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湿布と痛み止め

そして、少年は目を覚ました。私は緊張していたが、予定通りに声をかけた。

「大丈夫ですか? どこか痛い所はありますか?」

少年は言われて体を動かそうとしたが、急に顔を顰めた。 

「頭や……背中が……痛い」

私は予め調べていた場所を調べる振りをして確認して伝えた。

「どう言う体勢で落ちたのか……左側の背中と脇腹にブス黒い痣がついてますね。骨は大丈夫みたいです。心配なのは頭の後ろです。私の指何本に見えますか?」

私は指を二本立てて目の前に近づけた。

「二本」

大丈夫だ。あと、瞼の裏に血の気が戻っているのを確かめた。

私が顔を近づけると、少年は目を逸らした。

とにかくこれから痛みは激しくなって熱を出すかもしれないから、湿布をしなくては。

「動かないで休んでいてくださいね」

私は少年から離れた。私はあなたのことを王子様かもしれないとは思ってもいないよ、うん。できるだけ離れていないと、なにか質問されても困る。ここがトロット村の近くだとか、私がサリー・トロットだとか、死んでも知られてはいけない。

予め集めておいた薬草を再度噛んで細かくしてペイスト状にしてから広い葉っぱで作った間に合わせの皿に載せて、私自身のアンダーシャツを裂いた布も包帯代わりに用意した。

近づいて行くと少年はいきなり聞いて来た。

「私はマイク。君の名前は?」

見知らぬどこかの少年よ、あなたは今そんなことで頭をなやましてはいけませんよ。

私は笑顔で首を振って心の中でそう言った。

再度質問をするタイミングを与えずに、私は王子様に抱き着くようにして、そう……ほぼハグ状態で上体を起こして差し上げた。

そして彼のシャツを事務的に捲り上げて言った。

「湿布をしておきます。応急措置ですから、あとで治療師に見て貰ってください」

その後で余計なことは考えずに治療行為に専念した。

なぜか王子様は私の口を見て何かを考えていた。もしかして接吻して息を吹き込んだことを覚えているのか?

あばらや背中が終わったので、頭の後ろにも湿布をして包帯をグルグル巻きにする。アンダーシャツ全部使ったので少し寒い。やりながら鼻水が出そうになって、グスグス吸い込んで元に戻す。ああ、嫌だ。王子様にこの音を聞かれるのが。でも私は誰かは絶対分からない。分からないから、恥ずかしくないっ。

なんだか泣きそうだ。唇が震えて嗚咽が漏れそうになる。我慢、我慢だ。

「できたぞ」

ラルクが私を呼んだのですぐ王子様から離れた。そしてこっそり洟をかむ。

この薬茶を飲ませれば痛みは薄れる。同時に今の記憶も曖昧になる。

でもこの辺にある痛み止めの薬草はこれしかないから仕方がなかった。

本当は記憶を曖昧にしてもらうのが目的だけれど。

私は湯気の立った薬茶を差し出した。

「痛みを和らげる薬草茶です。少し頭がボーッとするかもしれませんが、我慢してください。楽になりますから。それとこれはもう外しても良いですね」

私は少年の首にかかっている護身のペンダントを返して貰おうとした。

少年は私の手を抑えて咎めるようにゆっくり首を振った。

えっ?私のペンダントなのに。今は亡きシャルロットお祖母様から頂いた大事なものだけれど。

いま記憶が混乱して、自分のものだと思ってるみたいだね、きっと? ま、良いか。

「もう効き目はなくなってしまったからつけてる意味はないんだけれど、心細いならつけておくといいですよ。でもそれ大事なものだから私にあとで返してくださるようにお願いします」

すると一瞬私を睨んだ気がしたけれど、やがて薬が効いて来たのか眉間の皺がなくなって……やがて眠りについた。

読んでいただきまして、本当にありがとうございます。


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