序章
信道優実は、神様を探している。
その背景に、強い衝動や動機、理由は一切無い。
少年漫画かライトノベルの中に探せばありそうな臨死体験をし、そういう存在がいる事を知ってしまったからではなく、だからと言って生れ落ちた家系が、人知れず邪悪を打ち倒す事を生業としていたというわけでもない。
あるのは、些細な疑問。
子供時代に誰しも一度くらいは思い描いただろう、素朴な疑問。
――神様はいるのだろうか。
それを知りたいがために、優実は神様を探している。
普通ならば、そのような夢見がちな事は、成長に伴って現実の理不尽さや無情さ、様々な事を学び、己を高めていく内に思い出となっているだろう。
でも、それは成長し、大人になってからの事だ。
優実は、未だ夢の途中にいる。
普通ならば、とうに捨てているだろう途方も無い夢を持ったままで。
だから、未だに夢に見ている。
それを実現させるべく、必要だろう思える努力をし続けている。
何分前例が無い事であるため、自力で関連事項の情報収集を行い、それを取捨選択し、試行錯誤を重ね、多くの知識と技術を尽きぬ情熱を胸に蓄えた。
そんな自分が歪んでいる事を、優実は自覚している。
スポーツ選手や宇宙飛行士ならば、まだ現実味はあるだろう。
しかし、子供心にも叶わない事が分かる事をひたすらに追求し、そのために必要かどうかも分からない努力をする事――歪んでいる事この上ない。
だから、両親や友達には気取られぬように気を使っている。
こんな自分に育ってしまった両親のために。
こんな自分と友達でいてくれる皆のために。
歪み、狂っているからこそ、その尊さに感謝する事を忘れない。
でも、配慮したところで、現実は無情であり、手がかり一つ掴めていない。
だが、捨てず、諦めず、意地も張って続けて良かった――これから先、死を迎えるその瞬間まで、優実はその日の事を思い返す事になる。
何故なら、その結果――。
その日、優実は死神という存在に出会えたのだから。