仕事着
二階ほど降りただろうか。 タクティカルベストや伸縮素材の全身タイツの様な、いわゆる戦争に必要な[服装]がずらりと並べられたフロアだった。そこはさながら戦争屋の服屋のようだ。ファッションセンスがない僕でもわかるセンスのない色のベストや防弾タイツ。確かに実用には色は不必要なものだ。とはいえ灰色では見つかりやすいだろうと僕は思ったが今の僕には紙っぺらしか身に付けていない。なんでもいいから早く着たい。
僕は吸水性の良いパンツに防弾性の全身タイツ、ベストにブーツを身に付けた。
ここは世界に名だたる軍事企業の中枢の場所だ。
あとは奴等に対抗するべき銃が必要だ。
前の僕が扱っていた銃は敵の土地へ踏み攻め入る銃だった。今の僕が必要な銃はお義母さんやあの警備員を護る為の銃が必要だ。
残念ながらこのフロアは人体を護る研究をしているだけらしく銃器はなかった。さてお義母さんがいたと推定されるフロアはここより5階ほど下の階だ。いくら警備員が守っているからとはいえ女性の脚力では追いつかれ兼ねない。先を急ごうと先程の階段へと戻ろうとすると出入り口にバンダナがあった。そういえばここへ来るときもバンダナで腕の出血を防げた。何枚か持っていこうとベストのポーチを開けようとするとないはずの腕と打っていない頭に激しい痛みが走った。あまりの痛みにうめき声が漏れてしまう。
「うあっ……」
今までに受けたどんな拷問の訓練に耐えた僕でも驚く痛みだった。あの薬か…それとも過度のストレスか。恐らく前者である。僕が死ぬ前にせめてお義母さんを救わなければならない。バンダナを拾ってポーチにしまい先を急ぐように壁の力も借りながら階段を下りていく。