王都への旅
すべて未完成のままとうとう私はアンナ様と共に王都に向かうことになった。
実は子爵と取引のある商人が私たちに合わせて王都に馬車で行く用事があるというので、荷物を少しだけ載せてもらって、私たちは馬に乗って行くことにしたのだ。
何故かと言うと、二人とも馬車は苦手だが馬には乗り慣れているからだ。
商人の馬車には必ず護衛が付く。私たちはその護衛と一緒に馬に乗って男装して行くことになった。
貴族令嬢の移動法ではないが、私たちは開き直ってるので、これで良しとする。
跨ぎ乗りに飽きたら横座り乗りに変えて、たまに遠くを見たいとき立ち乗りをしてみたりする。
これには護衛の冒険者が呆れていた。
二人とも矢筒と弓を背にして、腰には剣やナイフを差している。
髪はまとめて頭頂に上げて、バンダナ代わりに襤褸布で巻く。
どう見ても冒険者の少年だ。
雇われた護衛は10人ほどいるが、私たちも入れると12人になるので。二台の馬車の護衛としては十分多いそうだ。
まあ、私たちの場合は護衛の数を多く見せる役割もあるようだ。
ところで冒険者たちの中では盗賊対策の手順があるらしいのだ。
向こうの要求を聞いて交渉するというのもその中にあるらしい。
でも私たちは護衛の対象の貴族令嬢なので、盗賊や魔獣が出てきた場合は身を隠すように言われただけで、護衛としての打ち合わせには加わっていない。
けれども私たちは常日頃から言われている。盗賊が現ればゴブリンかオークだと思えと。けれどラルクは違う。
「盗賊は男は殺し、女は犯してから殺す。ゴブリンやオークの積りでいたら、先手を取られる。森オオヤマネコだと思えば丁度いい」
森オオヤマネコはすぐ攻撃しなければ喉を噛み切られる。見た途端殺すさなければならない。
そして何日目かの昼間に向こうの道に倒木が道を塞いでいてその向こうに十数人の人影があった。
私は弓に矢を番え、発射した。
一言も言わず次から次へと連射した。胸当てを避けて腹を狙うのだが、股間に刺さったのが二人。
酷い悲鳴を上げていた。
「スナイパーがいるぞ、気をがぁぁぁ」
もう少し上を狙ったら今度は何やら叫んでいた奴の口の中に刺さったみたいだ。横を見ると私に二呼吸遅れてアンナ様も弓を連射している。
その前になにやらもそもそやっていたけど、なにをやっていたんだろう。
アンナ様ははじめから防具のついてない足を狙っている。顔を狙うより払いづらいのと、足を射れば戦闘能力がダウンするからだと思うが、違っていた。
足を射ただけで、バタバタと相手が倒れるのだ。えっ、どうして?
それに対して護衛の冒険者たちは茫然としている。いきなり攻撃するのはルール違反とでも言うように。
半数以上をあっという間に倒されて、盗賊は逃げ出した。
これも辺境では言われている。
『盗賊を一人でも逃がしたら、何倍にもなって戻って来る』と
私もアンナ様も声を掛け合わずに馬を走らせ、倒木を飛び越えて、逃げて行く盗賊の背中を狙って射た。
背中は的が大きい割に防具がついてない。
盗賊でフルアーマーというのはいないからだ。
アンナ様は矢がなくなったのか、体を水平にしながら盗賊の首を剣で斬った。
首は取れなかったけれど半分切れて血が噴き出し倒れた。
私も矢がなくなったので、真似をしたかったが、体は水平にできたけれど、剣を横薙ぎにできずに、仕方ないから首に突き刺した。
変な声が聞こえて倒れたが、剣も手放してしまった。
仕方ないので、まだ逃げている盗賊に馬をけしかけて「キック!」というと、普段からゴブリンなどを蹴り殺す訓練をしてたから、ちょっと目標は大きいけれど頭蓋骨を蹴り潰した。
同じようにもう一人蹴ったが今度は先に相手がうつ伏せに転んだので背中を踏んで背骨を折った。
直ぐに死なないでのたうち回ってる。
「あんたねぇぇ」
アンナ様が呆れて言った。
「私も一人だけ殺したけれど、普通貴族令嬢は殺さないのよ。しかもすっごく汚い殺し方ね。男の急所とか口の中とか考えられない。頭を蹴り潰して、最後は背骨を折って、まだ苦しんでるわよ」
私は自分だけ責められたので不満だった。
「だって、アンナ様はすぐに矢を射たないから、私焦ってたんですよ」
「あなた気が付かなかったの?道の両脇の木の上に一人ずつ弓士がいたのよ。そこから先に倒さないと」
そうだったのか? それを射ったから二呼吸遅れたように感じたのか?
「知らなかった。でもアンナ様は凄く狙いが正確ですね。全員足に当てたし」
「逆に聞きたいわ。どうしてあんな変なところに射つのよ」
そうか……わたしはいつもラルクと組んでいたから、どこかに刺されば、後はラルクが処理してくれるって安心してたんだ。だからいまだに正確に射てないんだ。
でもどうして足を射っただけで、盗賊は倒れたんだろう?
するとアンナ様は矢筒の中を見せてくれた。矢筒の底の方に茶色のドロドロしたものが溜まってる。
「矢毒よ。狩猟用だから30分したら人体の血と反応して痺れ効果が消えるの。オークとかはこれで狩るのよ。あとで肉を食べなきゃいけないからね」
知らなかった!これはラルクも教えてくれなかった。
「これは我が家の秘伝だから、分からなくて当然よ」
私たちがお喋りしている間、冒険者が二人矢を集めて持って来てくれた。
「折れていないのを持って来ました。こっちがアンナ様のですね」
アンナ様のは9本あった。
「それでこっちがサリーさんのですね」
私のは6本だ。変なとこに刺さったのがあったから折れたのかな?
冒険者たちは何か言いたそうだったが、結果オーライなので、特に私たちの先制攻撃に対して何も言わなかった。
けれど私に対しては何故かちょっと目を避けているような感じがした。
股間とか口とか……腹に刺さったのもあったのに。狙った訳ではないのに。まさかああいうのが私の嗜好だと思われてるのか?違うようっ。
冒険者たちは残った盗賊で生きていた者は全員止めを刺したみたいだ。
そして、本人を証明する金属札を回収していた。武器や防具で使えそうなものは没収している。あとで売るのだろう。
それから死体を引きずって崖から落としていた。埋めたり燃やしたりするには時間と労力がかかり過ぎるからだ。
そして全員で倒木を道から外して再出発になった。
気のせいか護衛の冒険者たちは一言も喋らない。少し気まずいがどうにもならない。
彼らは商人について来た王都の冒険者だから辺境のやり方を理解して貰えないのだ。
それに加えて私の討伐の仕方が特にショックだったみたいで、それもあるのかもしれない。
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