巻き添え
私が子爵邸に行って、アンナ様と顔を合わせた時、びっくりした。
すっかりやつれた様子のアンナ様だったからだ。
アンナ様は私を見るなり抱き着いて来た。
な……なにがあったの?
「これからあなたと私は死ぬも生きるも運命を共にする同胞よ。サリーと言ったわね? 私のことはアンナと呼んで」
私は思わずブーーーッと噴き出した。
「ととと……とんでもないです。アンナお嬢様」
「今日は夜を明かしてまでもあなたと徹底的に語り合うわ。そうしなければ私はこの先どうしたら良いか分からないから」
アンナ様はお茶やお菓子のセットを侍女に運ばせた後、人払いをして私と二人きりになった。
「これからあなたに話すことは機密事項よ。まず私たち辺境の下級貴族が王立学園に行くことはないって、知ってるわね?」
「えっ、そうだったんですか?」
「辺境伯の子弟ならともかく、普通王都に出向いても田舎貴族扱い、山猿山猫扱いよ。はっきり言ってお呼びでないって感じ。私はこっちの方の同じレベルの辺境の貴族と結婚する予定だったから、王立学園なんて行く気はなかったの」
「どうして行くことになったのですか?」
「半年前に第三王子のマイケル王子殿下行方不明事件を知ってるわね? そこで王子を助けたのが私ってことになったの。実は助けたのは領民の誰かだったんだけれど、王子殿下が記憶がはっきりしないことを良いことに私が手柄を独り占めしてしまったの。でもそういうことって、よくあることなの。村人が王子様を助けたからって、よくやったって謝礼を貰うだけで済むじゃない? でも貴族の私が助けたとなると、それこそわが領地全体の覚えもめでたくなるし,何かと政治的にも有利になるのよ」
「そ…そうですよね。分かります」
「あなたは物分かりが良いわ。それでね。マイケル王子殿下の見舞いに行ったとき、確かに感謝されのだけれど、あの方はなにか鋭い感覚があって、私が救ったということに疑念を持ったみたいなの。だから褒章はもらったのだけれど、それっきりだった。私はそれでも良かったのだけれど、第二王子のダニエル殿下が命の恩人に対してそれはないだろうと、この春王立学園に入学されるマイケル王子と同じ時期に私も入学できるように提案されたという訳なの」
「そうですか…第二王子殿下が」
「けれども、それは親切心というか好意的な感じでそうされたのかもしれないけれど、私としてはありがた迷惑なのよ。
私は同じ王都でももっと気楽な平民が多い学校で勉強する積りでいたのだもの」
「もちろんお誘いを断ることはーー」
「できないわね。だって王族のお誘いよ。だから私は屠殺場に引かれて行く肉牛の気持ちよ。だから私にはあなたが必要なの」
「ど……どうしてですか?」
うわぁぁぁ、私を巻き込まないで、アンナ様ぁぁ。
「わたしあなたのことをシャインさんから聞いたのよ」
「私の父からですか?」
「あなたは4歳のときに大森猫に襲われてから、それをきっかけに武術や狩りを覚えようとしたそうね。そして10歳の時に自分で大森猫を討伐したとか」
「いえ、ラルクにかなり手伝ってもらってました。とどめは刺しましたけれど」
「とにかく私に似てるのよ、そういうところが。私はあなたより2年遅れて12才の時に大森猫の単独討伐に成功したわ」
「単独ですか?それは14歳になった今でも私やってません」
「私は15歳だから、ほぼ同期ね。でもね、王都に行くと、王立学園ではそんなことをするのは野蛮人扱いなの。貴族の女は刺繍に音楽演奏、ダンス、お茶会、あと最先端の流行やファッションが分からなきゃ駄目なのよ」
「そのどれもやったことがありません」
「私だってダンスとお茶のたしなみ以外はやったことないわ。だからこれから何をやったってどうせ付け焼刃になるし、だから思い切って開き直ってやろうかなって」
「ひ…開き直りですか」
「そうよ。そんな高尚なことは分からないわ。それがどうしたの、文句あるか?よ」
「そんなことして大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないから、自分には合わないからって、中途で希望退学して、もっと気楽な学校に移るのよ」
「転校…ですか?」
「そう。これなら第二王子殿下の顔も立てて入学したものの、自分には合わないからって泣く泣く別な学校に移るという体裁になるからOKよ」
「はあ、それで私の役割は?」
「今のを一人でやるには、あまりにも孤独で途中で折れてしまうと思うの。でもそれを二人でやるなら、なんとか中途退学まで持って行けると思うの」
「アンナ様を支える感じですか」
「そう一緒に並んでね」
「はあ、光栄です」
うわぁァァ、大変なことになった。
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