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全てを奪われたけど、へこたれません。香りで夢を掴みます!   作者: 季山水晶
Ⅰ.試練の幕開け

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36.緊張する試験

 最初の試験はこの国の歴史を問う問題。しかし、問題の内容はそれだけではなく、法律や礼儀作法を問うなど幅の広いものだった。


 歴史や礼儀作法に関しては記憶力のよいアイリーンとバーサにとってはお手の物。


 特にカーテシーの問題は、角度の記載まで要求されていた。


 ──そう言えばバーサって分度器を持ち出そうとしていたわよね。


 試験中だというのにアイリーンは笑いが漏れそうになる。


 そして、隣のバーサからはせき込む音が聞こえた。


 これまでの過去問では歴代王の生年月日や、三代目の王様のまた従兄妹の名前を問うものもあり、突拍子のないものも含まれていたので、二人はかなり細かい部分まで調べ上げ、暗記をしていた。


 よって、その部分は楽勝。だが、予想外だったのは法律に関する問題だ。過去問で出ているのを見たことがない。


 それも『民事法の第何条何項は何?』という極めて悪質な問題で、点を削らせるためのものだと見ただけでわかる。


(超難関と呼ばれるだけあるなぁ)アイリーンは心の中でそう呟いた。


「試験に関係ない事でも勉強しよう」と話していたお陰で、『法律全書』という本にまで目を通していたのが幸いだった。


 よって、二人とも、その問題も難なくこなすことが出来た。


 休憩を挟み、次の試験は数字に関するものだ。計算は簡単なものから桁数の多い複雑なものまで順に並んでいた。


 軽快に走らせている受験生たちのペンの音が次第に鈍りだす。


 そして、あちこちでため息や、頭を搔き上げる音が聞こえだした。彼らはある事に気付き戸惑ってるのだ。


 どれ程計算に長けている人が解いても、せいぜい問題の半分ほどしか解けないだろう。それほどまでに問題数が多いのだ。それに問題は計算以外にもある。


 距離を問う問題に、質量を図る問題。面積に体積、そしてどれも計算問題と同じようにすこぶる簡単なものから難しいものまで、どれも大量に並べられているのだ。


 それだけみると何を要求されているのか分からないが、アイリーンとバーサの頭に浮かぶのは全く同じこと


 ──まともにやっても時間内には全部解けない。という事は他に意図があるはず。


 能力を問うだけなら難問だけを用意すればいい。この問題の意図の一つは問題を解くというよりどの問題まで出来るかを受験生に問うているのだ。


(この量、気付けという事ね。うん、簡単なものからやっている人は落とされる)


 という訳で、彼女たちはそれぞれの項の、最も難解な最後の問題だけを解いたのだった。


 アイリーンとバーサが解いた問題はたった五問。解き終え時間を潰す二人を見た受験生たちは『あいつら諦めたんだな』とでも言うように笑みを浮かべた。


 三つ目の試験は理科の問題。生物に化学に物理と入り混じっているが、とりわけ酷いと感じる問題は植物に関する問題だった。


 あちこちで小声のため息が響く。


『アスレイ山の標高二百メートルに位置する部分で生息する花弁を持つ植物の名前を五つ記載せよ』


 ──なんてマイナーな……


 さすがの二人もその問題を見て目を顰めるが、匂いに関する研究の為に植物の名前と生息地は調べ上げている。


 サラサラっと花の名前を書き上げていくと、二人はハッと目を見開きペンを止めた。


(これ、全部重要な薬草ばかりじゃない……)


 二人は問題作成者の深さを感じ、入学したいという気持ちを更に膨らませた。


 ……


 そしていよいよ最後の紙試験。なんと配られたものは全くの白紙だった。


 これにはさすがの二人とも頭を抱えた。周りも同様で、試験中だというのにあちこちで小言の様なひとり言が飛び交っている。


 真正面の教壇に座るスミスにひとりの受験生が手を上げた。


「すみません。試験の意図が分かりません」


 だが、スミスは「それが試験問題です。それ以上の質問は放棄とみなします」と冷たく言い放った。


 受験生は顔を青くして俯いた。周囲からもため息が漏れ出る。


 ──この白紙だけではさすがに意味が分かんないな。


 次第に、重そうにペンを走らせる音が途切れ途切れ響き出す。


 アイリーンも頭に拳を付けながら時折スミスに目を向けるが、彼女は唇を締め受験生達を厳しい目で見続けているだけだ。


 何かあるはずだと、アイリーンは紙を手に取り、裏返し、隅々まで調べ上げるがやはりただの白紙。


 どうしたものかと思った時、右の僅かな視界にバーサが真っすぐ教壇に目を向けている姿をとらえた。


 ──バーサは何を見ているんだろう?


 アイリーンもスミスの座る教壇を凝視すると、スミスの指先が、規則正しく空を切っている。


 ──先生、何故手を動かしているのかな?


 そう思った時、ふとバーサに助けられたあの恐怖の夜が頭をよぎった。


(あ、あれ……手文字?)


『な?な・ま・え・……を、か・き・な・さ・い……』


 スミスはその手文字を繰り返していた。


 バーサが机に伏せ、文字を書き始めた。


(バーサも理解していたんだわ。また彼女に助けられた)アイリーンは心の中で呟き、紙に名前を書き込んだ。


 アイリーンが再び顔を起こすと、視界に入る範囲でスミスに目を向けているのは、自身とバーサだけ。すると、スミスの手文字が変化した。


『あなたの夢を書きなさい』 

いつも読んで下さりありがとうございます。

次回は2/11(水)の投稿になります。

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