終章
劇的な事があった日の翌日。
「――まさかの通常運行。流石というべきかどうか悩むところね」
早朝の教室。聞き慣れた声に優実はそちらを見て、ぎょっとした。
「そういうそっちは特別運行だね。どういう風の吹き回し?」
「昨日言ったじゃない。生活態度を改めてみようかなって」
「で、実践したと?」
「そういう事。――おはよう、優実」
「おはよう、英子」
ちょっと変わっているが、そこまで変わらないやり取りを交わす二人。
「――ん? 優実、ちょっとお疲れていない?」
英子は自分の席につき、優実の顔を見てそんな事を言い、
「……もしかして、あの後も何かあったの?」
鋭く的確に言い当てた。
「うん。まあ、色々とね」
優実は不足気味だった予習の手を止めずに答えた。
「色々って……鈴木さんの事以外でも何かあったの?」
「え? ツッコミそこ?」
「そこよ。私は鈴木さんの事だけだと思って聞いたもの」
「墓穴掘った……」
「平気よ。どうせ私以外気付かないだろうから」
「安心して。英子以外に気付かせないから」
「頼もしい事で」
「これからもっとそうなるよ」
「神様に会うために?」
「後、英子や周りに迷惑をかけないために」
「そ。――ま、死なない程度にやればいいんじゃない?」
英子はそう言って、携帯ゲーム機を取り出し、遊び始めた。
優実は言及して来ない代わりに、言及しない事にした。
代わりに――、
(さてはて、今日はどうなる事やら……)
いつも通り、劇的な事が起こる事を夢に見るのだった。