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エキップテクノロジー   作者: RED
第一章 代わり
20/20

中央ビルにて

作戦は至ってシンプルだ。正面から入り清掃業者を偽って受付を済ませ、エレベーターを使って 60階へ行くだけだ。

「よし、行くぞ」

俺は声をかけて気合いを入れた。

さすが中は広くて人がたくさんいる。中に入るにはあの受付を済ませ尚且つ改札を通って行くみたいだ。

受付嬢に挨拶をした。

「やぁ、俺達ここを掃除しに来たんだけど…いいかな ?」

受付嬢は俺達の服装と服についている業者名を確認した。

「少々お待ちください。」

しばらくして受付嬢の確認というものが終わったらしくどうぞ、とお許しが出た。

今頃本物のここに来る予定だった清掃業者は他の仲間が片付けてくれているはずだ。

「どうも」

そして、社員専用の改札は予約が済んでいるお客様用に開けられた。わざわざドアを開け泥棒にお茶まで出してくれたこの家主にお礼が言いたいところだが先を急ぐとしよう。


エレベーターのスイッチを押して呼ぶ。しばらくしてエレベーターが来て乗り込んだ。

するとランディーの口が緩んだ。緊張が解けたんだろう。

「こんなに簡単にし…」

俺は口を塞いだ。ここには監視カメラも、もしかしたら録音機もどこからか俺達を見張っているかもしれない。何故ここの建物に数十期のエレベーターとたった一カ所の非常階段しかないのか分かった気がする。きっと防犯対策だろう。

俺はランディーのネームプレートを見た。

「そうだなマルコ。今日はパパッと終わらせてはやく切り上げよう」

俺は目で合図を送った。やめておけ、と。

マルコの名を借りているランディーは静かに頷いた。


45階でそれまでスムーズに目的地まで向かっていたエレベーターはゆっくりと停止してドアが開いた。

乗ってきたのはアジア系の女性だった。当然ながら必要とあらば殺す。


「こんにちは」

笑顔で挨拶をされたので返す。マナーだ。

「こんにちは。もう暗くなるのがだいぶ遅くなりましたね」

「そうですねぇ。もう 4月になるからですかね?」

そんな事を言っているとエレベーターが大きく揺れた。

「 !?」

電気が消えてエレベーターは停止した様だった。

「おい、ランディー大丈夫か ?」

ああ、と苦し紛れの返事が返ってきた。

女性が立とうとしていたので止めた。

「また揺れるかも知れないから立たないで座っていた方がいいですよ」


しばらくして薄暗く赤いライトがエレベーターの中を照らした。

「よ、よし。とりあえず非常用の連絡ボタンでも押してみますか ?俺一度押してみたかったんですよね」

おどけて見せたが二人に苦笑いされてしまった。


「ダメですね…。とりあえずこのドア開けてみましょうか」

コクっと女性が頷いた。

「ランディー」

「あいよ」

二人が一緒にドアを両サイドから力尽くで引いた。ドアの上半分だけ上の階の下半分のドアで繋がっていた。

「これ行けるんじゃないですかね ?」

カタカタと女性は震えていた。

「取りあえず出ましょうか。安全確認の為に先に出ますね ?」

またもやコクっと頷かれた。声が出ないようだ。

手を掛け足を掛けよじ登るように外に出た。


「ん… ?」

目の前には信じられない光景が広がっていた。

エレベーターから少し遠くの壁の一部がスッポリ消えていたのだ。消えている部分の周りには焦げ付いたコンクリートの壁。

ロケットランチャーか何かか・・・ ??

明らかに人為的なものだな。俺はすぐに女性に上がってくるようにジェスチャーした。

「さぁ」

俺が手を差し伸べ後ろからはランディーが足を支えた。


ランディーも登って来たところで辺りを見回した。

「ランディー」

ランディーに声を掛け腰にあるリボルバーのコルトパイソンを取り出した。


それを見て明らかに動揺する女性。鼻と口を覆うようにして驚いていた。


まぁ・・・仕方ないよな。パッと判断してもこれはテロだ。自分を守る為に銃を出すのは当たり前だ。


銃を構えながら進んでいった。


別にこの女性はどうでも良かったがやはり置いていく訳にはいかないし清掃業者の件もこれでヒタ隠しに出来てまた別の作戦でメモリーを取る為に利用できるかもしれないので連れて行って仲間意識を植え込むことにした。


ランディーが非常階段を見つけてクイッと首で指示した。

俺は行く先に銃口を向けながら階段を上がろうとした。

「何故下に行かないんだ ?明らかに屋上から脱出するのは不可能だろう ?」

「いや、ロケランをブッコんでくるような奴らだぞ ?下はもう完全に制圧されていると思う。出来るだけ上に上がっていればもしかしたら安全かもしれないだろ ?」

そ、そうだな…とランディーが納得し、先へ進もうとした時だった。

遠くから大人数で階段を上る音がした。

「ダメだ !急ごう!!! 」

来た。そう思った。



下からは黒をベースとした迷彩服を着てヘルメットを被りゴーグルをしている男たちが階段を上って来た。肩には熊の口の中に人の頭蓋がある銅のワッペンが縫い付けてある。

「ヴォイスコチェルトだ・・・ !」

その名も悪魔の軍隊。


まさかスプリングフィールドに商売しに来るとは聞いていたがよりによってこのタイミングでココを狙うとは。


その先頭にいる兵士のゴーグルの奥の瞳を見てしまった。

その兵士は息を大きく吸った。

「アゴーイ!!」

何を言ってるか分からなかった。

しかし、その掛け声とも奇声ともとれる声をきっかけとし後ろに並んでいた兵士達が銃を構え始めたのだ。

「行け!上れ!!」

先に女性を上がらせ、ランディーの尻を叩いた。

死に物狂いで階段を駆け上がった。


後ろからは銃声が鳴り響く。


「ランディー、その女性を頼む!」

「わ、分かった!」


俺は振り返り、ポケットに手を突っ込んだ。


小遣いで買った、単に格好いいと思って買ったグレネード一個を取り出した。


悪魔の軍隊か……生きて帰れるのか?

そんなことを考えながらピンを外した。


「時間稼ぎにはなってくれよ…」

衝撃で爆発する危険があるため優しくだが、それでいて下にいる悪魔に聖水をかけられるだけの力で投げた。

そして走る。小学生がムキになって階段を何段も飛ばして上がるように。


先程より小さな爆音が鼓膜を揺らし銃声が止んだ。

ランディー達を追いかけるように階段を尚、上がった。


階段を上がりながら思った事は


絶対に助からない


と言う言葉だけだった。



しかし、生き残らねばならならない。

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