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朗読家になれない朗読人  作者: 白餅りんね


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08 サイドストーリー

ーー能力者が生まれる街。


それは、力を秘めた“能力者の卵”たちが、この街にいる“相手の力を分析する能力者”の導きによって、自らの力を認識し、能力者として歩みを始める場所だった。


だからこそ、冒険者たちはこの街を

「能力者が生まれる街」

と呼ぶのだ。


そして――

僕もまた、能力者としての一歩を踏み出そうとしていた。


ーーもっと自分を知りたい。

能力について、より深く理解したい。

その想いが、胸の奥で静かに燃えている。


僕は男に感謝と別れを告げ、再び旅に出た。

朗読家になりたいという、変わらぬ夢とともに。


忘れてしまった記憶。

自分の中に眠る力。


それらすべてを抱えて――

“自分を知る”という新たな目的を胸に、僕は一歩ずつ、前へと歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


場面は移り変わり、少し時を遡る。

そこに描かれるのは、旅人の旅路とは異なる、もう一つの物語。


広大な森に囲まれた、とある小さな村があった。

その村で、ひとりの冒険者が調べ物をしていた。


「あー! 見つからない! どの本にも、やっぱり100年前のことは書かれてないよなぁ。

書いてあるのは、食べ物を長持ちさせる保存法とか、台所のこびり付いた汚れの落とし方とか、食材の不要な部分の再利用とか……そんなことばかり……。

くそっ!! まるで“おばあちゃんの知恵袋”じゃんか!!」


村の問題を解決するため、探し物をしていた俺は、完全に行き詰まっていた。

唯一見つけたのは、「魔王」を名乗る魔族が100年前にこの村を訪れたと記された書物だけだったが、それも1ページを除いて、すべて破かれてしまっていた。


そんな途方に暮れる俺に、声をかける者がいた。


「冒険者様……お話があります」


振り向くと、そこにはこの村の村長が立っていた。

村長の話によると、村の奥深くへ進んだ先、森に覆われた広場のさらに奥に、村長と、村長が許した者だけが入ることのできる結界が存在しているという。


結界に“許されていない者”は、そのまま森を抜けるように導かれ、“許された者”だけが、本来辿り着くはずの村の地下へと導かれる仕組みらしい。


そこには、村の秘密が記された禁書があると、村長は語った。


――この村は、以前旅人が訪れた、不思議な村だった。


俺は村長と共に、村の奥へと進んでいく。


「その禁書には、どんなことが記されているんですか?」


問いかけると、村長は一言、

「答えることは禁じられている」

そう告げただけで、それ以上はどんな質問にも答えなかった。


やがて、村長は立ち止まる。


「ここです、冒険者様。……手を」


言われるがまま、手を差し出す。

村長は、鏡のように俺の手のひらに自らの手を重ね、俺がこれまで聞いたことのない言語で、何かを唱え始めた。

それは、まるで魔法の詠唱のようだった。


すると、手のひらに不思議な紋様が浮かび上がる。


「これで、入れます」


俺が驚いていることなど気にも留めず、村長は淡々と言った。


そのまま導かれるように村の地下を進むと、

光源が一切ないにもかかわらず、不自然なほど明るい、小さな部屋に辿り着いた。


その中央には、光の結界に包まれ、宙に浮かぶ一冊の本があった。


それは――

100年前、この村で起きた不可思議な儀式が始まる“きっかけ”となった、真相が記された禁書だった。

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