マイケル王子(2)
目が覚めるとマイケルの顔を覗き込んでいる少年……いや、男装した少女がいた。
離れたところで年配の男がなにやらしゃがんで作業をしている。
「大丈夫ですか? どこか痛い所はありますか?」
マイケルは言われて体を動かそうとしたが、急に後頭部、次に左の脇腹と背中に痛みが走った。
それを伝えると、少女はマイケルの体を調べ始めた。
「どう言う体勢で落ちたのか……左側の背中と脇腹にブス黒い痣がついてますね。骨は大丈夫みたいです。心配なのは頭の後ろです。私の指何本に見えますか?」
少女は指を二本立てて目の前に近づけた。
ちょっと近すぎて見づらいが「二本」と答えた。
すると指で瞼をめくって覗き込むように顔を近づけた。
恥ずかしいので目を逸らす。近いぞ。
「動かないで休んでいてくださいね」
それから少女は男と何やら小声で相談をしてから、歩き回って作業をしていた。
何か聞きたいことがあるけれど、どういう訳か何を聞いたらいいか分からない。それに頭の後ろと脇腹や背中がだんだん痛くなって熱を帯びて来た。
戻りたいけれどどこに戻って良いのか思いつかない。
自分が誰だけは分かるが、それだけは言う訳にはいかない。
おかしい? どうして自分はここに寝ているのだろう?
また少女が近づいて来たので、マイケルは尋ねた?
「私はマイク。君の名前は?」
すると少女は笑いながら首を振って、私の上半身を抱き起こし、シャツを捲り上げた。
「湿布をしておきます。応急措置ですから、あとで治療師に見て貰ってください」
薬草を潰したらしい緑色のドロドロしたものを塗られてその上から布を当てて縛られた。
少女の口の端に緑色の滓がついていた。
たぶんこの薬草を口でかみ砕いたのだと思った。
同じように頭の後ろにもべっとり湿布を貼られて頭を布でぐるぐる巻きにされた。
そうしながら、少女は鼻水をグスグスさせていてちょっと唇を震わせていた。
そう言えば少し寒い。そのせいか。
男が少女を呼び、なにかを渡した。
木のカップになにやら温かい飲み物が入っているらしい。
「痛みを和らげる薬草茶です。少し頭がボーッとするかもしれませんが、我慢してください。楽になりますから。それとこれはもう外しても良いですね」
彼女は私の首にかかっているペンダントのようなものを外そうとした。
私はその手を抑えた。介抱してくれたことには感謝するが、簡単に身につけていたものに手を出されたくない。
そして咎めるようにゆっくり首を振った。
それを見て少女は悪びれもせずニッコリ笑うと、肩をあげてみせた。
「もう効き目はなくなってしまったからつけてる意味はないんだけれど、心細いならつけておくといいですよ。でもそれ大事なものだから私にあとで返してくださるようにお願いします」
何を言ってるんだ? もう自分の物だと唾を付けている積りか?
王族の身に着けていた物に手を出すと打ち首ものだぞ。
だがどうも頭がボーッとして来た。痛みはほとんどなくなって来たが、どうも眠い。
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