がすごく悩んでいる問題が聞いたらそんなことで悩んでいるのか。と、なる場合が多々ある。例えば思春のニキビなんかもその一つだ。大人から見ればそれは青年である証だし、大人になれば無くなることを知っているのでそう大した問題とは見ないだろう。だが、本人にとっては解決したくても中々解決できないとても大きな難題であるのだ。ニキビが原因で勉強がハカドラナイ。学校に行きたくない。人に会いたくないという人を私は見てきている。
この物語の主人公は自分より上の階級の奇妙な噂を聞いてはいるが生きるのに精一杯で考えることも少ない。だけど余裕があればそんな話も思い出せる。やはり人間は目の前の問題が一番に解きたい生き物なのである。